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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第1章 勇者と聖女

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第2話:赤氷の魔王と辺境の村人

アルドがカイルとリナを連れて村への帰り道を歩き始めてから数時間。  


街道を塞ぐように、大地そのものが脈動するような巨躯が姿を現した。


 古龍『アースドラゴン』。


 地脈を喰らい、吐息一つで森を枯らす北の大地の災厄。


「……おじさん! 早く逃げなきゃ!あんなの、人間が勝てる相手じゃないよ!」  


カイルが叫ぶ。


だが、アルドは荷物をそっと地面に置くと、腰に据えていた「無骨な剣」を静かに構えた。


「カイル、リナ。よく見てるんだよ。……力はね、誰かを怖がらせるためのものじゃない。誰かの『当たり前の明日』を守るために、神様が少しだけ多めに貸してくれたものなんだ」


 アルドが地を蹴った。  


魔力の予備動作もなく、ただ一歩。  


アースドラゴンが咆哮し、大気を震わせて突進してくる。だが、アルドの踏み込みの方が速かった。  


淀みのない自然な所作で剣が振り下ろされる。


 ――ズドンッ!!


 一撃。  


古龍の鉄壁の鱗が爆ぜ、巨体が地面に沈む。完勝だった。  


アルドは返り血の一滴すら浴びることなく、剣の刃を確かめてから腰に収めた。


「……すげぇ。……アルド、お兄さん。……俺、お兄さんみたいになりたい!」


 カイルの瞳に、初めて「憧憬」の炎が灯った。


恐怖が「尊敬」へと変わった瞬間。


アルドは少し照れくさそうに笑い、二人の頭を撫でた。


「ふふ……。相変わらず、派手になさいますわね、アルド様?」


 木々の影から姿を現したのは、氷のドレスを纏った美貌の女性。


 彼女はこの北の大陸を統べる魔王、ミラ。


だが、彼女は今、一人の「女性」として顔を赤らめていた。


「あ、ミラさん! ちょうどよかった。今、依頼されていたトカゲを片付けたところです。……ほら二人とも、挨拶して。こちらはこの山の上のお城に住んでいる辺境伯の令嬢、ミラさんだよ」


「えっ、お、お嬢様……?」


 アルドの言葉に、ミラは優雅なカーテシーを見せた。


「初めまして、カイル様、リナ様。アイゼンベルク辺境伯家の娘、ミラよ。……よろしくね?」


 彼女は用意していた「偽の身分」を淀みなく口にした。


本当は恐るべき魔王だが、この青年に正体を悟られ、今の穏やかな関係が壊れることを何よりも恐れていたのだ。


「ミラさん、お肉もたくさん取れたんで、お裾分けです。重いんで、俺が後でお城まで運びますね」


「ええ……。楽しみに待っていますわ、アルド様」


 魔王の仮面を脱ぎ捨て、偽りの身分を装ってでも彼と共にいたいミラ。


そんな彼女を純粋に信じ、子供たちの手を引いて歩き出すアルド。  


境界の村に、嘘と誠が混じり合う、不思議で「最強」な日常が幕を開けた。

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