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ある日の午後

お兄ちゃんの恋人になって一ヶ月が経過した頃、私は彼の部屋にある無駄に大きいベッドの上に寝転んで携帯用ゲーム機で遊んでいた。


『君は、僕だけをずっと想ってくれているものだと信じていたのに…。他の男と逢引かい?残念だよ。』


そう言って、画面の中でサラサラ金髪イケメン王子が悲しい顔をして目を伏せた。


そこに選択肢が出てきた。


 ・私こそ残念よ!!あなたは心が狭すぎなのよ!! 

 ・誤解よ!私を信じて!

 ・誘惑する


一番上の選択肢は、私の本音をそのまま選択肢にしたようなものだ。たまたま他の攻略キャラと出会いがしらにぶつかっただけだ。それを、逢引扱いされるとイラッとする。これを選択してしまうと、喧嘩をしてイケメン王子との好感度が下がる気がする。

真ん中の選択肢は、誤解だと言えば言うほど今のイケメン王子の好感度はガタ落ちな気がするし…。

残った選択肢は、誘惑…。ここは、一気に好感度を上げるチャンスなのか?でも、誘惑しちゃいけない場面で誘惑を選択してしまうと好感度が一気に下がるか即バッドエンドに直行。イチかバチかの賭けなんだけど…よし、決めた!!誘惑しよう!


『…はぁ。君にはがっかりしたよ。そうやって、あの男を篭絡させたのだろう?君は、僕を弄んでいたのかい?それとも、僕の君に対する気持ちを試しているのかい?仮に、試しているのであれば、僕がどれだけ君を愛しているかわからせてあげるよ。』


・・・これで、何度目だろう。

また選択肢を間違えたらしい。ここで、誘惑を選択してはいけなかったようだ。このセリフが出ると、バッドエンド(監禁)まっしぐらだ。

ケンさんが言うには、バッドエンドは監禁だけじゃないらしいんだけど、今まで監禁されたことしかない。

なぜだ。

私は、監禁されやすいタイプなのか!?

というか、このゲームはバッドエンド以外存在するのかな?

これだけ、バッドエンド(監禁)が続けばハッピーエンドが存在するなんて信じられないんだけど。


「乙女ゲームって難しい…。ケンさんにも手伝って貰って、やっとここまできたのに…」


ゲーム機を持ったまま顔をベッドに突っ伏した。


「君は、僕だけをずっと想ってくれているものだと信じていたのに…。他の男と浮気ですか?」


ゲームの中のイケメン王子と同じ声と(途中まで)同じセリフが私の頭上から聞こえてきた。

頭を起こして見上げると、にっこりと笑ったお兄ちゃんがトレイにお菓子とジュースを載せて立っていた。相変わらずの美貌は、トレイを持っていても絵になる。スーツを着ていればきっとイケメン執事の出来上がりだ。


実際は、某大手衣料品メーカーのステテコにTシャツというラフすぎる格好なのだが。


普段は、家の中でもジーンズにTシャツくらいの格好はしているお兄ちゃん。なぜ、ステテコかというと…昨日ふらっと一人で立ち寄ったショッピングモールの中を歩いていると、某衣料品メーカーのお店のショーウインドウに目がいった。マネキンがステテコとTシャツの格好をしているのを見かけのだ。普段は、特に気にもならず素通りするんだけど、なぜだか昨日はお兄ちゃんがそれを履いたらどうなるかな~って思ってしまったのだ。全くイメージがわかなくて、お兄ちゃんにプレゼントして着せてみようと思ったのだ。


お兄ちゃんは、物凄く喜んで早速履いてくれてるというわけだけど…


だけど、なんだろう…。お兄ちゃんが履くと高級ブランドのデザイナーがお兄ちゃんの為に作った服の様に何十倍もよく見えるのだ。

お兄ちゃんのとてつもなく美しい顔と背が高くて程よく鍛えられた身体が、今時の大学生のお兄さんって感じで親しみのある感じに変身するのかと思ったらとんでもなかった。


変身したのは1980円(税別)のステテコの方だった…。

7万3千円ですよって言われても納得できる。


お兄ちゃんは、あくまでもお兄ちゃんなんだと痛感させられた。ハイスペックの持ち主は、どんな服をも着こなせるものなのか。


きっと、お兄ちゃんをモデルにしたら安価な洋服を数十倍の金額で販売するっていう悪徳商売ができそう。ボロ儲け間違いなし!


とりあえず、ケンさんに見てもらおう。

お兄ちゃんに了承を得て、今の格好&トレイを持った姿をスマホのカメラで撮ってケンさんにLINEすると…


《どこのブランドにオーダーメイドしたの?それともデザイナーに直接?何かいいよね。俺も同じとこで作ってもらおうかな。》


やっぱり、お兄ちゃんが履くとそう思うよね。


《お兄ちゃんと同じステテコね、ショッピングモールにある某衣料品メーカーに大量に売ってたよ。》


と、返したら…


《マジか。桜ちゃんを使って悪徳商売できそうだな(笑)》


《同じこと考えた(笑)》


《さすが、俺の妹♪気が合うね♪今度、同じステテコ買いに行きたいんだけど桜ちゃん連れて一緒に行かない?》


ケンさんは、私とお兄ちゃんを実の弟と妹のように可愛がってくれてる。ケンさんのお父さんもお兄ちゃんと同じく実の娘(お兄ちゃんは、息子というより娘って感じらしい。)のように接してくれるけど、女優にならないかって最近会うたびに言われる。私の両親も俳優業だからだと思うけど。親の七光りなんて言われたくないし今のところ興味もないから、おもいっきりスルーしてる。おかげでスルースキルが身に付いた気がする。


《行く。帰りにケンさんのお家に寄って特性ケーキ食べたい。》


《OK♪》


《やった!!じゃ、また連絡してね。》


《了解( *・ω・)ノ》


「さっきまで他の男を攻略していたのに、今度は僕の目の前でまた別の男とデートの約束ですか?かんなは、僕だけじゃ物足りないのですか?」


さっきの乙女ゲームのイケメン王子と同じ声でお兄ちゃんが、話しかけてきた。トレイを既にテーブルに置いてるってことは、もしかしてお兄ちゃんをキレイにスルーしてしまってた感じかな?


「もしかして、寂しかったりした?」


「もしかしなくてもそうですよ。僕とかんなの休みが漸く重なったというのに、かんなときたらゲームで男を攻略してるかケンとばかりLINEして…。少しは、僕の相手もして下さい。」


なに、このいじけっぷり。

テレビや雑誌で見るお兄ちゃんとは、似ても似つかない。ニコニコふわふわの観音菩薩のような包容力をもち老若男女ウケのいいお兄ちゃんどこいった!?一部週刊誌からは、天然タラシ系だと報じられているらしい。今のお兄ちゃんをファンの人が見たらどう感じるのだろうか。

私には、日常茶飯事なもので特に何も感じないけど。


「ゲームは、イケメン王子の声をお兄ちゃんが担当してるから一生懸命やっているんだよ。」


だからなのかよくわからないけど、ケンさんに「鬼ばっかり狩るんじゃなくて、たまにはイケメン王子も狩ってみなよ。」と言われてこのゲームを渡された。


全くイケメン王子狩れてない。むしろ、私が狩られて監禁されている。


「でも、いくら僕が演じたキャラクターだとしても、かんなが必死になって攻略しようとする姿は気分がいいものではありません。」


「そりゃ、バッドエンドが続いたら必死にハッピーエンド目指そうって思うじゃない。ケンさんにも手伝って貰ったんだから。それでも、バッドエンド…」


「そんなにバッドエンドばかりなのですか?」


「…そうだよ。全部バッドエンド。全部監禁されてるんだけど。」


「かんなと僕の二人きりの世界…。狭い空間の中で、かんなが僕だけを見て僕だけに感じて僕のことだけを考えてくれる…。なんて素敵なことなんでしょう。僕にとっては、ハッピーエンドですね。何度もかんなを監禁しているだなんて…イケメン王子が羨ましい。」


そんな、うっとりとした顔で言わないでほしいんだけど。

まるでヤンデレ予備軍じゃん。


「全然羨ましくないし。そんな病んでるハッピーエンドなんて嫌なんだけど。人それぞれ幸せの感じ方は違うけど、私はお兄ちゃんやケンさんや皆とずっと仲良くしていけたら幸せかな。」


「僕は、ケンや他の皆さんと同類ですか?」


何がそんなに不満なんだ。

無表情やめてほしい。美しい顔の無表情程怖いものはないと思う。


「お兄ちゃんとは、一生仲良く?一生ラブラブ?いちゃいちゃ?そんな感じがいい。」


お兄ちゃんは、花が咲いたようにパァッと微笑むと私が持っていたスマホを取り上げベッド横にあるサイドテーブルに置いて覆いかぶさってきた。


「かんな、愛してますよ。」


「私も、お兄ちゃんのこと大好きだよ。」


お兄ちゃんの顔が近づいてきて軽く唇にチュッとキスされた。

それを合図に、だんだんと舌を絡ませた深いキスになっていく。

恋人になった初日から何度も何度もお兄ちゃんとキスの練習をして漸くコツ?みたいなものを掴んだし、目も閉じれるようになった。


お兄ちゃんの手が私の体を服の上から優しく触っていく。お兄ちゃんに触られることに嫌悪感はない。気持ちがいいし寧ろもっと触ってほしいとも思う。


「んっ…」


ただ、いきなり服の中に手が入って直接触ってきたら何度されたってビクッとなってしまう。

その反応で、お兄ちゃんはハッとして困った顔をして私を見つめる。


「すみません、かんな。キス以上するつもりはまだないのですが…無意識に求めてしまうのです。怖かったでしょ?」


「別に我慢しなくていいのに。私もそこまで子供じゃないし、キスの先にどういうことするのかなんて大体わかってる。お兄ちゃんに触られると気持ちいいしもっと触ってほしいと思う。それに、他の男の人だったら怖いと思うけどお兄ちゃんだったら怖くないよ。」


あ。また無表情になった。

寧ろ、その無表情の顔が怖いって言ったらどんな反応するんだろう。


「…はぁ。かんなは、まるで悪魔のようですね。甘い言葉で誘惑して僕の固い決心さえ揺らがす。本当、理性を保つのも一苦労ですよ。他の男だったら、確実に誘惑に負けてますね。」


「人を悪魔扱いしないでよ。」


「かんなは、可愛らしい悪魔ですよ。かんな、貴女の身体はまだ大人の身体とは言い切れません。子供から大人の身体へと成長している段階なのです。それなのに僕の欲望のままに事を成してしまったら、きっと…かんなの心と身体を傷つけることになります。僕は、かんなを絶対に傷つけたくありません。大切にしたいのです。だから、そうやって僕を誘惑してはいけませんよ?」


お兄ちゃんは、無表情から一変して泣きそうな顔でそう言うと私をギュっと抱きしめた。

前に、私の身に何か起こったような言い方に疑問に思ったけど何も聞かなかった。お兄ちゃんが、私のことを大切にしてくれてるのがわかったから。


「誘惑したつもりはないけど…。お兄ちゃんが私を大切にしてくれてるのは、わかったよ。」


「自覚がないのが一番タチが悪いのですが…。気を取り直して、一緒にDVDを観ましょう。」


「うん。あ、そういえばケンさんが三人でショッピングモール行こうって言ってたよ?お兄ちゃんと同じステテコ買いたいんだって。」


「わかりました。一緒に行きましょう。」


それから、お兄ちゃんはソファーに腰かけ私はなぜかお兄ちゃんの膝の上に座らせられDVDを鑑賞したのであった。そうして、だんだんとDVD鑑賞に飽きた私がお兄ちゃんにキスしたりちょっかい出してたらソファーに押し倒されて…さっきと同じ展開に。


そうこうしてたら夜になって、お兄ちゃんと久しぶりに二人きりで過ごした一日があっという間に終わってしまった。

かんなちゃんは、基本マイペースです。

それは、お兄ちゃんをもスルーできるほど。

お兄ちゃんは、ケンさんや他の人を振り回しますが、かんなちゃんには振り回されまくりです。お兄ちゃん限定でガード(身持ち)がゆるゆるですのでお兄ちゃん困ってます。

次、いつ更新できるかわかりませんが気長にお待ち頂けると嬉しいです。

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