第1アクセス‐‐‐バトル・オブ・インフェルニティ
青色の光をまとった拳が、俺の脇腹を軽く抉る。
視界右下に固定表示されている300という数値がわずかに減る。
ライフポイントの名で呼ばれるその数値は、俺の命の残量を表している。
「今日も勝たせてもらう!」
無駄に筋肉質のごつい体に、オールバックの頭にデフォルメされた対戦相手である男、IDM・1003、円楽本春は腕にまとっていた青色の光をより一層強く輝かせる。
「それはこっちのセリフだ!」
黒髪で少し痩せている、普通の高校生男子の姿にデフォルメされているこちらも負けじと刀形に形成している赤色の光を強化する。
今この俺、IDMJ・0005、ネルクが参加しているこの競技は《バトル・オブ・インフェルニティ》。俺達、ポリゴンで形成された人間、通称《ブレイカ―》が、己を形成するポリゴンのエネルギーを具現化させて戦う、この世界で唯一白熱するスポーツだ。この競技に勝利すると莫大な富と栄誉を手に入れることが出来る。
ポリゴンのエネルギー残量、および相手にあたえるダメージは全て数値で表示され、バトル開始時は600ポイントでスタートする。
そして今このバトルは、この競技の決勝戦だ。
今の俺のエネルギー残量は285。対する相手、円楽のエネルギー残量は352。その差77。この差を埋め、勝利するためには少しきつい。
「おい円楽」
「なんだ?」
せこい手を使わせてもらおう。
「足元に六デジタルが!」
「何いい~~!」
すぐさま地面に這いつくばり足元をくまなく探し出す円楽。この世界でお金は共通通貨であり、単位がデジタルで表わされる。相変わらずドけちだな。ちなみに六デジタルは日本円でちょうど六円だ。
「もらった!」
「しまたあ!」
右手の刀形に具現化させている赤い光を、円楽のガラ空きの背中にまっすぐたたき込む。
「ぐわあ!」
ダメージ貫通の赤いエフェクトライトが弾ける。円楽のエネルギー残量はこれで310。
「ぐ、卑怯だぞ」
「勝負に卑怯はない」
体勢を崩したままの円楽を無視して連続攻撃を繰り出す。
「うお、は、おおお!」
徐々に円楽のエネルギー残量が減っていく。
「残り、261」
ついに円楽のエネルギー残量が俺を下回った。
このまま突っ切れば勝てる。
「させるかあ!」
「うおあ!」
円楽が拳の青い光を爆発させた。
これは、自分のエネルギーを消費して、相手に大ダメージを与える技だ。
俺のエネルギー残量はついに86となった。
「はははは、俺の勝ちだ」
やばい、向こうはまだ231。
エネルギーで武器を形成出来なくなる最低ポイントは30。あと56くらえば負ける。
「負けるかあ!」
再度刀を形成する。
しかし俺と円楽の差は145。武器に形成できるエネルギーの差が圧倒的だ。俺の刀はこぢんまりとしたナイフのような小ささとなった。
「ははは、ちいせえな」
「う、うるせえ」
もうダメージはくらえない。勝負はこの一発にかかっている。
「いくぞ」
覚悟を決め、再度ダッシュの姿勢に入ろうとしたところで、俺の視界に【Defeat】、負けの表示が出た。
初めてなので、いろいろとおかしい。わかりづらいかもしれませんが、なにとぞご容赦を。




