口火
「くふぅ~、剛実くん起きませんねぇ」
「ホントね……。大丈夫なのかしら……」
久那と絢は仰向けに倒れている剛実を眺めていた。
「武くんの方も心配ですね……。今どうなってるんでしょうねぇ……」
「そういえば……洞窟から出るときヒメノミコトさんと会ったわねぇ」
「あ、そういえばそうでしたね。……あのとき慌ててて気に留めませんでしたけど」
「ヒメノミコトさん……何しに行ったのかしらねぇ。まさか戦いに行ったんじゃ……」
「くふぅ~! また引きこもりビーム炸裂ですか!」
絢ははしゃぎながら久那と話していた。
「しかし……ヒメノミコト様は大丈夫なんでしょうかねぇ……」ホノニギはぼんやりとつぶやいた。
そんなホノニギを、絢は怪訝な顔で見つめた。
「ところでホノニギさん。……ちょっとホノニギさんに訊きたいことがたくさんあるんですが……」
「訊きたいことって……」
「そりゃあもぉ、モサク一族のこととかですよ! そろそろホノニギさん話してくれてもいいんじゃないですか! もう最終決戦ってところですから!」
「はぁ……」ホノニギさんは怪訝な顔をする。
「さっき月子ちゃんでしたっけ? と興味深い話をしてたじゃないですか。『世界を救う』とかなんとか意味深なこと言ってましたですねぇ……。それってどういう意味なんですかホノニギさん。早話しちゃってくださいですよホノニギさん!」
「でも……あなたたちに話すのはちょっと……」
「それじゃあ話しづらいところはかいつまんででもいいですから話してくださいです!」
「そうですねぇ……。もうこんなことになってしまっては、隠すのもおかしな話ですしね。……皆さんには、僕のことと、僕のいた時代のこと……、そしてモサク一族と……あの人のこともすべて話しましょう……」
「おお! 出血大サービスですね! ホノニギさん!」絢は両手をバタバタして喜ぶ。
「なんか妙にハイテンションだわね、絢……」
「久那ちゃんはわくわくしないんですかぁ?」
「私はつい最近ここにタイムスリップしてきたからねぇ……真相って言われてもねぇ」
「そーですか。でもまぁ、面白い話になることは間違いないと思いますが」
「そんな面白い話じゃありません」ホノニギさんが言った。
「確かに楽しかったこともありますが……しかし、苦しかったことも、悲しかったこともありました。……最初に言っておきましょう。――モサク一族がヤマタ国を襲うようになったのは、全部私たちのせいなんです……」
「えっ……」
「え」
「全部、私たちが撒いた種なんです。こんなことになったのは、全部私たちの責任なんです」
絢と久那は双方とも驚いたままだった。
「すべてを話します。これは僕の、僕たちの懺悔です……」