治療
ホノニギ研究所。
その中にはホノニギと絢と久那。
そして、血にまみれた剛実の姿。
「剛実!」
「剛実くん!」
部屋の中央の茣蓙の下に倒れる剛実を囲うように、ホノニギと絢と久那がいた。絢と久那は必死になって剛実に声を投げかけていた。
「ちょっと二人とも落ち着いてください……今治療をしてるので静かにしてください」
「す、すいません……」
「ご、ごめんなさい……」
ホノニギは剛実の腹に包帯を巻いていた。
「何分弥生時代ですから……ちゃんとした治療法も確立していませんし……。僕も今見様見真似で治療をしてるんですが」
「見様見真似って⁉」
「す、すいません……」ホノニギさんが謝る。
「でも仕方ないですよね……。弥生時代ですから、包帯があるだけマシだと思いますよ……」
「そうね……。ホノニギさんがいてくれたのはある意味不幸中の幸いね……」
「包帯のほかに、薬も塗っておきました。ヤマタ国に伝わるとっておきの傷薬だそうです」
ホノニギさんの隣に、瓶に詰まった薬があった。
「それで……剛実は治るんですか……」
「剛実くんの傷は、思ったより浅いものでしたから……何とかなると思います。ですから安心してください」
「ふぅー……」久那はそう息を吐いて、安心した。
「よかったですね久那ちゃん。剛実くん何とかなるみたいですよ」そう絢が言った。
「私のせいだわ……。私がツクヨミに……さらわれたから。だから剛実はこんなことに……」
「久那ちゃん……。久那ちゃんのせいじゃないじゃないですか。久那ちゃんがさらわれたのはツクヨミのせいなんだし……」
「全部私のせいよ……」久那は鋭い口調で言った。
「全部私が悪いのよ……。剛実がこんなことになったのも、武が苦労してるのも、全部私が……」
「久那ちゃん」絢が久那の方を見て言う。
「久那ちゃんのせいじゃないですよ。それに……例え久那ちゃんのせいだったとしても、私たちは久那ちゃんを責めたりなんかしないですよ。だって、私たち親友じゃないですか! 久那ちゃん!」
「絢……」久那はうなだれていた。
「大丈夫です久那ちゃん。だって久那ちゃん知ってるでしょ。剛実くんが最強だってこと。だからこんな傷じゃくたばらないってこと分かるでしょ」
久那は頭を下げてうなずき、
「そうね……。剛実はこんなんじゃ死なないわね。こんなの、剛実にとっちゃ大した傷じゃないものね。剛実は……最強だから……」
絢と久那は剛実の方を見る。
「剛実……」
剛実は傷の痛みで失神していた。