モサク一族
ここは……
「父上、ただ今戻りました」
ヤマツミが、正面の『父上』に言った。
『父上』と『長男』のヤマツミは土のブロックで作られた、土のブロックで敷き詰められた部屋にいた。煉瓦のように組まれ、敷き詰められた土の四角のブロック。その部屋はまるでピラミッドの中のような部屋だった。
壁面には四つの松明が取り付けてあった。部屋の中は若干薄暗かった。
中央に、土のブロックで作られた机と、土のブロックで作られた椅子があった。『父上』と『長男』の二人はそこに対峙していた。
「奴が……動いたのか……」『父上』のイザナギが言った。
「奴? ヤマタクレイのことですか?」
「流山武……搭乗者の……」重々しい口でイザナギが言った。
「あいつのことですか。ええ、ヤマタクレイに乗っていましたよ」
「そうか……」と、イザナギはうつむいた。
「流山武とヤマタクレイの殲滅、そしてヤマタ国の滅亡……ヤマツミよ、次こそはヤマタクレイを討つのだぞ」
「はい、父上!」ヤマツミはそう言ってうなずいた。
しばらくした後、ヤマツミは自分の部屋へと帰っていった。
この部屋には、イザナギ一人だけが残っていた。
「流山武……ついに来たか……お前の野望は止めてやる……止めてみせる。そしてカグヅチ、お前を安らかに眠らせてやる、安らかに……」
「私は……運命と闘う……」
イザナギは、あの日のことを思い出していた……。
そこには赤ん坊が泣いていた。
――――どうしてお前は生きている――――
赤ん坊が泣いていた。
その問いに答えることなく。
――――どうしてお前は生きている――――
赤ん坊が泣いていた。
母から生まれた、
母を失った赤ん坊が。
――――どうして――――
赤ん坊が泣いていた。
――――どうして…………――――
赤ん坊が死んでいた。
体が真っ二つになっていた……。
「カグヅチよ、お前を殺したのはこの俺だ。存分に恨むがいい……そして……俺を超えて見せろ」
誰もいない、がらんどうの部屋でイザナギはつぶやいた。