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クレイ=大地の傀儡=  作者: カッパ永久寺
一日目 初陣
12/75

モサク一族

 ここは……

「父上、ただ今戻りました」

 ヤマツミが、正面の『父上』に言った。

 『父上』と『長男』のヤマツミは土のブロックで作られた、土のブロックで敷き詰められた部屋にいた。煉瓦のように組まれ、敷き詰められた土の四角のブロック。その部屋はまるでピラミッドの中のような部屋だった。

 壁面には四つの松明(たいまつ)が取り付けてあった。部屋の中は若干薄暗かった。

 中央に、土のブロックで作られた机と、土のブロックで作られた椅子があった。『父上』と『長男』の二人はそこに対峙していた。

「奴が……動いたのか……」『父上』のイザナギが言った。

「奴? ヤマタクレイのことですか?」

流山武(ながれやまたける)……搭乗者の……」重々しい口でイザナギが言った。

「あいつのことですか。ええ、ヤマタクレイに乗っていましたよ」

「そうか……」と、イザナギはうつむいた。

「流山武とヤマタクレイの殲滅、そしてヤマタ国の滅亡……ヤマツミよ、次こそはヤマタクレイを討つのだぞ」

「はい、父上!」ヤマツミはそう言ってうなずいた。


 しばらくした後、ヤマツミは自分の部屋へと帰っていった。

 この部屋には、イザナギ一人だけが残っていた。


「流山武……ついに来たか……お前の野望は止めてやる……止めてみせる。そしてカグヅチ、お前を安らかに眠らせてやる、安らかに……」


「私は……運命と闘う……」


 イザナギは、あの日のことを思い出していた……。


 そこには赤ん坊が泣いていた。


 ――――どうしてお前は生きている――――


 赤ん坊が泣いていた。

 その問いに答えることなく。


 ――――どうしてお前は生きている――――


 赤ん坊が泣いていた。

 母から生まれた、

 母を失った赤ん坊が。


 ――――どうして――――


 赤ん坊が泣いていた。


――――どうして…………――――





 赤ん坊が死んでいた。

 体が真っ二つになっていた……。





「カグヅチよ、お前を殺したのはこの俺だ。存分に恨むがいい……そして……俺を超えて見せろ」

 誰もいない、がらんどうの部屋でイザナギはつぶやいた。

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