選ばれなかった未来
何度目かの朝だった。
もう、数えるのはやめていた。
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アズサは静かに起き上がる。
鐘の音。
同じ高さ、同じ長さ、同じ間隔。
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「……終わらせる」
小さく呟いた。
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森へ向かう。
迷いはなかった。
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そこに、リサがいることも。
未来の自分が現れることも。
全部、知っている。
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「来たね」
未来のアズサは、すでに立っていた。
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「今回はどうする?」
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「決めてきた」
アズサは答える。
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「リサを救う」
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「……そう」
未来のアズサは、少しだけ目を細めた。
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「じゃあ、また同じになる」
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「ならない」
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はっきりと言い切る。
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「今回は、“最後”にする」
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その言葉に。
未来のアズサが、初めてわずかに反応した。
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「どうやって」
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「全部、壊す」
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一瞬の沈黙。
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「ループも、帳尻も」
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理解した瞬間。
未来のアズサの表情が変わった。
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「それは――」
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「うん」
アズサは頷く。
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「代償、払う」
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視線を、リサへ向ける。
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「……いいの」
リサが小さく言う。
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「たぶん、全部なくなるよ」
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「うん」
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「私のことも、忘れる」
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一瞬だけ、胸が締め付けられる。
けれど――
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「それでもいい」
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そう言って、手を伸ばした。
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リサの手を掴む。
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「今、ここにいるから」
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その言葉に。
リサの表情が、初めて崩れた。
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「……ずるい」
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小さく笑う。
泣きそうな顔で。
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「それ、反則」
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そして、少しだけ迷ってから。
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その手を、握り返した。
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「一回だけだからね」
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「うん」
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その瞬間。
世界が歪んだ。
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線がほどける。
時間が崩れる。
繰り返されていた“構造”そのものが軋む。
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「やめろ!!」
未来のアズサが叫ぶ。
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初めての、感情の爆発だった。
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「それやったら、お前――!」
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「知ってる」
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アズサは振り返らない。
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「でも、あんたもやろうとしたでしょ」
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一瞬。
未来のアズサが、言葉を失う。
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「その結果が、今なんでしょ」
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静かな指摘。
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「だったら、もう一回やる」
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「違う!!」
叫び。
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「今回は、“壊れる”んじゃない」
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アズサは、リサの手を強く握る。
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「終わらせる」
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その瞬間。
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世界が、砕けた。




