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未来は僕らの手の中に  作者: たろいも
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7/8

選ばれなかった未来

 何度目かの朝だった。


 もう、数えるのはやめていた。



 アズサは静かに起き上がる。


 鐘の音。


 同じ高さ、同じ長さ、同じ間隔。



「……終わらせる」


 小さく呟いた。



 森へ向かう。


 迷いはなかった。



 そこに、リサがいることも。

 未来の自分が現れることも。


 全部、知っている。



「来たね」


 未来のアズサは、すでに立っていた。



「今回はどうする?」



「決めてきた」


 アズサは答える。



「リサを救う」



「……そう」


 未来のアズサは、少しだけ目を細めた。



「じゃあ、また同じになる」



「ならない」



 はっきりと言い切る。



「今回は、“最後”にする」



 その言葉に。


 未来のアズサが、初めてわずかに反応した。



「どうやって」



「全部、壊す」



 一瞬の沈黙。



「ループも、帳尻も」



 理解した瞬間。


 未来のアズサの表情が変わった。



「それは――」



「うん」


 アズサは頷く。



「代償、払う」



 視線を、リサへ向ける。



「……いいの」


 リサが小さく言う。



「たぶん、全部なくなるよ」



「うん」



「私のことも、忘れる」



 一瞬だけ、胸が締め付けられる。


 けれど――



「それでもいい」



 そう言って、手を伸ばした。



 リサの手を掴む。



「今、ここにいるから」



 その言葉に。


 リサの表情が、初めて崩れた。



「……ずるい」



 小さく笑う。


 泣きそうな顔で。



「それ、反則」



 そして、少しだけ迷ってから。



 その手を、握り返した。



「一回だけだからね」



「うん」



 その瞬間。


 世界が歪んだ。



 線がほどける。


 時間が崩れる。


 繰り返されていた“構造”そのものが軋む。



「やめろ!!」


 未来のアズサが叫ぶ。



 初めての、感情の爆発だった。



「それやったら、お前――!」



「知ってる」



 アズサは振り返らない。



「でも、あんたもやろうとしたでしょ」



 一瞬。


 未来のアズサが、言葉を失う。



「その結果が、今なんでしょ」



 静かな指摘。



「だったら、もう一回やる」



「違う!!」


 叫び。



「今回は、“壊れる”んじゃない」



 アズサは、リサの手を強く握る。



「終わらせる」



 その瞬間。



 世界が、砕けた。


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