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いつもの朝帰り  作者: yoshinoya ussie


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8/9

エピローグ

 あれから3ヶ月ほどたった、週末。

 拓也、ヒビキ、マリの三人がいつものように話している。


「で、二人って結局まだ付き合ってないの」

「好きなんでしょ。お互い」


 マリが少しあきれた顔で言う。


「いや、だから私……既婚者だめなんだって……」


 ヒビキが少しうつむき加減で答えた。


 拓也が、少し考えて話し出す。


「あのさ……ヒビキ」


 拓也が何か言いかけたところで、来店チャイムが鳴った。


 マリが出迎えると、ドアの前には美鈴がいた。


「……美鈴さん……?」


 ヒビキが少し心配な顔をして、声をもらす。


 美鈴は店内に入ると、二人に近づく。

 ヒビキの様子を察して、美鈴は言った。


「ヒビキちゃん、大丈夫よ」


 美鈴は、カウンターに座った。


「今日は……」

「二人に、お別れを言いにきたの」


 拓也とヒビキは、少し驚いた表情を浮かべる。

 美鈴は、話しだした。


「あれから、夫は本当に私のことを気にしてくれて」

「ちゃんと、夜も……彼、出張が多いから家を空けることが多いけど、家にいるときにはいつも、私を求めてくれるの」

「すごく愛されてる、って実感できるようになったわ」


 少し間をおいて。


「そしたらね」

「夫が、東京の仕事で出張が多いから……ちょっと、寂しくて」

「話し合って、一緒に東京に住むことにしたの」


 拓也は、少し微笑んで話す。


「そっか……」

「寂しくなるけど、あれから仲良くやってるみたいで、よかった」


「うん……それも、二人のおかげよ。ありがとう」


 ヒビキは、少しバツが悪そうな表情で言う。


「……いや……私は、何もしてないけど」


「ふふ、そうかしら」

「あと……もう一つ、報告があって」


 美鈴は、一息おいてから言う。


「私……妊娠したの」


 ヒビキが、にこやかな表情になる。


「美鈴さん……おめでとう」


「ありがとう……私、夫との間に子供ができるなんて、夢のまた夢だと思ってた」

「本当に、来てよかった。ここに」


 美鈴は、拓也のほうを見る。


「それに……」

「あなたにもう一度会えるなんて……こんなこと……」


 美鈴は、涙ぐんだ。

 ヒビキが、美鈴に言う。


「美鈴さん……」

「いいよ、ちゃんとお別れしていきなよ」


 美鈴は、こくりと頷くと、拓也に抱きついた。


「……ほんとに……会えてよかった……」


「美鈴さん、俺もだよ」


 拓也は、美鈴の背中をさすりながら、言った。


「それじゃ……私は行くわ。ほんとに、ありがとう」

「イシちゃん……、ヒビキちゃん。またね」


 美鈴は、三人にドアの前で見送られて、出ていった。


「……行っちゃったね」


「そうだな……」


 寂しげな表情の拓也に、ヒビキが言う。


「あのさ……」

「今夜は、いっぱいなぐさめてあげよっか」


 少しいたずらっぽく言ったヒビキに、拓也が返す。


「……お願いするわ」


「よっしゃ、まかしといて」


「ヒビキちゃん、新しいコスプレまた入ってるよ」


「えー、見る見る」

「イシちゃん、今日はめっちゃエロい感じのやつ着てあげるね」


 ヒビキが、拓也の腕に抱きついて言う。


「別にいいって」


 拓也は、笑いながら言った。


 ——そして、翌朝。


 外がまだ暗いころに、拓也とヒビキは店を出る。


「もう……イシちゃん……激しすぎ……」


「どっちがだよ」


 ヒビキは、微笑みながら、拓也の手を握った。

 拓也は、その温もりを感じながら、ヒビキのほうを見る。


「あのさ……ヒビキ」


 ヒビキが、拓也を見た。

 拓也は、少し緊張ぎみに言う。


「……俺たちさ」

「付き合おっか。ちゃんと」


 ヒビキが、目を見開いた。


「え、でもさ……イシちゃん、まだ……」


「別れたよ」


「え、いつ」


「先週。離婚届、出してきた」

「ちゃんと、終わらせたよ」


 ヒビキの表情がぱっと明るくなる。


「え、それじゃ」

「結婚しようよ!」


「……いや、早すぎるだろ」


 ヒビキが、拓也に抱きつく。


「私、子供は三人くらいほしいかな……」


 拓也は少しあきれた顔で、微笑んだ。


「えっと。今日……うち来るか?」

「このまま」


 ヒビキは、うなずく。

 手をつないで、二人は同じ方向に歩きはじめた。


 歩きながら、ヒビキが話す。


「あのさ……」

「私、響子って言うんだ」


「あ……それでヒビキだったんだ」

「俺は、拓也」


「ふうん……拓也……」


 ちょっと考えてから。


「なんか、変なの」


 ヒビキは、少し笑って言った。


「やっぱ、イシちゃんでいいや」


「なんだよ、それ」


 ヒビキは、拓也の腕に抱きつく。


「イシちゃん、大好き」


「俺もだよ」


「……あのさ、そいや来週マリちゃん誕生日なんだって」

「お祝いしないとね」


「あ、そうなんだ」

「なんか持ってくか」



 ——いつもの朝帰りは、これからも続くことになりそうだ。

 でも、これからは寂しくなさそうな、そんな気持ちを胸に。


 朝の澄んだ空気の中、東の空が明るくなっていく。


 二人は、そのまま、歩幅を合わせながら、朝の街へ歩いて行った。



 完

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