#1
日曜と火曜、金曜はくそみたいなラブコメの更新をしますはい。
他の日はヴァルキュリア更新します。
「―――――んー…………っ!」
カーテンから差し込む丁度いい陽の光を浴びながら、俺は大きく伸びをしながらベットから起き上がった。
おはよう諸君。俺の名前は東陽治だ。
趣味は読書とその他、部活は俺の学校で最難関と言われる帰宅部に所属、持ち前の俊足から学校では『定時帰宅のボルト』と呼ばれている。
チャームポイントは短めの黒髪から飛び出てるアホ毛だぞ!因みに日によって1~5本に増えたり減ったりするぞ!
……とまあ自己紹介はこれ位にして朝飯を食わねば。
今から準備して学校に行っても余裕で間に合うのだが、ちょっと事情があってな。少し早めに家を出ねばならんのだよ。
ほれワイシャツの袖に腕を通してボタンを閉めて、ズボンを履けば……それ!着替え完了!
ウワースゴーイ!
……はい。大人しく飯食ってきます。
二階にある俺の部屋を出て、一階にあるリビングへと向かっていく。
リビングへと近づくごとに、辺りに食べ物のいい香りが漂ってきた。
「おはよう、母さん。」
「おはよう。今日も早いわね。調子はたどう?」
キッチンで忙しく手を動かしながらテキパキと料理をしている我が母、東香里。永遠の18歳。実年齢38歳。
本人曰く日に日に年を取っていると感じているらしいが、俺からすれば全然若々しいと思う。
家にいるためスッピンだがキレイに整った顔で、茶髪に染めた髪をポニーテールにしている。
もし俺が母さんと親子関係又は血縁関係になければ普通に惚れていたであろうというレベルの美人である。
「いつも通りだよ。」
「それならよかったわ。……今日の朝食は何だと思う?」
「んー…………」
はい出ましたー!我が家恒例の朝のイベント、今日の朝食予想ゲーム!
俺は匂いという唯一のヒントによって、今日の朝食が何かを当てなければいけないのだ!
因みに当たっても外れても特に何もない。
……しかし、この匂い……何だろうか……
考え込んでいる俺を、母さんは年齢を感じさせぬ満面の笑みで見守っていた。
「うーん…………ワカンネ。こうさーん。」
「えー、ざんねーん。……今日の朝食は…………焼き鮭と豆腐の味噌汁、サラダでしたー!」
そう言いながら彼女は皿に盛り付けた鮭と、味噌汁、サラダの小皿を持ってきた。
くっ……これで(数え始めてから)通算14連敗だ…………くそっ!今日こそは当てれると思ったのに……(そこまで悔しくはない)
……まあいいや。美味いから。
朝食を口に運びながら、テレビから流れるニュースを見ていた。
ニュースでは詐欺特集やらオリンピックに向けての警備強化やらについてやっていた。……世の中物騒になったものね。
「……っと、そこまでゆっくりしていられんな。」
「……どうしたの?何かあるの?」
「いや、何もないよ。……ただ、アイツが待ってるだろうからそんなにゆっくりしてられない。」
「アイツ?……ああ、ゆーちゃんね。」
アイツが誰だかを理解した瞬間に、母さんはにやけ始めた。
「母さんが誰を想像してるかは知らないけど、少なくとも、そういうことじゃないからな。」
「知ってるわよ。……まだ、そういうことじゃないだけ……でしょ?」
「残念ながらこれからもそうなる予定はないから安心しろ。」
母さんの言わんとすることは大体わかってはいるが、それを理解した上でも俺は母さんの問いかけに対して否定をした。
「……あら残念ね。……まあ、ゆーちゃんもこんなのよりもっとイケメンのがいいわよね。多分。」
「……ほっとけ。俺はもう行くぞ。」
「あらー。行ってらっしゃーい。」
母さんに見送られながら、俺はリビングを出ていった。
そのあと革靴を履き、鞄を肩にかけて外へと出ていくと―――――
「――――おっはよー!陽治!」
大きく手を振りながら、元気一杯な声で挨拶をしてきた少女が立っていた。
彼女の名前は長波祐。趣味はランニングとか平気で答えるような脳筋女子だが、程よく日焼けした褐色の肌と、明るい茶髪、それに薄化粧の可愛らしい顔から男子の間での人気は高い。因みに家は俺の隣である。
部活は陸上部で、持ち前の俺をも超える俊足から『定時殺しのハンター』の異名をもつ。命名したのは俺。
そんな彼女と俺はここ最近ずっと一緒に登校しているワケなんだが……何故なんでしょうなぁ!?私には全く分かりませんぞ!
いやー、俺からじゃなくて彼女から誘ってきてくれたから一緒に登校しているワケですが……理由が全く分かりませんな!あっはっはっはっは!
「お待たせ。……待ってた?」
「ううん。私も今来たとこだよ。」
「そっか……じゃあ、学校いこ―――――」
「その前にさ。……昨日話してた女の子。アレ……どういうことかなー?説明してほしいなー……なんて?」
そう言っている彼女の目は、微笑んでいる口とは対称的に、どす黒く濁っていた。
……そう。彼女は、活発系女子でありながら、ヤンデレとしての素質も持っているのだ!
いやー恐い恐い。目が死んでるよ。
そもそもこの一緒に登校しているのも、『陽ちゃんが私以外の女を見ないように。』とかいうマジキチな理由で始まったことだしな。
いやまあヤンデレ自体は俺も好きだし将来彼女はヤンデレがいいからヤンデレを否定はしないけど……祐のヤンデレは……無いわ……うん。
……そんなワケで俺は絶対に祐以外のヤンデレ女子と付き合いたいから他の女を見るなとか無理な話なんだけどネ。
「……それは今はいいじゃん。学校行こうよ学校。」
「待って。そんなに慌てるってことは何か後ろめたいことでもあるんじゃないの?早く教えてよ。……私は別に、怒らないからさ。」
そう言って逃げ出そうとした俺の腕を、彼女はガシッとホールドしてきた。
ヒィィィィィィィィ!やべーよー!
別にいいじゃん女子と喋っても!ちょっと人類五分前開始説について話してただけだもん!僕悪くないもん!
……と言えるなら言いたいが、そんなことすれば祐のヤンデレは完全体となってしまい、俺の理想のヤンデレ彼女を見ることなくバッドエンドルートに突入してしまうのは明確である。
だがこんなときは…………
「…………あっ!UFO!」
「えっ!ウソッ!……どこ?どこにいるの?」
掴まれていない方の腕で何もない快晴の空を指差してそう言うと、さっきまで力強く掴まれていた腕が解放された。
祐は俺のことそっちのけで、目を輝かせながらありもしないUFOを必死になって探していた。
「ねえどこ?……どこにいるの?……陽治、さっきどこで見つけたの?」
「残念だったなアホめ!UFOなんていねーよ!……じゃ、あばよ~、とっつぁ~ん!」
必死になってUFOを探す祐を置いて俺は全速力で駆け出した。
「あっ!……ちょっ……待ってよ~!」
そんな俺の後を追うように、彼女も駆け出した。
……因みにこの後、土煙をあげあがら全速力で市街を走り回る男女が目撃されたというが、俺らでないはずである―――――