10 ほねほねろっくゆー
さぁ、復讐の時がやってきた。
頬の腫れも引いた神父が、またクソにされに来たのか!とか笑ってたので腫れを元に戻してやった。思えばある種クソ寛大な兄ちゃんだな。俺なら殺し合いになってるところだ。
で、重厚なドアを開けて地下に潜る。
何度死んでも構う物か。
殺してやる。絶対に。
そして地下墳墓を歩くと…なんとスケルトンの群れが復活している。
ソロ専用ダンジョンて事かよ!
また単体ならともかく前衛後衛のPTや戦列が在るとヤバいな、と思っているとまた暗闇から石が飛んできた。
じゃらん、と両手の剣の峰が石を挟んで後方に受け流す。
そのまま前に転ぶように身を投げ出すと、投石帯を持ったスケルトンを脚から腰から転がりつつ一度に両断した。
やっぱ斬れるわー、左右の切れ味が同じってのがまたいい。
続いて飛び出してきた骸骨の棍棒を、左の剣でではらって首を落とす。
良い感触ぅ。
そんな殺戮?再殺戮を繰り返していると、相変わらずの広間に着いた。
良かった、今度は戦列はない…けど、巨大骸骨が居た。
「マジかよ…」
思わず口から漏れていた。
薄青く輝く洞窟の中で振り下ろされる大剣を、前転で辛くも避けるそして飛び跳ねるように距離を取り、石柱たちの隙間でインベントリからあるものを出した。
『投げ槍:バランスよく短く斬った手槍。後部に革ひもが付いて投げ易くなっている』
そして紐と軸を手に、骸骨に向かって投げつける。
ガシンと音がして盾に槍が刺さった。
いける!
その後俺は、振り回される大剣や盾をアクロバティックにやりすごし、時に魔剣に持ち替えて臑をえぐりながら槍を投げまくった…
そしてその時が来る。
ガシン、と音がして10本あまりの槍に耐えきれず、盾が砕けたのだ!
あとは俺のターンだ!その顔二つに割ってやるぜぇ!!
死にました。
盾失うと攻撃パターン変わるのね。
薙ぎ払いとか転がり周りとか無茶な攻撃が増えてあっさり挽きつぶされましたとも。
でもたぶんダメージは蓄積するので行けるだろう。
また神父の所に来た俺は「おまえクソバカか?」とか言われつつも剣を研ぎ、鎧を補修して次の戦いに向かう。
一発当たれば終わりの戦いにポーションなんていらねえ!今度は戦争だぁ!
死にました。
いやぁ普通に剣振ってのとちがってなりふり構わず全身凶器にされるとかマジ死ぬわ。
こりゃなんか別の対策が必要だな…
と、街を歩いていると、露店街で見た顔にあった。
「おーいエリナー」
「げっ」
今の一言は聞かなかったことにしてあげよう。
そうそう、薬師に革細工職人だから要らないかもしれないけど、あの鋼も少しプレゼントしよう。
「なにこれ?」
「あのときお前と一緒に作った鋼。出来は折り紙付きだぞ!」
と、言うと、彼女はまたはぁ、とため息をついていた。
「ホント、あなたって無茶よね…痛覚100%もそうだし、一日中戦ったり魔法使ってたり…」
まぁジーンブーステッドだからな。普通よりは遙かに丈夫だしこのくらいはなんて事はないさ。
まーそんな事は言わず、さっきの言葉でふと思いついた。
「魔法…魔法か!」
「…どうしたの?」
「今死にまくってる相手の攻略法が見つかったかも知れない!ありがとう!」
そう言って俺が走り去ろうとすると、エリナは後ろを引き留める。
「貰いっぱなしって訳にはいかないわ、持って行きなさい。どうせ意味があるような相手と戦って無いンでしょうけど」
と、ポーション類を幾つかくれた。
そうだなあ、果たして使い道はあるのだろうか。
そして俺は一路、神殿への道を走るのであった。
「おたくクソ飽きねぇな。もしかして便秘?」
もう一つ腫れを作ってやろうか、と思うが遠慮しておく、俺は今敵を倒す為に集中しているのだ。
そして重厚な扉を開けて闇の中に挑み、骸骨達の洗礼を受けた。
「マイナースワンプ!」
視界の奥の射手が小さな沼に足を取られて弓を放ち損ねる。
その隙に前衛に近づくと、俺は前衛を斬って捨てた。
あとは処理作業に過ぎない。魔法がこんなに有効だったとは…と思う隙に風邪きり音がする。
俺はとっさに詠唱を吐き出した。
「ストーンウォール!」
人間が優に隠れる壁が突然目の前に生え。数発の石弾が砕けて落ちる音が聞こえる。
そして再度装填されるより先に飛び出した俺は、3体の投石骸骨に斬りかかった。
一匹、二匹、近接武器を持たないこいつらはあっさり斬れる。
しかし三匹目は投石帯に石を入れ、振り回して抵抗を始めた。
距離を詰めるに一瞬戸惑った俺はすかさずこういった。
「ストーンバレット!」
目の前に出来た石弾が当たると、骨はバランスを崩して投石帯を取り落とす。
あとは片づけだった。
戦列はどうやら初回限定らしい。
しかも割れた盾には槍が刺さったままそこらに転がっている。
後で回収しないと…なんておもってると相変わらずの巨大骸骨がこっちに剣を向けてきた。
声にならない轟音を響かせ、振り下ろされる剣は必殺。
ギリギリに避けながら機をうかがい、地を駆けた骸骨の足下に起死回生の一手を駆ける。
「ストーンウォール!」
ゴツッと低い音がした。
石版に引っかかってたたらを踏んだ骨は、そのまま石版を越えようとして消えた石版にさらに体勢を崩す。
そして続いての呪文がコレだ。
「マイナースワンプ!」
宙に浮いた骸骨の脚がずぽっと沼にはまる。
困惑したまま振るわれる剣の範囲は狭く足横を抜ければ用意にその胴体に魔剣が届く!
「うらぁぁ!!」
足を取られている内に何度も斬りつける。スケルトンはもうボロボロだ。
だが最後の一撃が入るか、という瞬間に事態は急変した。
「おわっ」
赤い風が俺を吹き飛ばし壁際まで叩き付ける。
沼から出たスケルトンの眼窩には、今までにない赤い光が灯っていた。
畜生!暴走モードアリかよ!
俺は痛みに鈍る身体を何とかしようと、そう言えばと思い出したエリナのポーションを口にしようとする。
だが相手の早さはそんな物ではない。
大剣はおれの胴体をねらって、疾風の様に岩壁をえぐり、ポーションは宙を舞った。
やっべえまた死ぬ!
またもゆっくりに見える世界で、ポーションだけがどこかに飛んでいく。
そしてポーションは…神殿中央の石柱にぶつかり、砕け懸かった。
「グォォォォ!」
次の瞬間、剣をこちらに振るう巨大骸骨の剣は明らかに鈍かった。
なにせ魔剣と名剣で弾きあげることが出来た位だ。いままでなら不可能だっただろう。
『私の力が少し戻りました!今の内に倒して下さい!』
そして神の声が脳裏に響く。ポーションで体力回復するのかよ!
俺は剣を振り抜いた骸骨の隙をつくと、そのまま骨盤の下に躍り込んだ。
それでもなお骸骨は反応せず、天上から降る蒼い光に苦しんでいる様子だ。
「死ねぇええええ!」
そして俺は、名剣と魔剣の切り上げで骨盤の左右を切断し、落ちてきた頭骨を両断した。
勝った!勝ったぞォォォ!
『ああ…おかげでこの地が清められました。これでこの墳墓の者達も安らかに眠ることが出来るでしょう』
瞬間、脳裏に響く声がそう言ったかと思うと、地面から蒼い光が俺の身体を覆い始めた。
なんだろう、暖かくて気持ちいい感じだ。
ステータスを見たら称号が付いていた。
『ガイアの祝福:地母神ガイアに少しは認められた加護の証』
少しはってなんだ少しは!
『あなたにも安らぎが訪れますよう、私の力を分けておきました』
微笑むような声で言われると文句も言えない。ありがとう御座います、と言って場を辞するのだった。
あ、槍の回収と剣研ぎ直さねえとなー。
「ファッキンクソ勝ちやがった」
素の顔で言ったのでもう片方の頬も膨らましてやった。
しかし口の悪い神父だ。手は出さないけど。
「よくまぁあの奥のバケモンを倒したもんだ、そこまで求めてなかったんだがな」
「先に言えや!こちとら何度ミンチになる気持ちを味わったと思ってやがる!」
丁々発止、口げんかに発展した俺たちを尻目に、今日も日が暮れていくのだった。




