小室様3
小室の後についていくとリビングに辿り着いた。
リビング。
普通は快適な空間だろう。
ところがそこはやたら拾い空間だった。
何もない。
中央には女性たちが立たされていた。
みな顔に見覚えがある。
俺の同級生だ。
全員目が死んでいる。
委員長の牧瀬もそこにいた。
「どうだい? ボクのコレクション!!! あと一人! あと一人でコンプリートなんだ! あと細川香織さえいれば!」
まるでカードを見せびらかすように小室は弾んだ声で言った。
それを聞いてガチガチと怒りのあまりかみしめた奥歯が鳴った。
「細川はさあ。山岸の領地にいたんだ。それで買えなかったんだよねえ。ふふふ。今はタカムラくんのなんだろ? ねえ頂戴!」
俺はその瞬間、頭が沸騰した。
今までの俺にはなかった感情だ。
売られても許し、殺されかけても許した。
辛くても我慢しろ。
そういう風に育てられたのだ。
その倫理観を越えることができなかった。
だが細川をモノみたいに扱うヤツだけは許してはおけない。
俺はぶち切れた。
俺は渾身の拳を小室のツラにねじり込んだ。
鼻の骨が潰れる音がした。
小室は吹き飛ぶ。
「偽善者!!!」
だが同時に水が俺を襲ってきた。
「業火!」
俺はそれを業火で蒸発させる。
「山岸くんの能力だね」
鼻血を流しながらフラフラと小室が立ち上がった。
小室は血をペッと吐き出すと話を続けた。
「いいよ。教えてやるよ。事件の真相をね!」
「真相?」
小室はそう言うと目を見開いた。
俺は小室をぶち殺す算段を立てながら話を聞く。
小室が飛行機を落とした。
それはわかっている。
「菊池君はね……この世界の王家の人間なんだ……それでボクに教えてくれたんだ! ボクも王家の末裔なんだって! そしてあの忌々しい世界を破壊する方法を教えてくれたんだ」
「忌々しい世界?」
「ああ。そうだよ! 誰もボクを認めない、あの腐った世界だよ!」
小室の昆虫を思わせる感情のない顔が歪んだ。
俺の予想では笑っているようだ。
「ボクはね……勉強したくないんだ。高校行ってもバカにされて殴られて蹴られるんだ! だから、だから……みんな殺してやりたいと思ってたんだ」
小室はガチガチとツメを噛んだ。
神経質そうな声で続ける。
「だからね……菊池君と一緒に両親を殺したんだ。あの腐った世界に別れを告げるために!!! 男子生徒、それに他の乗客の命と引き替えにね。ああ、女子はみんなで平等に分けようって約束してたんだ。バカだねアイツら。全部ボクのものなのに!!!」
小室の目が充血していく。
「どうだい? この世界は楽しいだろ? 君はアゼルに載って勇者の証を使ったことがあるよね? あれは凄いよ! アゼルは超能力の増幅器なんだよ!」
「そうかよ……俺は日本に戻りたい……」
俺はつぶやいた。
日本に戻って細川と幸せになりたい。
それが心からの願いだった。
「ダメ。ボク以外の男は皆殺しにするから。知ってる? 勇者の証を全て集めるとどうなるか? 男子生徒の最後の一人になったらどうなるか?」
「どうなる?」
「なんでも願いが叶うのさ! 贄の力と勇者の証! それがあればなんでも願いを叶える力になるんだ! ボクはあの世界を滅ぼしてこの世界唯一の男になる! なのに……山岸も木下も殺す前に逃げやがって! それにね……君は邪魔だったんだ……だって君は流されないじゃないか。絶対邪魔をする。だから君だけにはハイジャックの計画を知らせなかったんだ! あははは!」
「……」
人間は心の底からぶち切れると言葉を失うらしい。
俺は無言で間合いをつめた。
「おっと待てよ。西原さんから聞いているだろ? この建物にいる全員に爆弾を持たせている。いい子にして細川を渡してくれ。彼女たちはボクと一緒にいるのが幸せなんだ」
そう言いながら小室は爆弾のスイッチをローブから出した。
山岸と同じ発想だ。
やると思ったぜ。
あの学校はほぼ全員同じ発想か。
だが今回は対策済みだ!
「やってみろよ。ただし、そのスイッチを押したらお前を殺す」
俺は小室を睨み付けた。
すると小室は悟ったかのような顔になった。
「そうか……コンプリートできないのかあ。うん……そっか……じゃあいらない」
小室が容赦なくスイッチを押す。
その瞬間、天井が爆発し天井が小室に降り注ぐ。
バカが!!!
俺は木下の能力を奪っていた。
アラクネ。
ナノマシンの集合体だ。
木下は理解してなかったが、あの能力は便利だ。
中継機に命令を仕込むだけでほとんどの作業を自動でしてくれる。
例えば『爆弾の解除をしろ』とかな。
しかも蜘蛛の大きさは自由に変えられる。
目に見えないほどのサイズも可能だ。
アラクネは大きくして戦わせる能力ではない。
小さければ小さいほど強い。
俺はそいつで爆弾を解除して天井に待機させていたのだ。
「くくく。木下君の能力に出し抜かれるなんてね……あーあ。せっかく両親を殺してまでこの世界に来たのにな……」
ゆらりと小室が立ち上がった。
瓦礫で頭を打ったようで顔は血まみれになっていた。
そしてその手には何かを持っていた。
周囲にはなんとも言えない異臭、腐った臭いが充満した。
あれは……
「あはははは。気づいた。これ副委員長の吉永君……の足かな? うふふふふ。彼ったら命乞いの声が傑作でね……最後まで母親の名前を呼んでたよ。うふふふふ!」
うふふと楽しそうな声を出した。
俺は壁を見る。
この部屋の壁には顔のようなものが見える。
まさか……!!!
俺は少し怯んだ。
いやだって……これはさすがに……
いや無理だって!
「男子はね。いらないんだ。だから、みんな壁に埋めちゃった。あの世からボクの勇姿を見守ってくれるんだ! ああ心配しないで。全員生きたまま埋め込んだから。君の代わりに全員殺しておいてあげたよ。うふふふふ」
うわああああああああああああああッ!!!
菊池に着いていった男子もこの様だ。
闘技場の方がまだマシじゃねえか!
自業自得とは言え、この死に方は嫌すぎる!
それに……
「菊池はどうするんだ?」
「うん。殺すよ。用事が済んだらね」
なんだか菊池が惨めすぎて涙が出てきたぜ!
「決着をつけよう。菊池君と君とボクとで……」
小室は顔を歪めた。
一気に投稿しました。
7月21日0時に最終話予約投稿しました。




