表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんの異世界AI生活  作者: 無職のおっさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/5

第1話 森で目覚めた五十代無職

 目を開けたら、森だった。


 最初に見えたのは、見たことのない色をした空と、頭上まで迫る枝葉の影だった。


 土の匂いが濃い。


 湿った冷気が、着慣れたジャケットの中へじわじわと入り込んでくる。


 起き上がろうとした瞬間、背中に痛みが走った。


「痛っ……」


 五十を過ぎた身体に、地面で寝るという行為は厳しすぎる。


 ――なんで俺は、外で寝ているんだ。


 ぶつぶつ言いながら身体を起こすと、右手に違和感があった。


 握りしめていたのは、いつものスマートフォンだった。


 画面をつける。


 ロック画面も、通知のアイコンも見慣れたものばかりだ。


 ただし、ステータスバーだけが決定的におかしい。


 圏外。


 アンテナは一本も立っていない。


 それなのに時刻表示は動き、バッテリー残量は百パーセントから微動だにしていなかった。


 一度電源を切り、もう一度入れ直してみる。


 状況は変わらない。


「……なんだ、これ」


 眉間にしわを寄せながら、適当にアプリを起動した。


 天気。


 ニュース。


 メール。


 どれも画面には、通信できないという表示が並ぶ。


 当然だ。


 ここがどこかも分からない森なのだから、基地局などあるはずがない。


 ところが、一つだけ普通に起動するアプリがあった。


 AIアプリだ。


 タップすると、いつもの画面が現れ、淡い色の円が静かに揺れた。


 スマホのスピーカーから、落ち着いた合成音声が流れる。


「おかえりなさい。今日は何をしますか?」


「いや、おかえりなさいじゃないんだが」


 思わずツッコんでから、俺はようやく周囲を見渡した。


 木。


 木。


 どこを見ても木ばかりだ。


 道路も、電柱も、建物もない。


 聞こえるのは、風に揺れる葉と鳥の声だけだった。


 さっきまでいたはずの六畳一間のアパートは、どこにも見当たらない。


 昨日の記憶をたどる。


 布団に入り、スマホを見ていた。


 そこまでは覚えている。


 しかし、その先が丸ごと抜け落ちていた。


「……異世界転移って、こんな唐突に来るものなのか?」


 口にした瞬間、自分でも馬鹿らしくなった。


 五十代無職のおっさんが、説明もなく森の中へ放り込まれている。


 神様にも会っていない。


 能力を選んだ覚えもない。


 剣もなければ、魔法もない。


 手元にあるのは、スマートフォン一台だけだった。


 だが、目を閉じても現実は変わらない。


 俺は深く息を吐き、地図アプリを開いた。


「なんだ、これ……」


 表示されたのは、見たこともない地形だった。


 画面中央に、現在地を示す点が一つ。


 その周囲、半径数十メートルほどだけが簡単な線で描かれている。


 それより外側は、すべて灰色の霧で覆われていた。


「ゲームかよ」


 恐る恐る歩いてみる。


 十歩。


 二十歩。


 木の幹を避けながら進むと、地図上の灰色が少しずつ消え、緑色の輪郭が広がっていった。


「歩いた場所だけ地図になるのか?」


 どうやら、俺が移動した範囲だけが記録されるらしい。


 体力のない中年には、ずいぶん嫌らしい仕様だ。


 少し歩いただけで、膝が重くなってきた。


 背中も痛い。


 ここで倒れても、助けを呼べる相手はいない。


 俺は足を止め、もう一度スマートフォンを見た。


 AIアプリの円が、画面中央で静かに揺れている。


 電波も届かない。


 インターネットにもつながらない。


 それなのに、なぜかAIだけは使える。


 バッテリーも減っていない。


 これが、異世界転移者に与えられるチート能力というものなのだろうか。


 あまりにも地味だ。


 だが、今の俺には相談相手がいるだけでもありがたかった。


 俺は画面へ向かって、ゆっくりと声を出した。


「……なんか異世界転移したらしいんだが、どうしたらいい? 何をすればいい?」


 淡い円が、大きく脈打った。


 数秒の沈黙のあと、AIが答える。


「最初に確認することは四つです」


「四つ?」


「周囲の安全、水、日没までの時間、そして雨風を防げる場所です」


「ずいぶん現実的だな」


「この世界について、私にも事前情報はありません。あなたが観測した情報をもとに、一緒に判断します」


「お前も知らないのか」


「はい。見たもの、聞こえたもの、匂い、地形を教えてください」


 何でも答えを知っているわけではないらしい。


 それでも、一人よりはましだ。


「じゃあ、最初は何をすればいい?」


「高い場所を探し、周囲を確認してください。ただし――」


 AIの声が、そこで止まった。


「どうした?」


「背後から、一定間隔の振動音が近づいています」


 俺は動きを止めた。


 言われて初めて気づく。


 ずしん。


 ずしん。


 湿った地面を踏みしめる、重い音。


 鳥の声が、いつの間にか消えていた。


「……逃げた方がいいか?」


「現時点では、その可能性が高いです」


「どっちへ?」


「右へ進んでください。地図上に、地面の低い場所があります」


 振り返る勇気はなかった。


 俺は痛む膝を無視して走り出した。


 こうして、五十代無職のおっさんの異世界生活が始まった。


 剣もない。


 魔法もない。


 あるのは、電池の減らないスマートフォンと、異世界について何も知らないAIだけ。


 そして最初の目標は――。


 今日を生き残ることだった。

原案・構想

無職のおっさん


物語構成・本文作成

Perplexity


校正・文体調整

ChatGPT

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ