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インベンションマン|Invention-Man  作者: 黒珈|くろこ


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22/121

episode 021

「落ちたぞーっ!」

「いやぁーっ!」

「何やってんだ、警察はァ!」

「おいおい、シャレにならねーぞ!」


 群衆が、少女の落下地点へと詰めかけていく。

 伊勢丹の入り口から下り階段に掛けては、たちまち人だかりが出来ていた。

 警察官が制止を求める怒声と、警笛の音がけたたましく響いている。


 そんな中、先程の美女は全く姿勢を崩さないまま、手元のティーカップに口を付けていた。

 夕刻に起こった悲劇が、この場所における主役の交代を起こした事など、微塵にも気にしていない様子だ。


 その時、カランとドアが開くとともに、一人の男性が入って来た。

 40代後半くらいの横顔は、歳相応の渋みを蓄えている。

 彼は、アーミージャケットの袖口を気にしながら店内を真っ直ぐ進み、彼女の隣の席にどっかり腰を下ろした。


「ここはセルフサービスなのか?」

 店員まで現場に飛び出して行ったらしく、無人となった店内の様子を見回した彼は言った。

「さあ」

 彼女は全く興味が無いのか、返事がとても素っ気無い。

 男は軽く肩を竦めて、ポケットからシガーを取り出した。

「ずいぶんと、派手にやったわね」

「ん?」

 紫煙を燻らす彼に、美女は言葉を掛けた。

「生身の人間だったのでしょう? 少々目立ち過ぎではないかしら」

「今の時代、ガキ一人が飛び下りたトコロで、大した騒ぎにはならねぇよ。それに」

 残忍そうな笑みを浮かべる。

「もう、充分役に立った」

「……ゴミの出し方を間違っているわよ」

 こちらもかなり酷い台詞だが、大した感情も込めずにそう言った彼女は、カップを置いて立ち上がった。


 男の後に続いて、店を出ていく。

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