第8話 入学式
今日は魔法学園の中等科の入学式。
僕は、両親と兄たちと一緒に馬車に乗って教皇国の国立魔法学園に向かった。
入学式が終わったら寄宿舎での生活になるから、カドケウスとアルジェントはハヤト様とケント様が寄宿舎まで連れて来てくれることになっているんだ。
学園に着くと、両親は受付に行くからと僕たちと別行動になった。
教皇国の大公様ご夫妻だから、家族用の席ではなく貴賓席に座って、父上はお祝いの言葉を話す予定。
一年生のクラスはランダムに5クラスに振り分けられているんだ。
二年生からは成績順に振り分けられるんだけどね。
僕はEクラス。
兄たちに教室まで送ってもらったんだけれど、兄たちを見た同じクラスの子たち、とくに女子が兄たちに呆然と見惚れていた。
兄たちが僕の頭にキスしてからいなくなると、僕の周りに女子の人だかりができた。
「あの、さっきのお二人はどなた?」
「貴方とどういう関係?」
貴族っぽい女子がキッと僕を睨みながら聞いてきた。
「え、っと・・・僕の兄たちです。」
「全然、似てないじゃない。」
「髪の色も目の色も違うし!」
「あなた、養子とか連れ子なんじゃないの?」
「あの・・・その・・・」
同じクラスの女子たちが怖すぎる!
兄たちに似ても似つかない容姿を貶され、僕が女子たちの剣幕に押されていると、
「席に着きなさい!」
と、担任の先生らしき人が入って来た。
「あ・・・」
担任の先生、聖騎士団の参謀で、僕の護衛兼浄化チームの隊長でもある、フェルゼン君だった!
見知った顔にホッとしつつ、僕は一番前の空いている席に着いた。
フェルゼン君は聖騎士団で兄たちとオスカー君、アンディ君の直属の上司でもあるんだ。
「1年Eクラスの担任を拝命しました、聖騎士団所属、フェルゼン・フォン・グライフです。担当は魔法学と弓術です。よろしく。」
フェルゼン君の挨拶で教室内が騒然となった。
「聖騎士、マジ?」
「スゲ~、ホンモノ?」
「静粛に!」
フェルゼン君の言葉に、みんなは口を閉じて姿勢を正した。
「では、入学式の説明をします。」
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「以上、何か質問は? ・・・無いようですので、注意事項を一つ。今年度の新入生には大公家のご子息がいらっしゃいます。シャルル殿下、こちらに。」
「はい。」
フェルゼン君の言葉に僕は席を立って、フェルゼン君の隣に立った。
さっき、僕に詰め寄っていた女子たちが顔面蒼白になってしまっているね。
詰め寄られて、色々言われて怖かったから、もう彼女たちとは関わりたくないなぁ。
「シャルル殿下は聖者の見習いです。本日はいませんが、普段は大公家の護衛騎士がお側に付くことになります。先ほどのような失礼な行動は控えるように。殿下、自己紹介をお願いします。」
「はい。シャルル・ド・ブランシュールです。浄化活動のお手伝いで欠席することもありますが、一年間、よろしくお願いします。」
会釈して、席に戻ると、フェルゼン君の指示で一番左側の席の子から自己紹介が始まった。
僕に詰め寄ってきてなんだかんだと言ってきた女子三人は、男爵家と子爵家、伯爵家の令嬢だった。
***
入学式では学園長先生からの祝辞のほかに、来賓代表として教皇国の貴族のトップの大公でもある父上が祝辞を述べられたんだ。
壇上から全体を見渡して、僕と目が合うとニッコリと微笑んでくれた。
美形が微笑むと、とんでもない破壊力だ。
僕は慣れてるけれど、あちらこちらで失神者が続出したみたいで、会場の片隅に何故かあった救護所に手際よく運ばれていた。
うん、こういう時のための救護所だったんだね・・・
「やべぇ、抱かれてもいいかもって思っちまったよ・・・」
「俺も、思った・・・」
「はぁ~カッコよすぎ~」
「うちの親父とチェンジして欲しい。」
僕の席の近くにいた男子生徒の何人かが小声でそんなやり取りをしていたのが聞こえた。
うんうん、僕の父上は強くてカッコよくて優しい、世界一の父上なんだよ!
父上の祝辞が終わると、今度は生徒会会長からの祝辞になった。
兄たちは正式な聖騎士になったので、浄化活動の任務で休みがちになるからと、生徒会の役員は辞退したんだ。
だから全然知らない上級生が生徒会長をしているんだよね。
入学式が終わると新入生は教室に戻って、記念の絵姿の撮影待ちの自由時間。
僕の周りには、さっきとは違って男子生徒たちが好奇心丸出しで集まっていた。
「大公閣下って、勇者なんだよな? 家ではどんな感じなの?」
「ふつうのお父さんだよ。」
「ふつうって、ぐうたらして母ちゃんの尻に敷かれてるの?」
「ぐうたらとか、お尻に敷かれてはいない、かな。」
「聖剣見たことあるの?」
「ああ、うん。父上と兄上の見たことあるよ。」
「マジ!?」
「やっぱ、主以外は重くて持てないの?」
「うん。そうだね。」
「スゲー! 触ったことあるんだ?」
「うん、許可を貰ってね。でないと、聖具に嫌われちゃうからね。」
今年の新入生には伯爵家位以上の高位貴族の子女は他のクラスに散らばっていて、Eクラスの女子は、入学式の前に僕に突っかかって来た伯爵家以下の令嬢たちと平民が数人だけだった。
男子の方は女子の倍の人数だけど、僕を除いて子爵家とか男爵家、平民の家庭の子ばかりだから口調がくだけている生徒が多いんだ。
だからクラスの男子たちは、かしこまってなくて、フレンドリーでいい感じなんだよね。
今世は友達たくさんできるかな?
ニコニコと微笑んで男子生徒たちの質問に受け答えしていたら、
「「「「「!!!」」」」」
急に男子生徒たちが顔を赤らめて、モジモジしだした。
「やべぇ、勇者の息子だけに笑顔、ハンパネェ・・・」
「かわ・・・」
「その辺の女子より、いい・・・」
「???」
なんだか不思議な雰囲気になってしまったけれど、最初が肝心だよね。
僕は思い切って言った。
「男子諸君、僕のことは気軽にシャルルって呼んでね。せっかく同じクラスになった縁もあるし、末永く仲良くしてくれたら嬉しいな。」
「「「もちろんだ!」」」
「「「シャルルのことは俺たちが護るからな!」」」
「「「俺たちにまかせろ!」」」
男子全員に食い気味にそう言われた。
なんか、よくわからないけれど、男子の結束と言うか、チームワークは良さそう、かな?
余談
認識阻害の腕輪はきちんとお仕事をしているけれど、シャルルの笑顔の破壊力だけは消しきれないのでした。
貴族の名前と苗字の間につく「ド」と「フォン」について
シャルルの世界では大陸の北東部から南東部の貴族が「ド」で、北西部から南西部の貴族が「フォン」となっています。
両方使いたかったので、地域で分けました。
あと、名前の読み方も、意味は同じだけれど国によって読み方が違う名前が出てきますが、同名という認識は無しにしています。
例)
ベルナール(仏)とバーナード(英)とベルンハルト(独)
「熊のように勇敢な」という意味です。
作者的には聖騎士団長ベルナールは熊系マッチョな勇者で、ギルド長のバーナードは犬の方のセントバーナードから救助犬なので救命士な僧侶とか聖者というイメージでつけました。




