第二話「蒼色の焦土」
残灰の砂漠
『にしたってほんと砂漠砂漠砂漠、どこまで行っても砂ばっかりね。つまんない景色。
あ、そう言えばさ、あんたって読書好きだったりしない?あたし読書は大好きなんだけどさ、好きな本は――』
フレスが一人で怒涛のように喋り続けるのを、セレスは無視して砂漠を進み続ける。
『ねえ聞いてる?興味がないならそう言いなさいよね!あっ、じゃあさ、好きなご飯とかある?あたしはコーヒーが好きなんだけどさ、あたしが昔好きだった男が好きでさ、あいつサンドイッチも好きだったんだけどあたしが読書してるところにしれっと近寄ってきてエッチなことしようとしてきて
敵性反応!敵性反応来てるよセレス!』
「わかった」
セレスが歩みを止めると、ちょうどそこは何かの見世物のための広大なフィールドの残骸であり、客席の最上段に二足歩行兵器が立っていた。
『TA!』
「そこの傭兵、止まりなさい」
二足歩行兵器が前に歩み出て、日光に照らされて全身を顕にする。
脚部を中心に多くの装甲を配した重量型の機体が、深く淡く輝く、海の底を思わせるような蒼色に染められている。
『色付き!ギルドランキング6位のブルーだ!』
「適当に歩いてたら迷い込んだのか……?」
セレスがブルーを見上げる。
「何を思ってここに入り込んだかと思えば……まあいいわ。どちらにせよ、お前のことを殺そうと思っていたことには変わりない」
『色付きと言えば並のモンスターじゃ相手にもならないガチの強者だよ!?』
「この世界で誰かの縄張りに入った私に責任がある。真正面からぶっ倒すしかない」
「大した胆力ね。この壊れかけの世界で独立傭兵でやっていくなら、まあそれくらいじゃないと無理だろうけど」
ブルーは飛び上がり、セレスの正面に立つように着地する。右手には中型レールガン、左手にはリボルビンググレネードランチャーを装備している。
「じゃ、悪いけど……ここで死んでもらうわ」
グレネードが放たれ、緩い噴射から飛翔していき、回避したところに着弾して、巨大な氷柱を生み出す。ブルーは飛び上がり、右に高速で飛びながら瞬間的なブーストで連続で詰めてくる。
『両腕とも遠距離射撃向けなのに突っ込んでくる!?』
「TAと人間の体格差で押し潰すつもりなんだろう」
セレスは脚部の出力を上げて全力で駆けて距離を取りつつ、自身の軌跡に大量の魔法陣をばら撒いていく。
「なるほど、崩壊前のパワードスーツか」
ブルーは接近を止めて後退しながら、セレスの進行方向にレールガンを発射する。こちらが方向転換する間もなく、圧倒的な弾速の電撃が眼前に突き刺さり、衝撃で吹き飛ばされる。セレスが空中で受け身を取りながら、追撃で放たれたレールガンの電撃に対し、全ての魔法陣を一気に起動して大量の激流を起こして電撃を霧散させ、同時に姿を眩ませる。
「ちっ、この量の魔法を詠唱もなしに使うとはな……」
ブルーは後退しながら腰に装備していたスモークグレネードを自身の間近で炸裂させる。
「スキャンモード」
ブルーの頭部の発光色が変わり、遮蔽に隠れたセレスの位置を認識する。見れば彼女は地面を猛スピードで駆けており、白煙の中にいるブルーへ脇目もふらずに突き進んでいるのが見える。
「(透視魔法でもスモークを貫通するのは難しいはず。だとすれば、こいつは“勘”で私に狙いをつけている……)」
セレスに狙いをつけてグレネードを発射すると、彼女は動きを空中で止めて砲弾を蹴り飛ばして進行方向をずらし、肉薄したセレスが強烈な踵落としを頭部に叩き込み、右手に凝縮した爆炎をブルーの胸部に叩き込んで爆発させ、両者離れて着地する。
「識別名“セレス”……今回は不幸な出会いだったわね。お前はいつか殺すけど……今は見逃してあげるわ」
ブルーはブーストで一気に離脱していく。
『うーん、レーダーの最大範囲から離脱……セレスの感知魔法には引っかかってる?』
「いや。本当に撤退したようだ」
『ちょっと肝が冷えたね……』
「あちらも本気で殺そうとはしていなかった。明らかに動きが悪いし、殺意が伝わらなかった」
『でも、ブルーの発言からするにセレスを狙おうとしてたら偶然出会っちゃったって感じだよね?』
セレスは衣装を整え、日陰へ歩いていく。
「ギルドに所属してない傭兵が長く生き残って、名前が広がることを良しとしない勢力がいるんだろう」
『ふーん』
手頃な瓦礫に腰掛け、一息つく。




