EEエンドレスロール:可能性を葬る者、奇跡の獣
『データ取得中…………
極楽浄土残骸、枢機卿機アウラム・パンテオン投棄領域へのアクセスを行った時間軸を特定しました。
一時的にアクセス権を譲渡していたレッドの死亡を確認。
アッシュに付与された残留思念の消滅を確認。
独立傭兵セレス、ブルーの交戦を確認。
応答待機中…………
戦闘データの記録処置を承認。
戦闘演算システム、エンドレスロール起動』
エンドレスロール 政府首都アルマ 外苑
『生体認証システム起動、プライマルパワードスーツ“IBIS”展開!』
フレスの決意が宿った声が響き、朝日の向こうから淵源の蒼光を放つ豪奢なパワードスーツに身を包んだブルーが飛翔してくる。
「これが私たちの答えよ、セレス!」
正面に着地して砂煙を巻き上げ、巨大な翼のような一対のオービットキャリアと、右腕の大型光波ライフル、左腕の光波発振器を保持した威容を現す。
「打ち砕く……!」
セレスはブルーの姿を見るやいなやいきなり竜化し、甲殻を密着させて蒸気を排出し、尾先にアッシュの大剣を融合させ、右腕にメイスを呼び起こして飛び出す。直線的に突っ込んでくる彼女へ、ブルーは自身でさえ制御が怪しいほどの急加速で右に避け、キャリアから大量のレーザーオービットを展開し、怒涛の勢いでレーザーを照射する。セレスはレーザーを甲殻の頑丈さだけで弾き返しながら左腕で地面を抉ってブレーキをかけながら方向を転換し、甲殻を展開して蒸気を爆散させ、オービットたちの制御を乱しながら反動で飛び出し、再び甲殻を密着させ、ブルーは猛追してくるセレスに対してそれ以上の速度で後退しつつ、光波ライフルを発射する。生憎狙いを外し、セレスの左肩を掠めるに留まるが、その程度の命中でも絶大な威力でセレスを地面に押し当てて釘付けにし、その間に追いついたオービットたちが蜂の巣にし、静止したブルーが左腕の発振器の出力を一気に最大にし、前方全てを更地にするような威力の光波ブレードで薙ぎ払う。セレスは直撃を受けて吹き飛ぶが、ブルーはそれでも攻撃を止めようとはせず、再びチャージを終えた光波ライフルで、今度こそ直撃させて撃ち抜く。セレスがそれらの攻撃を受けつつも受け身を取り、踵で地面を穿って耐え、レーザーの嵐に晒されつつも立て直す。セレスはなおもレーザーを受けつつも、力んでメイスを握り潰し、身体を丸めてこの上なく力む。
「ちっ……!」
ブルーは光波ライフルへ氷魔法を叩き込んで強引にオーバーヒートを終了させ、力むセレスへダメ押しにもう一発叩き込む。更に続けて左腕を掲げ、発振器を破壊して超特大の光波ブレードを生み出して、そのまま振り下ろして叩きつける。地平線の涯まで刃が届き、海を叩き切ってなお余りある威力が轟き渡るが、同時にセレスを中心として淵源の蒼光による超大爆発が起こって相殺する。
「ハッ、景気いいわね」
ブルーが辟易したようにそう言うと、砂煙の中から各部の甲殻をまるでオービットのように浮遊させ、淵源の蒼光に染まった内部の筋肉を顕にした、裸の竜化体が現れる。
「そう。そうね。あんたは怨愛の修羅にはなれない。あんたは誰も愛せないし、憎めない。ただ滅びを撒き散らしたい、そんな害悪でしか無い」
ブルーの両翼を担う大型オービットキャリアから尻尾と一対の小さな翼が生えて分離し、それ自体が大型オービットとなる。
「それでも確かに、私はあんたに夢を見た。滅びを齎す、救いの白い鳥……」
セレスが天を仰いで咆哮し、甲殻たちは鱗粉を撒き散らしながら、紅蒼に点滅して螺旋を描く。
『うっ……ぐっ……セレス……!』
フレスが呻き声を上げ、ブルーは全身に赫々たる炎を纏いながら、左手にも光波ライフルを生み出す。
「私はもう、誰にも負けたくないだけ。この世界で最強の存在があんたなのなら、私はそれを打ち砕く、ただそれだけよ」
ブルーは両腕の光波ライフルをチャージしながら、全てのスラスターを吹かし、一瞬の後に視界から消える。セレスは構え直しながら甲殻を自身の周囲に侍らせ、そしてこちらも一足で消える。大型オービットが無人機ですら厳しいほどの殺人的な挙動を行ってスペースデブリ群のような甲殻の防壁を潜り抜けて、姿の見えないセレスへ適当に当たりを付けて高威力の拡散レーザーを解放する。甲殻たちは各々が意思を持つように器用に動き、全てのレーザーを反射して大型オービットを狙い、それを予期していたとばかりに大型オービットもまた完全に囲まれた状態から縦横無尽に動き回って跳ね返ってくるレーザーを躱しながら何度も拡散レーザーを重ね、甲殻の挙動の限界へ詰め続ける。一方で瞬間移動の合間に姿を現したセレスとブルーがそれぞれ闘気弾と光波ライフルを撃ち合い激突させて相殺し、セレスが続けて詰めるように瞬間移動し続け、ブルーは引き付けてから瞬間移動で避け続ける。
『ブルー!このままじゃブースターの性質上こっちの限界が来る!セレスに追いつかれる前に決めないと!』
「ええ、でしょうね。でもセレスも正気を失っているみたいね。動きが殺すために洗練され尽くしているわ。読めるなら読みやすい、読みやすいなら返しやすい」
『セレス……』
次の停止した瞬間に左手の光波ライフルを撃ち込み、セレスは真正面から突っ込みながら尾の大剣で光波を横に両断し、その瞬間に大型オービットが二機ともブルーの元へ戻って来る。それに従って、応戦していた甲殻たちも戻って来る。ブルーはすかさず右手の光波ライフルを、甲殻たちへ撃ち込み、甲殻たちは不意の射撃にも関わらず一斉に隊列を変え、器用に反射してブルーに撃ち返す。彼女はバックステップしながら大型オービットを一機、自身が居た場所に召し寄せ、装甲面にエネルギーを集中させながら斜め方向に構えさせ、跳ね返ってきた光波を更にセレスへ撃ち返す。だがセレスは速度を緩めずに地面が割れるほど強く踏み込んで瞬間移動し、甲殻の嵐がブルーへ迫る。
「……」
ブルーは敢えて接近し、荒れ狂う甲殻たちに一度も被弾すること無く抜け、遂に至近距離でセレスと相対する。咄嗟に向けた右手の光波ライフルを尾の大剣が切断し、応えるようにブルーも武装を破却しながら全身から吹き出る炎の勢いを増加させ、両者は大型オービットと甲殻で片手間にせめぎ合いながら、単純に出力を上げた身体で掴み合い、力を比べ合う。
『ブルー……身体、がっ……持たない……よっ……』
掴み合う両手が拮抗し、そしてセレスの手がブルーのそれを握り潰し、即座に両手刀を振り下ろして叩き切る。間もなく内部から爆炎が迸り、ブルーは落下して地面に激突する。続いて大型オービットが落下し、制御を止めた甲殻も雨のように地面に突き刺さる。
「……」
セレスが着地とともに竜化を解き、ブルーへ歩み寄る。
「あんたは、優しいわね……私の悔いが残らないように……徹底的に、勝ちに来た」
「それはお前も同じはずだ、ブルー」
「ふっ……あんたは確かに、私の夢の……体現、だった……」
間もなくブルーの身体が瓦解する。
『セレス』
「なんだ」
『私は諦めない。きっと私が……セレスを、殺す。止めてみせる』
声が遠ざかるとともに、視界が白に塗りつぶされていった。




