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凄く久しぶりにホラーを書いてみました。
稚拙な文章ですが、温かい目で見て頂けると嬉しいです。
一言で表すなら不気味としか言いようがない。
酷く汚れた白っぽい建物は四角く上に伸びている。ここに住むことが分かっていたら、必死になって違う家に住むことをお願いしていたに違いない。透き通るような空の青さが、余計にへんてこりんな建物を不気味にさせていた。
王族、貴族が絶対権力を持つゼラディブ大陸において、自分の家をもつ事はある種のステータスとなる。
余程の富豪で無ければ平民が土地を買うことは出来ない。それは貧乏貴族にも同じ事が言える。
地方の下級貴族であるアリサの父親であるデュークは、領主にいいようにこき使われていた。文句も言わずに真面目に働いていたので、貧乏ながら家も与えられていたし、一人とはいえ使用人もいた。
王命で別の領主がいる地へ勤務先が変わったときは、家族全員で喜んでいた。
忙しいデュークに代わって母のミレイアが、まだ未成年のアリサの編入先である貴族学校にアリサと一緒に手続きに訪れていた。予想もしていなかった引っ越しと、見知らぬ土地にアリサの心は探求心よりも不安な気持ちのほうが勝っている。
慣れていない編入手続きで疲れたミレイアと一緒に、時間が丁度いいということで、近くで見つけた食事処へ入った。領主に挨拶に行っていないデュークの代わりに今日から住む場所を決めないといけない。その決断を任されている二人は責任重大な任務に何度もため息をはいている。
子牛の肉を煮込んだスープを飲んでいたアリサがミレイアに尋ねた。
「お母さま、これから商業ギルドに行って住む家を決めるんでしょ? 素敵なお家があるといいですわね」
「そうねぇ。引っ越し用に頂いたお金はあまり多くないから、贅沢は言わないけど素敵な家があってほしいわ」
下級貴族でも地位が低いので、国の都合で引っ越ししても多くの準備金は出ない。そのことを知ったアリサは父親の頑張りを知っているだけに悲しい気持ちになった。
デュークから渡された通信用の魔道具を鞄から取り出したミレイアは、魔石に魔力を込めると、小さなランプが点灯し声が聞こえてきた。
「ミレイア様でございますね。お話はデューク様より伺っております。これからお向かいに参りますので少々お待ちください」
「ええ、よろしくね」
ミレイアがもう一度魔力を込めるとランプの光が消えた。
「お母さま、今の声って商業ギルドの人でしょ? どうやってわたくし達の場所まで来れるのかしら?」
「この通信具は居場所もわかるようになっているのよ。だから私たちはここでお茶をしていたらいいです」
アリサに貴族らしい笑みを向けたミレイアは、呼び鈴を鳴らしてお茶のお代わりを要求していた。
暫くすると店の前に馬車が止まる。商業ギルドを表す紋章が見えたので迎えがきたのだろう。
清潔感のある男性が店に入るなり、アリサ達を馬車までエスコートしてくれる。会計をしていないことを気にしたアリサは慌てて声をかける。
「ちょっとお待ちになってくださいませ。まだここの支払いをしておりません」
「請求は商業ギルドにいくようになっているので、ご心配いりません。事前説明がないことをお許しください」
「そうなのですわね。それは失礼しました。こちらこそお呼び止めしてしまいすいません」
スカートの裾を掴んで謝ると、商業ギルドの男性はにこっり微笑んだので、アリサも同じように微笑みを返した。
馬車に乗せられて二人が最初に訪れた場所は貴族エリアの中でも小さな一軒家だ。彼が言うには貴族エリアはここしか空き家がないらしい。
隣の大きな家と比べたら小さいが、三人家族で使用人のケリーを入れても四人なので十分な広さ。前に住んでいた家より新しく見えるのでアリサは嬉しくなっていた。
「お母さま、わたしくはここがいいと思いますけど、どうでしょうか?」
この地に来てから不安しかなかったアリサには、この家に住むことを想像しただけで、これから頑張れる気持ちが沸いてくる。
そんなアリサとは正反対に眉をさげたミレイアは困った顔を浮かべている。
「確かに悪くはないと思うわよ。でも思っていたよりお高いのよね。今日中に住むところを決めないといけないからここは無理だと思うわ」
母親から反対されると思ってなかったので、アリサの落胆は大きかった。
荷物を運びこまないといけないので、宿屋暮らしは難しいのはアリサにも理解できる。学生のアリサにはお金の問題はなんにも出来ないことなので、残念な気持ちを飲み込むしかなかった。
次にアリサ達を乗せた馬車が向かったのは、例の不気味な建物だった。
彼が言うには、広くない土地を有効活用しようと考えた領主が、建物を上に伸ばすことで住宅問題を解決したらしい。まだ試験的な段階で増やしていないが、問題がなければどんどん増えていくそうだ。
一目惚れした家との落差でアリサはより一層落ち込んだ。見慣れない建物もそうなのだが、清潔感が無く汚れて見える壁の色が不安な気持ちを大きくさせる。母親であるミレイアも同じなのか、ひきつった顔をしていた。
商業ギルドの男性も彼女らの反応は慣れているのか、今日一番と言える営業スマイルを保持したまま明るい口調でまくし立てた。
「外から見るとあまりよく思われないのは、商業ギルドとしても分かっております。しかし、部屋はしっかりしておりますし、お客様の要求された広さは確保できています。ここと同様の広さの物件ですと、ご提示されたお値段を超えてしまいますが、いかがでしょうか?」
あわよくば前の家より良くなればいいと考えていたミレイアもいい印象がないが、この建物しかないと言われれば拒否したいけど、予算のことを言われてしまえば何も言えない。
彼に促されるまま敷地内に入っていく。最初の印象と打って変わり施設は充実していた。住民専用の小さな公園には子供用の遊具も置かれている。部屋はきれいであり、照明の魔道具やキッチンの魔道具も最新のものになっていた。
内見を終えて帰ろうとした時にアリサは強烈な視線を感じた。体にまとわり付くような嫌な感じに耐えれなくなり、その場にしゃがみこむ。
アリサが近くにいない気配を感じたミレイアが振り返り、うずくまっているアリサに声をかける。
「どうしたのアリサ? 疲れていたならお茶でも飲んで帰りましょうか?」
いまだにしゃがみこんでいる彼女の背中に触ったミレイアは驚く。激しい運動したかのように汗がびっしょりだったからだ。
「あなた、本当に大丈夫なの? 気分が悪いならお父様に言って手配してもらうけど」
母の声に反応したアリサは震える声で喋りだす。
「お母さま、ここ変だよ。……何かいる」
アリサの声が起点になったかのように、公園の木に留まっていた鳥たちが一斉に飛び立つ。それがアリサには恐怖から逃げているように見えていた。
読んでいただいてありがとうございます。
次話は今日、明日には投稿する予定です。




