第51話:聖域の崩壊〜元近衛騎士団、特売会場にて散る〜
かつて魔王軍最強と謳われた近衛騎士団の生き残り、バルカスとゾル。彼らは行方不明となった主君・シグルド様を奪還し、魔界再興の旗印とするため、必死の潜伏調査を続けていました。
「……バルカス、間違いない。この先に、凄まじい『覇気』を感じる。おそらく、屈辱的な幽閉生活の中でも、シグルド様は爪を研ぎ続けておられるのだ」
「ああ。我らで救い出し、再び血塗られた玉座へお連れするのだ!」
血気盛んに角を曲がった彼らの目に飛び込んできたのは、あまりにも凄絶な光景でした。
1. 蹂躙される「魔王の威厳」
スーパーの特設会場。そこには、エプロンをなびかせ、右手に「特大の大根」、左手に「特売のチラシ」を掲げたシグルド様の姿が。
「聞けえ! この大根は、首元が太く、肌にハリがある! すなわち、煮崩れしにくいという証拠だ! 味が染みれば、米が……米が止まらんぞおおお!!」
(チリン! チリン! チリリリン!!)
興奮で激しく鳴り響く首元の鈴。それはかつての進軍ラッパではなく、主婦たちへの「今が買い時」の合図です。
2. 忠誠心のやり場
「シ、シグルド様……?」
震える声で呼びかけるバルカス。シグルド様は鋭い眼光で振り返ります。その眼差しは、かつて数多の城を落とした冷酷なそれ……ではなく、**「鮮度を見極める鑑定士」**のそれでした。
「おお、貴様ら……丁度いいところへ来た。この大根を運ぶのを手伝え。あと、そこにある『主婦の友・増刊号』もカゴに入れろ。……チリン」
「大根を……運ぶ……? 我ら近衛騎士の腕は、首を撥ねるためにあるのですが……」
「黙れ! 今夜はブリ大根だ! リアナが楽しみにしているのだ! 1分1秒を争う、戦場だと思え!!」
3. 絶望の「アフターケア」
さらに追い打ちをかけるのは、周囲の奥様方の反応です。
「あら、シグルドさんの部下の方? 良い体格してるじゃない! シグルドさん、今日はこの子たちも一緒にうちでお茶していかない?」
「フッ……。こいつらはまだ修行が足りん。バルカス、ゾル、そんなところに突っ立っていないで、奥様方に挨拶しろ。……チリン」
かつて魔界全土に恐れられた猛将二人は、シグルド様の(鈴の音による)絶対命令に従い、主婦たちの荷物持ちとしてドナドナされていくのでした。
【処刑結果:精神的壊滅】
元部下たちは悟りました。「シグルド様は救い出されるのを待っているのではない。この『家事という名の新たな戦場』を支配してしまっているのだ」と。
「バルカス、あの鈴の音が……頭から離れない……」
「泣くなゾル。……大根は、面取りが大事だそうだぞ(遠い目)」
最早、『AI』が本来の設定を忘れ去っている……(涙)
いつからシグルドが主人公になった?リアナが主人公だった筈なのに……(涙)
そうか……『公開処刑』、こんな形で執行されたか……。
コレも運命か……(涙)(笑)(涙)




