8.「魔法眼鏡の前衛」
ギルドの中の受付前で、ミレーネさんに前衛として紹介されたのは少し年上の男性だった。
どうしても後衛が欲しかったらしい。
「よろしくお願いします。僕の名前はエル。もうちょっとダンジョンの深いところまで行きたくて一緒にパーティーを組んでくださる後衛を探していたんです」
「私の名前はリア。よろしくです」
私は短く名前を名乗ってから、エルさんを眺めた。
黒い髪に黒い目。細面の落ち着いた顔の人だった。
まだこの街での冒険者としての活動時間が短いせいで、有能だけれど私より下の鉄級冒険者だと聞いた。
前衛で剣士だからなのか、軽鎧を着て長剣を背中に背負っている。
そして、この世界では珍しいことに銀のフレームの眼鏡をかけていた。
前世では眼鏡の人はいっぱいいたのに、この異世界は全然いない。
もちろん、私も前世では眼鏡をかけていた。懐かしい。
「? …………おっと……………前衛なのに眼鏡をかけているのが気になりますか?」
「え………………? あ、ごめんなさい!」
「いえ…………」
エルさんに軽くよけられてから、自分がいつの間にかエルさんの眼鏡に手を伸ばしていたのに気づいた。
「剣士の僕が眼鏡なんて戦闘に邪魔なものしてて気になりますよね。安心してください。これは特注品でどんなに戦闘してもこの位置から落ちない魔道具の眼鏡なので」
………………なぜだろう。
エルさんの顔に見覚えはないのに、どこかで会った気がするし、眼鏡にとても違和感があった。
「ダンジョンで最近ゴーレムが出たりするのですが、剣と身体強化だけでは火力不足で心許なくて、時間をかければ倒せるのですが。あ、後、ダンジョンのギミックが複数人前提のギミックが増えてきて………」
「分かります! ゴーレムとダンジョンのスイッチ行き詰りますよね!」
私は、エルさんの言葉が最近自分が困っていた事と被りすぎていて、元貴族令嬢としてはしたなくも大きな声を出した。
最近、冒険者に染まりすぎているのだろうか。
自分でも自分の勢いに驚いて、エルさんを恐る恐る上目遣いで眺めると、
「分かってくださって良かったです。よろしければ、お試しでパーティーを組んでみませんか」
と言って、その細面の顔をクシャッとさせて笑ってくれた。
その笑顔が暖かくて良い人そうで安心した。
唯一気になるのは、男女のパーティーという事だけれど、入り口で犯罪者を弾いているアイステリア王国では男女トラブルも圧倒的に少なくて特に問題にはならなかった。
家と同じでそういうものだろう。
私ももう冒険者になって2年目だし、異世界のやり方に慣れなくてはならないと思う。
「よろしくお願いします!」
そう言って、握手しようと手を差し出すと、
「良かったです。安心しました。エルと呼んでください」
と言って、握手してくれた。
「私もリアって呼んでください」
私たちの和やかな雰囲気に、周りから、
「頑張れー」
「うまくやれよー」
などと声が巻き起こって拍手された。
見ると、他の冒険者の人たちが私たちのやりとりを見守ってくれていて、温かい表情で応援してくれている。
「では、仮のパーティー登録をさせていただきますね。書類を書きますので二人ともおかけになってください」
ミレーネさんも笑顔だった。




