12.「今日は良い日だった」
パーティー結成から何日か経ってから、無事ゴーレムエリアはクリアできた。
色の違うボタンを同時に押すギミックもクリアできた。
そもそも、少し手間だったとはいえ、ゴーレムはそれぞれ自力で倒せていたのだ。二人でゴーレムを倒すのは楽勝だったし、少しの時間なら別れてボタンを押して元の所に合流するのも問題なかった。
「エルさん、ギミックがかかってる宝箱も開けられるなんてすごいですねー」
「僕、盗賊系スキルも少しできるようにしたんです。ソロで行くなら色々できないとって。結局、リアさんにパーティーを組んでいただくことになってしまいましたけれど」
エルさんが指先で照れたように頬をかいた。
―辺りはまだ明るい。
今日はゴーレムエリアを軽く巡回した結果、ゴーレムのドロップ品が予想以上の成果だったので、探索を早めに切り上げたのだ。
街を軽く歩きながらギルドまでの道をエルさんと歩く。
「リアさん、明日はゴーレムエリアを少しまわった後、もうちょっと先に行って様子を見てみましょうか」
「ですねー。そうしましょう」
打ち合わせの会話が弾んで、これがパーティーの醍醐味かと思う。
なかなか冒険者生活は充実してきている。
「あっ、おーい、リアー! 皆で今日は飲みに行く予定だぞー。いつものとこ肉が2割引きでパン無料の日だからー」
「あっ、そうだったー」
ギルドが見えてきた所で、時々最初の頃から食事に誘ってくれる冒険者の人に道の向こうから声をかけられた。
そうだったそうだった。今日はパンが無料の日だった。
素朴な黒パンだけれど、これがなかなか美味しい。
「そうだ、エルさんも行きませんかー?」
横を歩いているエルさんに声をかけると、エルさんは、一瞬目を伏せてから、目を細めてにっこりと笑った。
「お誘いありがとうございます。せっかくなんですけれど、ギルドに報告に入った後、鎧と剣を軽く調整しにいくつもりなので、今日は遠慮させてください。すみません」
「残念。また今度一緒に行きましょうね」
「はい、あっ、僕がギルドに報告済ませてしまうので、――リアさんはどうぞ行ってください」
「えっ、あ、ありがとうございます」
自然な感じで私の手からエルさんが依頼表(いつも出てるゴーレム討伐の依頼&パーティー『黒の炎』がゴーレムを討伐した報告』が書きこまれている)を受け取る。
「おう、エル。すまないな、またの時に一緒に行こうぜ!」
「ええ、よろしくお願いします」
誘ってくれた冒険者の人がエルさんにも声をかけて、エルさんが冒険者の人にもにっこりと頷いた。
「エルって、真面目ないいやつだよな。今度は一緒に飯行きたいなっ」
「本当だよ。良い人とパーティー組めて良かった」
次、一緒にご飯に行けたら、エルさんにお礼に御馳走したい。
エルさんも知っているだろうけど、今日行くお店はお肉も美味しいから。
なんとなく少しの間ギルドの方に歩くエルさんを冒険者の人と見送ると、エルさんが気づいて振り返って小さく手を振った。
その様子が男の人なのに可愛くて、
「また明日ねー」
というと、エルさんが大きな笑顔になった。
エルさんの笑顔に心の奥が暖かくなった。
――今日も平和で良い日だった。
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