為すべきこと
「さて、これからどうしようか」
エアリアが溜め息交じりに呟き、周囲を見回す。上階はなくなり、壁もほとんど残っておらず廃墟、と言うよりも崩壊した後の残骸、と言った方が正しいだろう。
ハルトとドラガンの乱入があり、薄れているがここへ来た理由は金銭を奪う魔物が出現したというものだ。
だが、件の魔物、いやそれを利用していた人間はすべて死体となり、今は壁の染みの一部だろう。
「救えれば良かったんですが……」
四人の内の三人を殺してしまったリオンの胸中は複雑だった。魔族となった仲間を救うと言ったのにこの体たらくでは前途は多難だった。
「あの状態からでも助けられるモンなんでスか?」
「それを言われると辛いが……」
答えは、分からないと言うのが本音だった。“魔王”の闇を取り込み魔族となった仲間を救う方法も分からないのに、その仲間が創った物で変じた魔物を救う方法など分かるはずもなかった。
(この能力をどう使えば……)
頼みの綱は“自在術式”だが、それをどう使うかのとっかかりがないのだ。
ただ単純に頭で想えば大丈夫、というならもうすでに解決しているだろう。
だが、どれだけ頭の中で想い描こうとも、実際にぶつかり合う中で想おうとも反応が見られないのだ。
かぶりを振って、リオンは不安を追い出す。救う手立てなど存在しない。考えないわけではないが、気にしないことにする。
(……マユリだってこの術式は成長すると言っていたしな)
あの胡散臭い女の言うことがどれほど信用できるかは分からないが、この件に関しては嘘を言ってはいないだろう。そうでなければハナから“自在術式”を使わせ、世界を平和にさせているだろう。あの女はそれくらいはする。口調こそ優しいが、そういう強さを持つ瞳をしているとリオンは感じていた。
「とりあえず報告書をまとめなければな」
自身も、元人間を一人殺していて、内心思うところが無いではないが、それを表情には出さずエアリアが言う。自身の感情と為すべきことを天秤にかけ割り切ること、騎士として生きる中で身につけた、いや身についてしまった処世術であった。
「あ、それならウチがやっておきまス。薬技研への報告用書式がありますから」
そう言って“魔道通信機”をコンコンと軽く叩く。よそ者の二人が何かするよりも、この国の人間に任せてしまった方がいいだろう。
「そうか、助かるよ。正直なところ、報告書の類は苦手でな。それが他国となればなおさらだ」
「ハハ、まぁこの国は報告書のやり取り多いでスからね。任せて下サい」
そう言いながら、早速“魔道通信機”に向き合うカレン。
それを見ながら、残った二人はその後のことを相談する。
「ここを出た後はどうする?」
「とりあえずはミチターの街のような事件がある場所を探してみましょう。魔道鋼を使って実験をやっているようですし。でも……」
そう言ってリオンは言葉を切る。とりあえずこの二十一番街を出た後ですることはそれだが、その前にやっておかなければならないことがある。
「でも、なんだ?」
エアリアの怪訝そうな顔に、絶望的な答えを返す。
「でも……その前にドラガンと闘わなければなりません」




