決意 ーわがままー
想いが通じた、と言うにはあまりにも苦しそうではあったが、目が覚めたことは事実。リオンは汗でビッショリとなった顔で辺りを伺った。
そこには先ほどまでの闇は無く、心配そうに覗き込む二つの美しい顔が映っていた。
「はぁ……あぇ? 僕は一体……?」
「リオン! 良かった、目が覚めたか!」
「エアリアさん……カレンも……」
「心配したっスよぉ、ずっとうなされていたんスから」
二人は、未だ状況を上手く呑み込めていないリオンに手当てを施しながら状況説明をしていく。
「ドラガンはどうしましたか?」
「ああ、途中でやってきた魔族か? 奴ならどこかへ飛んで行ったよ。私は何も出来なかった……」
拳を強く握りながら、その美しい顔を歪めるエアリア。やはり、仲間が一方的にやられているのに助けられなかったのが相当に堪えているようだった。
だが、ドラガンに立ち向かったところで一撃のもとに殺されるのが関の山。矜持を傷つけられても無事でいてくれる方がリオンにとっては嬉しかった。流石にそれを口に出すほどリオンも、子供ではないが。
「ウチはもう腰を抜かすばかりで、なんの役にも……」
「いや、大丈夫だよ。魔族と戦うのは危険だからね、無理をしないでいてくれただけでも十分さ」
申し訳なさそうに俯きながら、包帯を巻いてくれているカレンに優しく声をかける。実際、カレンでは下手をしたら手を触れずとも殺されてしまうかもしれない。
「ありがとう、楽になったよ」
あちこちに包帯を巻き、痛々しい姿となったリオンは礼を言って立ち上がる。血を流しすぎたせいか、若干ふらつくが回復魔術を使っているのでじきにそれもおさまるだろう。
おぼつかない手つきで、そばに置かれたロングコートに袖を通す。おびただしい血痕で、元々鈍い赤色だったそれは赤黒く染まり、所々が破れているのも相まって、言い知れぬ不気味さを纏っていた。
「おい、まだ動いてはだめだ!」
「そうっス、いくら回復魔術があるからって無理は禁物っスよ」
歩き出そうとしたリオンを二人が止めようとするが、逆にリオンの方が二人を制止した。
「いえ、僕はここからは別行動を取ろうと思います。勝手を言いますが分かって下さい」
二人はリオンの言葉の意味が分からなかった。いや、分かりはするが脳がそれを拒んだのだろう。
深々と頭を下げる目の前の少年に、エアリアは声を荒げる。
「何を言い出すんだ!! そんなこと出来るわけないだろ!!」
今にも詰め寄らんとするエアリアを宥めながらも、カレンも怪訝な顔でリオンの言葉を拒絶する。
「そうっスよ! そんな体で一人に出来る訳ないじゃないっスか!」
そう言われることは当然折り込み済みだった。そこまで長く一緒にいた訳ではないが二人の優しさは十分に理解していた。
だからこそリオンは、これ以上一緒にいる訳にはいかなかった。
「ごめんなさい。でも僕は……仲間を救うことを諦められないんです」




