二十一番街へ part1
三人は必要な物資を“貨物起動車”に積み込み、三番街を後にする。
入るときは通らなかった、大仰な機械仕掛けの門を振り返りながら、リオンが呟く。
「本来はあの門をくぐって出入りするんですね」
「ああ、あのゲートで通行料を支払い、管理タグを受け取るのが正式な方法なんだ。私たちはそれをせずに入ったからなあそこまでの大事になってしまった」
そう、二人がクウド、そして三番街に入るとき、双方でゲートを通らず無理矢理に壁を乗り越えて来たのだ。エアリア曰く、なるべく発覚を遅らせたいとのことだったが、あんなことになるのなら正式に入国した方が良かったような気がするリオンだった。
「でも、僕らは管理タグというものを持っていなかったのに、よくすんなり通れましたね」
「まぁ、その辺はあの男がちゃんと約束は守ったということだろう」
通行料を余分に取られたがね、と付け加え、エアリアは“貨物起動車”に取り付けられた、モニターを操作する。
今回は、カレンたっての希望で、彼女が運転をすることになったのだ。楽しそうにハンドルを握り、シフトレバーを操作する彼女を、エアリアは優しそうに微笑む。
「カレンは、起動車が好きなんだな」
「ハイ、ウチ、親が起動車乗りだったんでその影響で、小さいころからレースとかにも出たりしていたんでス」
「レーサーにはならないのか?」
「自分でメンテをしているうちに、走る方よりもマシンをイジる方が楽しくなってシまって……」
そうか、とエアリアが小さく笑いながら、外を眺める。ガランとは違い、完璧に整備された道は走りやすさも段違いで、窓から吹き抜ける爽やかな風が、美しい真紅の髪をなびかせる。そんな走るには絶好の環境の中に身を置いていれば、否応にもエアリアの体もウズウズしてくるというものだ。
「騎士サマも、走るのは好きなんじゃないでスか? あのチューンは騎士団の正規のものではないでシょう?」
そんなエアリアの様子を見て、カレンが質問をする。自分の操作を、楽しそうに眺め、外の空気に目を輝かせる彼女に、自分と同じ空気を感じ取ったのだ。
「ああ、昔はレーサーを目指していたこともあったんだ」
「それが、どうして騎士団に?」
「王女殿下との出会いがあってな」
そう言って、思い返すように遠くを見るエアリア。その瞳には、複雑な感情が渦巻いているように見えた。
「そういえば、二十一番街は結構遠いのかい?」
所在無げに二人の会話を眺めていたリオンが、カレンに尋ねる。番号で考えるなら、かなりの距離がありそうではある。
「いえ、そこまで距離はないでスよ。だいたい、二、三時間ってところでスかね」
そう言って、アクセルを踏み込むカレン。スピードを上げた“貨物起動車”が周囲の車両を追い抜いていく。後ろに流れていくそれらを眺めながら、
(何事もなければいいな……)
そう思わずにはいられないリオンだった。




