終わりと始まり
ゴンザレスと契約を取り決めた俺は屋敷を後にした。村長には致死するほどのウイルスを注入した。もしゴンザレスが解毒剤を残していたとしても助かる見込みはないだろう。万が一助かる可能性があるとしても契約を取り決めた以上、ゴンザレスは俺に不利になるような行動に出る事はできないはずだ。
「……結構時間が経っちまったな……」
思った以上に時間が経過していた事に対し、思わずため息を出してしまう。さすがに夜が空けたら外から誰かがやってくるだろう。村の異常を感知されたら、誰かがこの村に派遣されるだろう。そうなれば戦闘は避けられない。万全の状態ならともかく、ゲームの開催やゴンザレスとの戦いで消耗した状態ではさすがに相手できる自信はない。
「さてと、ゲームも終わりだし後片付けを始めますか」
最後の大掃除を行うために俺は村の中心に移動する。さすがに外を徘徊している者の姿を見る事はなかった。おそらく全滅はしていないと思うが生き残った住人たちは、家の中やウイルスの影響を受けにくい場所にこもりじっとゲームが終了するのを待っているのだろう。住人たちの半数以上はウイルスの効果で死去しているが、残った住人はもう間もなく終わるであろうゲームにほっとしているはずだ。
(悪いな。これも運命だと思って諦めるんだな)
俺は心の中で謝罪しつつ、住人たちが村から逃げられないように外に蔓延させていたウイルスを操作し、全て村の中へ引きずり込んだ。見た目こそ変化はないが俺の魔力によって作られたウイルスがあっという間に村を浸食し始める。ウイルスが村に入ってくるや否やあちこちから悲鳴が上がり始める。おそらく何とか生き延びていた住人たちのものだろう。村の中にウイルスの魔の手が広がった事で避難していても感染してしまう状態になったのだ。
そう、俺は最初から全員助けるつもりなど毛頭なく、最初から村を全滅させるつもりだったのだ。例外としてゴンザレスだけは生存させ、村の全滅に対して虚偽の報告をさせる事にしたのだ。
「父さん……。母さん……。仇は取ったよ……」
今の自分の行いに対して両親はどう思っているのだろうか? 非道な事をした悪魔? 生まれてくるべきではなかった呪いの子? 自分を置いて先に逝ってしまった事の後悔? こういう惨状を引き起こす発端となった自分たちへの懺悔? 既にこの世には存在しない彼らの胸の内はたとえ家族であっても知る事はできない。
だが例え、悪魔だ呪いの子だと言われても俺はこの復讐を完遂しただろう。
(それに……まだ終わっていないしな……)
あくまでこの村はターゲットの一つなだけであり、他にも復讐を果たすべき相手はいる。
両親と自分とを引き離した教会
散々な目に合わしてくれたギルド
自分を殺害しようとしたスレイン達Aランクギルドメンバー
上げるときりがない。そんな彼らにこの村と同じように地獄を見せる。最早それこそが俺の生き様なのだ。
「そうかい……これがお主の道の第一歩なのじゃな……」
突然、俺の胸の内の言葉に対して返答するかのように何者から声をかけられる。その事に俺は驚き声のした方向に対して身構え、戦闘準備の体制をとる。
「そう身構えんでもいいわい。ワシには戦う事などできんからのう」
話しかけてきた人物、それは俺に復讐の手助けとなる道具を提供してくれた老婆であった。この老婆には感謝はすれど恨みはないため、避難するよう勧告したのだが聞き入れては貰えなかったようだ。だがそれよりも驚くべき事に、ウイルスが蔓延してる中、生存しているという事に驚きを隠せない。
「何故生きているのか? という顔をしておるのう。分かるじゃろ? ワシの腕を見れば……」
老婆の腕にはスキル封じの腕輪がつけられていた。老婆のスキルは不明だがスキル封じの腕輪をつけて拘束しなければならないほど強力なものだったのだろう。だがその腕輪が老婆の身から外されていたのだ。
肩から先にある腕ごとバッサリと……。止血はされているようだが老婆の顔色は大分悪い。
「お主のスキルの効果で住人たちが苦しみだしてのう。血気迫った顔でワシに何とかしてくれと迫ってきたのじゃよ。当然ワシは拒否したよ。腕もあの有様じゃったしな。だが奴らには通じなんでな……。その結果がこの有様じゃよ……」
住人の誰かが俺のウイルスを何とかするよう老婆に頼み込んだが断られたのだろう。スキルを使えない自分には何もできないといって……。そしてそれを聞いた住人が自分たちが助かるために……。あくまで俺の推測でしかないが、もし予想が当たっていたとしたらとんでもない奴らだ。
「今お主のスキルの影響を受けてないのもこうしてスキルを発動できるようになったワシの力なんじゃよ……。といってももうこんな体じゃ。長くは持たんじゃろう」
俺のウイルスの影響は受けなくとも、老体の身は徐々に衰退しているようだ
「ワシの事は気にするでないぞ。お主の行く先を見届けようと決めたのはワシなんじゃから。してお主はこれからどうするのじゃ?
思わずスキルを解除しようとした俺に対して老婆は制止の声をかける。もう老婆はここを死地として決めたような決心した目をしている。
「……別の町に向かおうと思います。まだ俺の復讐は終わっていませんから……」
「……そうか。お主のこれからを見届ける事ができなくてすまんのう。ワシの最後じゃ。村の後処理はうまくやっておこう」
老婆にはゴンザレスの事を話し、後の事を託す。ゴンザレスだけでは不安だったがこの老婆がいるならうまく処理してくれるだろう。
こうして俺の復讐の第一幕は終焉した。
だがまだ終わりではない。今もなお他人を平気で犠牲にしながら愉悦に浸り、日常を当たり前のように生活している屑どもがいる。
それを殲滅しない限り俺の復讐は終わらないのだから……。
ありがとうございました。
ここまでこれたのも読んでくださった皆様のおかげでした。
いったんはここで終わりとなります。




