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狂暴な力

「くっ!」


ゴンザレスが振りかぶってきたのを見て、俺はすかさず前転して何とかその攻撃をかわす。金槌による攻撃の一撃は俺ではなく屋敷の床に命中し、大きな穴を空けた。


「っぶねぇ!」


さすがはBランクのギルドメンバーともいうべきか、やはり破壊力はかなりのものだ。屋敷のバリケードを一撃で粉砕しただけはある。


「おいおい、どういうつもりだ?」


俺の言葉に耳を貸さず、ゴンザレスは続けざまに金槌を振るってくる。何とかその攻撃をかわしつつ俺はウイルス感染のスキルをゴンザレスに向かって発動するが、一向にその効果が現れない。


(一体どうなってる!?)


発動できる期間、効果、範囲、これらはキマイラがいたあのダンジョンで何度も検証した。今読み間違えてるという事はないはずだ。

(って事は……最後のゲームをしている間に何か対策をしてきたって事か!)


俺が住人たちと解毒剤が欲しかったら村長に悲鳴を上げさせないとゲームをしている間に、何かがあったとしか思えない。確かに時間はいくらかあったが、俺のウイルス感染のスキルを対策できるほどの時間があったとは思えない。もし対策がこれほど簡単にできるならばゴンザレスの仲間たちは俺のスキルの効果によって死ぬ事はなかったのだから。


「うぉぉぉぉ!」


あれこれ考えている俺に、ゴンザレスは一切の躊躇なく金槌を振るってくる。あの威力、一撃でも貰えばアウトだ。村長の傷を治した時のように回復する余裕などないだろう。となれば一撃を貰う前に何とかゴンザレスを止める必要がある。


(くそ! いったん距離を取るか!)


幸いな事にここは屋敷だ。中は広く、部屋も複数あるため、身を隠す事は簡単だ。俺は一度ゴンザレスと戦う事をやめ、一度作戦を練るためその場から逃走する事にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「まさか、こんな事になるとはな」


完全に心をへし折ったと思ったのだが、何があったのかゴンザレスは再びこちらに向かって襲い掛かってきた。どうやら復讐の神様というのは簡単に事を運ばせてくれないようだ。


「うぉぉぉぉ!」


ゴンザレスの咆哮が聞こえたかと思うと、何かが壊れたような轟音が辺り一帯に響き渡る。音の大きさから察するにかなり大きな破壊があったという事が分かる。


「まさか、屋敷自体を破壊しながら俺を探す気か?」


確かにゴンザレスが持つパワーはかなりのものだが、辺り一帯を破壊しながら捜索を行うという行為は正気とはとても思えない。


「……待てよ。あの尋常じゃないパワー、こちらが声をかけても反応しないあの態度」


一つ思い当たる節がある。俺が持つウイルス感染のスキルの中にもある、効果の一つ。正気を失う代わりに尋常じゃないパワーを手に入れる効果、俺のスキルの場合はゾンビウイルスの効果なのだが、魔法の中に、それと同じ効果を持つものがあった。


「狂人化の魔法か……」


理性と引き換えに、強靭なパワーと体力を手に入れる魔法。これにかかったものは通常とは比べ物にならないくらいのタフさと攻撃力を得るが、その代わりに理性を失い、暴走してしまうというハイリスク、ハイリターンの技だ。そのため、この魔法の使いどころは難しい。スレインたちのパーティにいた時は神官のルゥがこの魔法を使う事ができ、その時は味方ではなく敵に使っていた。攻撃力は無いもののかなりのスピードを持つという魔物相手にこれを使って理性を失わせて狩りやすくするという方法を取ったのだ。最もその方法を提案したのは俺だったのだが、その手柄は見事に奪われしまったのも苦い思い出だ。


「だが狂人化の魔法を使ってると分かれば対策は簡単だな」


タネが割れれば後は簡単である。相手が狂人化しているというのであればその弱点を突けばいい。あの老婆から貰った装備の中にいくつか使えそうなものがある。それを使えば狂人化しているゴンザレスを止める事ができそうだ。


「さてと、それじゃあ策を練るとしますか」


俺はゴンザレスを止めるための作戦を移す事にした。



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