ルール説明
お待たせしました。
今日複数話投稿できそうです。
よろしくお願いします m(_ _)m
「ゲームだとぉぼぉぁぁぁぁ! ふざけぇぇがぁぁ!」
村長は言葉でない何かを叫びながらこちらを睨みつけてくる。相当ウイルスの効果が効いているのか最早ケダモノの咆哮のように叫びながら悲鳴を上げている。だがそんな中でも戦意を失わず睨みつけてくるのだから大したものである。
「ああ、ゲームだよ。今ここで簡単に死なれたらつまらないからな。今からルールを説明するからよーく」
聞いておけよと言おうとしたが、住人たちはウイルスによる苦しみでこちらの話を聞く余裕がないようだ。これではゲームにはならない。
(少しくらい回復してやるか……)
俺はバッグからある一つの杖を取り出す。老婆から譲ってもらった装備品の一つで、この杖を使う事でスキルが無くても簡単な魔法であれば使えるようになるという優れモノだ。俺はその杖を使って治癒魔法を辺り一帯にばら撒く。すると症状が緩和されたのか、苦しんでいた者たちの表情が穏やかなものになる。なるほど、やはりウイルスに対して治癒魔法による治療は有効なようだ。
「よーしこれでルールの説明ができるな。一回しか説明しないからよーく」
「ふざけるな! この呪いの子め!」
突然、住人の一人である男がこちらに向かって拳を振りかざしてくる。
「ぐぅ……かはっ……」
だがその男は俺に近づいた途端、再び苦しみ始め地面に倒れこむ。そしてそのまま悶え苦しみながら息を引き取った。
「そんな……あなた! いやぁぁぁ!」
倒れた男の妻だろうか。一人の女性が男が息を引き取った姿を見た事で動揺したのか大きな悲鳴を上げる。
「ったく、ルールの説明をちゃんと聞かないからこうなるんだ。先に言っておくが俺に触れようとしても無駄だからな。俺の近くにはお前らがさっき浴びた以上のウイルスが漂っている。俺に近づいた途端、一気に症状が重くなって一発でアウトだ。余計な事は考えない事だな」
あらかじめスキルを発動し、自身の周りに濃度をかなり濃くしたウイルスを発生させている。元々は俺を倒してウイルス発生を抑え込もうとする輩を牽制するための保険として発動していたのだが、結果的に住人の一人の命を奪う事となった。見せしめという訳ではないが、俺に近づいた男の最期を目の当たりにした以上、俺に直接襲い掛かってくる者はこれでいないだろう。
「なら魔法だ! おい、魔法を放てる奴は一斉に放て!」
「村を守るんだ! やっちまえ!」
近接攻撃が効かないのならと今度は住人たちが一斉に魔法を放ってくる。治療してやったというのにまるで手の平を返すようにこちらに攻撃を仕掛けてくるその根性だけは大したものである。
「な……」
「効いてない……だと」
宴が始まる前に、俺は老婆の家で服を着替えておいた。今着ている服は魔法耐性を持つ効果がある服で、魔法の威力を大きく抑える事ができる効果を持っている。さすがに強力な魔法は抑える事はできないが、村人が放つ程度の魔法であれば完全にダメージを防ぐ事ができるようだ。ウイルス感染のスキルしか持たない俺だが、これなら多少であれば戦闘をこなす事ができる。あの老婆には本当に感謝しかない。
「怯むな! 撃ち続けれいつかは……かはっ!」
「ぐぅ……ぐふっ!」
魔法を放つよう指示していた男たちに向かって俺はスキルを発動し、ウイルスを感染させる。魔力を込めて発動したため、前よりも更に強力になっている。ウイルスによって発生した苦しみに耐えられず、感染した男たちは倒れこみ、二度と起き上がる事はなかった。
「抵抗しても無駄だ。命が惜しけりゃ余計な事はしない事だな」
魔法を使えるといっても所詮付け焼き刃程度。その程度では俺を倒す事が出来ないと思ったのか、住民たちはただ黙って俺を睨みつける事しかできずにいた。もしこの状況を打破できるとしたら村長が雇った護衛たちだろう。その中にはBランクの実力者であるゴンザレスもいる。だが彼らは現在、俺のウイルスに感染中。先ほど治癒魔法をばら撒いた時も、万が一の事を考えて彼らだけはあえて治療しなかったのだ。最も彼らにはこれから始まるゲームには参加してもらうつもりだが
「ようやくルールの説明をできるな。一回しか説明しないからよーく聞いておけよ」
俺は住人たちに向かって、ゲームのルールを説明した。
・今から三時間の間村中にウイルスをばら撒く。生き残るためには一時間に一本のペース、計三本の解毒剤を飲まなければならない
・ウイルスは三時間の間蔓延し続けるため、解毒剤を三本まとめて一気に飲んでも意味がない。解毒剤を飲むのが遅れた場合、ウイルスの解毒に間に合わず死に至る可能性がある
・俺を攻撃しようとした場合、先ほど襲い掛かってきた男たちと同様に、より濃いウイルスを感染させ即刻死亡させる
・村から出る事は禁止。見つけた場合、即刻死亡させる
ようは生き残りたければ、村から出ず、俺を攻撃せず、三時間の間に解毒剤を分けて飲めばクリアというのがゲームの内容だ。
「どうだ? 簡単だろ? お前らのために用意したんだ。楽しんでくれよ」
「あのー」
一人の女性が手を上げて質問をしたい素振りを見せる。ルールの説明は終わったので、俺は質問を許可する。
「解毒剤……ですが、どうやって手に入れるのでしょうか?」
「おっと忘れてたな。今から説明するぜ」
俺は魔法のバッグから大量の解毒剤と小さめのバッグを取り出す。このゲームのために村長と一緒に町に向かった時に購入しておいたものだ。そして取り出した解毒剤のいくつかをカバンに入れ村長に渡す。この際、俺は自身の周りに発生させていたウイルスを抑えておいた。そうしないと村長も先ほどまでの男たちのように一瞬であの送りになってしまうからだ。感染したとしても少量であればすぐ死に至る事はない。
「な……まさか……」
「おっ、分かってもらえましたか?」
村長がどうやら俺の意図を察したようだ。だが村長だけでは物足りない。俺は目についた住人たちに次々と解毒剤入りのバッグを渡していく。そしてそのバッグは今もなおウイルスに苦しんでいるゴンザレスたちにも渡してやった。
「察しがいい方は気づいたかもしれませんが解毒剤の個数は限りがあります。なので今からあなたたちには解毒剤を奪い合ってもらいます。バッグを支給された奴は三時間の間、自分の分だけは絶対に死守。配られらなかった奴は何が何でもバッグを持っている者たちから奪い取る。簡単でしょ?」
解毒剤の入手法を聞いた住人たちの表情が一気に青ざめる。彼らもどうやら俺の意図に気づけたようだ。生き残りたければ他者を犠牲にしてでも生き残れ。そう言われているのだと。
「さてと、それじゃあ始めますか! "辛くて苦しい死に方をしたくなかったら、解毒剤を飲まないとゲーム" をな」
開始の合図と共に俺はスキルを発動し、村中にウイルスをばら撒いた。




