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黒龍の御子  作者: taka
第二章 剣と狼
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第9話 帰路、その恐怖

※以前指摘があったのでタイトルを修正しました。

 予期せぬ事態での動揺からとりあえず立ち直った俺は彼女、フィリアを伴って森から出た。と言えば何の事はないように思えるかもしれないが、これが思いのほか大変だった。

 フィリアはとにかく怯えた様子で辺りを絶えずきょろきょろと見回し、風による物音や小動物の発する物音などにも過剰と言って良いほど反応し、度々足を止めてしまうのだ。加えて未だ俺に対しても(無理もないだろうけれども)怯えているようで、彼女が足を止めるたびになんでもないよと声を掛ける、その言葉にすらびくついている始末。

 正直かなり疲れたが、だからと言って先に行くわけにもいかないので根気よく大丈夫だからと声をかけ続け森を出る頃にはだいぶ俺に対しても警戒心が薄れたようだった。


・・・・・・まだ若干びくついてはいるけれど。


 そんなこんなでこの森に入った当初はまだ朝方だったのも、出る頃にはすっかり太陽も頭上に来ていた。森を出て物音がしなくなったからか、はたまた見通しが良いからかフィリアも若干落ち着いてきたようだ。


個人的にはかえって見通しが良く、隠れる場所がない平原の方が危険ではないのかとも思ったけれど・・・


 森から少し歩いた先、来る際に降りたのと同じ場所に馬車が来ていた。リフリーに報告兼依頼をしてからそれなりに時間も経っていたのでおそらくはと思ってはいたが、どうやら問題なく手配してくれたらしい。そのままいつものように御者さんに一声かけて乗り込もうとした時に問題が起こってしまった。


 「・・・ちょっと持ってください。そちらは?」


 そう言って御者さんの鋭い視線が俺の後ろに隠れるようにしていたフィリアに向けられる。それを受けて「ひぅっ」と小さく声を上げて俺の後ろに完全に隠れてしまうフィリア。つい先ほどまでは声を掛けるたびにビクビクしていたが、今は背に隠れながらしっかりと両手で俺の羽織っているマントの端を掴んでいる。

その事に内心苦笑しながら御者さんに説明する。どうやら御者さんにまでは詳しく話が行っていなかったようだ。

 一通り説明し終わって納得してもらったがどうにも御者さんは終始渋い顔だった。その事に少々疑問はあったが、とりあえずその事は置いておいて馬車へと乗り込む。どうやら荷馬車のようでいくつかの作物が積まれているのみで人は乗っていない。とりあえず空いている所に腰を降ろし壁に背を預ける。フィリアは少しの間オロオロとしていたが程なくして俺の横、とは言っても人二人分くらい間を開けた位置にペタンと座った。


 そうこうしている内に馬車が出てぐらぐらと揺れだす。さてこれからどうしようかと考えようとした矢先、


 「・・・ぁ、の・・」


 一瞬わからなかったがどうやらフィリアが俺に声を掛けてきたようで彼女の方を向く。そう言えば彼女から声を発したのは最初の怪我を手当てしていた時以来ではないだろうか?

 俺が振り向いた事に一瞬びくりとするが、すぐさま立ち直り切れ切れと問いかけてきた。


 「え、と。わたし・・・は、どこ、に?」


 「・・・あ」


 そう言えばまだ行き先すら言っていなかった。色々と衝撃的な出会いに加え、中々大変だった森抜けですっかり説明し損ねていた。


 「ご、ごめんごめん。そう言えばまだ何も説明していなかったね」


 そう言って謝罪してから、とりあえずこちら側の経緯を説明する。俺がギルドの依頼であの森のハウンドウルフの討伐に来ていたこと。森に入ってから目的のハウンドウルフに加え商人とその護衛らしき人物たちの死体を発見し、直後聞こえてきた悲鳴の元に向ったその先でオークに取り囲まれているフィリアを見つけたこと。

 フィリアに遭遇するまでの経緯を一通り説明し終わってから、


 「そんなわけで、依頼自体問題が発生しちゃったからその報告の為にも君に付いて来て貰った訳。行き先は俺が依頼を受けたギルドのある町、セルビアンだ、よ?」


 っと、そう締めくくろうとして、フィリアの様子がおかしいことに気付く。まるで最初に会ったときのように顔を真っ青にし、ガタガタと震えだしてしまう。流石にその様子に焦ってしまう。


 「えっ!?ちょ、どうしたの?」


 慌てて彼女に近づき声を掛けるが様子は変わらず、ふるふると首を振るばかり。


 そうしている彼女は自身の両手で頭の左右を被っていた。













自身の何かを、必死に隠すように・・・・・・

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