第8話 褐色の少女
・・・・・・この子、今何て言った?
『コク、リュ・・さま』
コクリュさま?・・・・・・、黒龍様?。
「(・・・・・・ちょっと待て、どういうことだっ!?)」
どういうことだ?何でこの子が俺の事を、俺の正体を言い当てられたっ?以前会ったことがある?いや、そんな記憶はない。だったら父さん関係?ないとは言い切れないけれど、それで俺の事が解ったというのもおかしな話だ。セルビアン家の面々のように人相云々の話じゃない。この子は俺の事を黒竜だと言い当てたのだから。
だったら一体?
自分自身、かなり動揺して深く考え込んでいたのだろう。それにあわせて表情が険しくなっていたせいか、ますます怯えてしまったらしく・・・
「って、ちょ、ちょっと待って!泣かないでっ」
遂にはボロボロと泣き出してしまった。以前こちらを凝視したまま涙を流しているのでホント対処に困ってしまう。
ホントにどうしよう?と思っていると、ふと彼女のある一点に目がいく。顔の両端、そこから細長く延び出ているそれ。
「(耳、だよな。あれ、てことはこの子って・・・。いや、今はそれよりも。)」
このままでは埒が明かないと思い、思い切って彼女に近づき、その前にしゃがむ。対して彼女はいよいよ耐え切れなくなったのか、目をきつく閉じて体を縮こまらせてしまった。その様子に思わず苦笑が洩れてしまう。そして片手を彼女の頭にポンと置く。
ビクッと体を震わせたのを無視してそのまま頭を撫でてあげる。
撫で撫で撫で撫で。
ひたすら撫でているとやがて恐る恐るといった風にそーっと目を開けたが、目が合った途端またビクッとなって目を閉じてしまう。それでも根気よく頭を優しく撫で続けるとまたゆっくりと目を開けこちらを覗ってくる。今度は目が合っても先ほどのように再び目を閉じてしまう事はなかったので出来るだけ安心させようと笑いかけてみる。
それが功をそうしたのか、未だに表情は強張っているが先ほどのような恐怖一色というわけではなく少しキョトンとしたような表情が加わった。
とりあえずは先ほどよりマシになったかなと思い、撫でるのをやめてポーチから傷薬を取り出す。そうして彼女の手をとって傷に塗っていく。手をとった時はまたビクビクとしていたが怪我の手当てをしているという事に気が付くと若干緊張が解れたようだ。
そうして大体の処置が終わった頃に「あ、あの」と声を掛けられたので「ん?」と声を出して一旦手を止め向き直る。
「え、と。・・・どうして・・・?」
「?、どうしてと言うと、何が?」
何を聞いてきたのか解らず問い返してしまう。そのせいでか、また若干おろおろとしだしてしまったが、やがて意を決したようにこちらを見返して言ってきた。
「どうして、助けて、くれたんです、か?」
まだ途切れ途切れではあったが。
「どうしてって、そりゃ襲われているのを放っておくわけないよ。助けるに決まってるでしょ。」
そう笑って答える。今度こそ彼女は完全にキョトンとした表情を浮かべしばらく固まっていたが、やがて軽く頬を染めて俯いてしまった。その様子を見て変なのと思い、思わず笑ってしまう。そうしてまた手当てを再開しようとした所で、
「・・・・・・ありがとう、ございます。」
小さいながらも確かなお礼を受け取り「どういたしまして。」と答えてながら手当てを進めていった。
「よし、とりあえずはこれで大丈夫」
手当ては一通り終わったが、あくまで傷薬に包帯を巻いただけという応急処置だ。今はこれで大丈夫だが落ち着ける場所できちんと処置をするか、或いはきちんとお医者さんに見てもらいたいところだ。そう言えばまだ俺はまだお医者さんのお世話になった事はないな~なんてどうでも良いことを思う。
なんにしてもここではこれ以上の処置は無理だ。それに彼女には色々と聞きたいこともあるし。さてどうしたものかな?と考えていると彼女から「あの・・・」と声をかけられた。
「え、と。私はこれからどう、なるんですか?」
そう恐々と聞かれてと困ってしまうんだけれども?
「いやいや、俺は君の事をどうこうしようだなんて考えてないよ。いくつか聞きたいことがあるだけっ、ん。」
途中で言葉を切ったのを不思議に思ったらしいが、それよりもと上を仰ぎ見る。
どうやら先ほど振り切ってしまったリフリーたちが俺たちを発見したようでこちらの上空を飛んでいる。
・・・・・・よくよく考えるとさっき彼女が言った事をリフリーに聞かれていたらかなり不味かった。今更ながらに冷や汗が出てきた。とりあえず今回は色々と問題があったので、
「すまないがこの依頼で問題が発生した!ギルドにこのことと、あと帰りの馬車の手配を頼むよう伝えてくれ!」
とリフリーに伝えるとピィ~と鳴いてそれぞれ飛んでいく。う~ん、ホントにリフリーって便利だな。さっきみたいに不味い事もあるけれど。
「とりあえず色々と聞きたいこともあるし、何より怪我もちゃんと治療しないとダメだから、悪いんだけれど一緒に来てくれないかな?」
そう伝えると彼女は少し逡巡したようだが、最終的にはコクリと頷いてくれた。
「そう言えばまだ自己紹介してなかったね。俺はリオス。よろしくね。」
「・・・えと、フィリア、です。よろしく、願いします。」
そう言って彼女、フィリアはペコリとお辞儀をした。




