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「おはようございます」
愛の職場は製造業の事務である。
向日葵が保育園に入ってからいろいろな仕事をしている。
今の仕事はちょうど2年になった。
茜は愛より3カ月ほど後に入ってきた。
二人とも旦那の扶養に入っているのでパートではあるが。
「おはよう」
愛想のない返事が帰ってきた。
職場の課長である小山だ。
もうすぐ定年間近のクソ親父。
ろくに仕事もできないくせに、口だけは偉そうであるためみんなに嫌われている。
本人はまったく気づいていないのだろうが。
愛が自分のデスクに座り、仕事の用意をしているとバタバタと茜が事務所に入ってきた。
「山本さん、もう少し早くこれないのかなぁ」
小山が茜に向かってブツブツ言っている。
「おはよ〜愛」
茜は愛の隣である。
「おはよぅ茜。小山がブツブツ言っているよ」
愛は小山と茜を交互に見ながら笑っている。
「え〜なんか言ってた?全然聞いてないよ。まっ、聞く気もないけどね」
茜はあっけらかんとしているだけだ。
「そんなことはどうでもいいけど…昨日はほんとめんどくさかったよね。」
茜はもう小山のことなんて気にしていない。
まったくいい性格である。
「そうだね。寒かったしね。」
「ね〜愛さ〜。今週の土曜空いてる!?」
「別に家でいるだけだけど、どうしたの?」
「前の会社の飲み会に誘われたんだけど、一人で行くの嫌だから一緒に行ってくれないかなって思って」
「え〜、私知らない人ばっかりじゃん。」
「みんな同年代の人ばっかりだよ。ついでに彩夏も誘ってるから。」
彩夏は同僚で二人とは仲がいい。
「彩夏は彼氏探してるとこだから喜んでたよ。愛もいい機会じゃん。いい彼氏いるかもよ。」
茜は一人ではしゃいでいる。
「どんな人が来るの?」
「独り身もいるし、結婚してる人もいるよ」
「そうなんだ。まぁ〜気晴らしに行こうかな」
愛はあまり行く気にはなれなかったが、最近嫌なことだらけだったこともあり行くことにした。
「良かった。じゃ〜楽しみにしててね」
「そこ二人、もう仕事始まってるんだぞ。しゃべってないで仕事仕事。」
小山が叫んでいる。
「あ〜馬鹿が怒ってるわ。仕事しよ」
茜は小山のほうをちらっと見て、すぐに愛に向かって舌をだして笑った。
「あ〜仕事めんどくさいね」
愛と茜はデスクに向かって仕事を開始した。
その日の昼休み
愛と茜は、食堂で彩夏と一緒にお昼を食べていた。
ここの食堂は、なかなか美味しくて安いため、会社でも人気である。
3人でランチを食べていると、目の前に男性が2人立っていた。
「ここ、いいかな〜」
茜の彼氏の隆雄だった。
「あら、松下さん。どうぞ」
茜が微妙な笑みを浮かべながら隆雄を見ている。
「どうも、山本さん」
隆雄もそんな茜を見ながら、微妙な笑いを浮かべている。
会社内では、いろんな人の目があるので普通に接しているのである。
もちろん愛は知っているが、一緒にいる彩夏はまだ2人の関係を知らない。そして隆雄と一緒にいる男性、隆雄の部下の平下 徹も2人の関係は知らないのである。
愛と茜は、今の事務をする前に隆雄が所属する製造ラインで働いていた。
そのときに2人は意気投合したらしい。
愛も隆雄とは仲がいい。
「松下さん、そっちは忙しい?」
愛は2人のぎこちない行動を察したのか、隆雄に喋りかけた。
「…お、おぅ…最近は結構忙しくてな〜。」
隆雄は動揺をかくしながら答えたが、ぎこちない喋り方になってしまった。
「どうしたんですか?松下さん。美人3人目の前にして動揺してるんですか?」
そんなぎこちない隆雄を見て、隣でいた徹がすかさず聞いてきた。
「私があまりにもかわいいからだよね」
愛がそんな隆雄と徹に向かって、笑いながらちょっとぶりっ子してみた。
「あ〜気持ち悪いからやめて」
その返答は早かった。隆雄である。
愛と隆雄はいつもこんな感じである。
みんなそんな2人を見ながら笑っている。
「そんなことないですよ。愛さんかわいいですよ」
徹は独身者なのだが、結婚している愛に対して想いをよせているのである。そんな徹の気持ちは、誰にでもわかるぐらいにじみ出ている。
「ありがと、徹君。そんなこと言ってくれるの徹君だけだよ」
愛もそんな徹の気持ちは薄々感じていた。
直接は徹に言われたことはないが、みんなわかっているため話のネタにされる。
「お前はほんと愛のことになったら突っかかってくるよな」
「そんなことないですよ。だって愛さんほんとに綺麗なんですから〜」
徹は少し顔を赤らめながら手を必死に振っている。
「徹さん私はどうですか?」
彩夏だ。
「彩夏ちゃんもかわいいよね。若いっていいよね」
愛と茜は現在32歳。彩夏は28歳である。
徹は34歳。隆雄は徹よりも上で36歳である。
「徹さんは年下好きですか〜?6歳離れてても問題ないですか〜。」
彩夏はどことなく徹を誘っているように見える。
「やっぱり俺は年上より年下だね〜。でもあんまり年離れてもな〜」
「え〜6歳下はだめですか〜」
彩夏は可愛く振る舞っている。
「そんなことはないよ」
徹はちょっと困った顔をしている。
そんな2人の会話を聞いているのは愛だけ。
2人が話で盛り上がっている横で、ちゃっかり横に座っている隆雄と茜は、小さな声で何か話していた。
彩夏と徹はまったく気づいていなかったが、愛はそんなニコニコしながらいちゃついている二人を見逃していなかった。
そんなことをしている間に、仕事10分前のベルがなった。
「あ〜もう休憩終わりじゃ〜ん」
彩夏が時計を見ながら残念そうにしている。
「さぁ〜今日も後半日頑張ろうか〜」
隆雄が立ち上がってガッツポーズを決めた。
「なんでガッツポーズなの〜」
愛と茜が、隆雄の意味不明な行動に笑っていた。
「ま〜いいじゃん、いいじゃん」
隆雄は自分でも何をやっているのかわからなくなったのか、戸惑っている。
「さっ、戻ろっ」
愛と茜は立ち上がり、隆雄に手を降りながら食堂を後にした。
隆雄と徹、彩夏も食堂にもう人があまりいないことに気付き小走りで食堂を出ていった。




