3-4
「拓斗どっちがいいと思う?」
愛は二つのワンピースを交互に見ている。
今日は二人でショッピングモールへ買い物に来ていた。平日であるためかなり空いている。
「こっちのほうが可愛い感じじゃない」
どちらも白いワンピースであったが、実際あまり変わらない。
「やっぱりこっちか〜。愛もこっちがいいと思ってたの」
愛は自分の気に入ってたほうを選んでくれたので、上機嫌だった。
拓斗が選んだ理由は、少しスカートの丈が短かったこと。それと、愛が二つのうち選んだ方を見ている時間が長かったことである。
「じゃ〜これにしよ〜っと」
愛は早速レジに並んだ。
拓斗は隣で一緒にいて、自分では考えられないことに気が付いた。
それは今、愛が買っている服の値段である。
『3900円』
その金額は拓斗にとって驚きであった。
拓斗が普段買っている服は、平均1500円、高くても3000円。それも悩みに悩んで買うのである。
愛が今、お金を払っている服は3900円。それも愛は、選んでいる時から一度も値札を見ていなかった。
「ねぇ〜愛さ〜、服買うときって値段見ないの?」
「チラッとは見てるよ。あんまり気にしないね。気に入ったものは買っておかないと後から後悔するの嫌だからね」
「そうなんだ。俺なんて全然手がでない金額だったから」
「え〜こんなの安いほうだよ。拓斗はどうも服には無頓着って感じだよね」
愛は拓斗の頭から足まで眺めている。
「うちは嫁が金の管理したら全部使っちゃう勢いだからさ、俺が管理してるんだけど、それでも欲しいもの買う金が残らないんだよ」
「そんなに何に使ってるの?愛はちゃんと毎月お金貯めてるよ。いつ入り用になるかわからないからね」
「あんがいしっかりしてるんだね。うちは食費がやばいな。惣菜に外食にで結構かかってるもんな」
拓斗はまた愛のことを見直した。
「食費なんて一番節約できるところだよ。愛んちは、引き落とし関係は旦那の口座から落ちてるけど、食費とか普段使うもの全部は愛の給料からなんだよ。それで残ったお金は好きにしていいって決まりごとなの」
「へぇ〜夫婦別々なんだね。うちはだめだわ。一生貯まらないわ」
「まぁ〜食費節約したらどうにかなるんじゃないの?嫁も働いてるんでしょ?」
愛は喋りながらも次々と店に入って服を見ている。ほんとに服が好きなようだ。今日着ている服も拓斗好みでいい感じてある。
「うん、パートだけど1日働いてるよ」
「だったら普通に生活していけるでしょ」
「まぁ〜無理だろうね。諦めるよ」
愛は急に拓斗の腕を引っ張りだし、早足になった。
「拓斗プリクラ撮ろうよ」
愛が向かった場所はゲームセンターの中にあるプリクラゾーンだった。
「いいけど、プリクラ撮っても持って帰れないよ」
「わかってる。愛が持って帰るから。絶対ばれないところにしまっておくよ」
「ほんとに大丈夫なの?ばれたら大変だよ」
拓斗の顔が心配そうに見えるのは当たり前のことだ。
「大丈夫大丈夫。絶対ばれないところに隠しておくから」
愛のこの自信はどこから来るのだろうか。
拓斗は渋々だったがOKした。
「もう拓斗もっとこっちに寄らないと写らないよ」
拓斗はプリクラなんてほんとに久しぶりだった。
年寄りではないが、最近のプリクラにびっくりするぐらいだ。
「こんな感じかな?…あっ、今のよかったんじゃない」
最初はあまり乗り気ではなかった拓斗ではあったが、だんだんと楽しくなってきた。
「次はどんなポーズで撮る?あっ、次で最後だよ」
愛も子供みたいにはしゃいでいる拓斗を見て喜んでいる。
「愛こっち向いて。はい、チーズ」
拓斗はシャッターと同時に、愛の唇にキスをした。
「今のよかったでしょ」
「んも〜、急だったからびっくりしたよ」
二人は外にでて、落書きコーナーへ入った。
「へぇ〜、今はこうなってるんだ」
拓斗はまた関心している。
「はい、ペン持って。適当に落書きしてね」
愛は流石に慣れているせいか、どんどん進めている。
拓斗は最初全くわからずに愛のほうを見ていたが、分かってきたのかゆっくりではあるがやってみた。
拓斗が一つの写真をデコっているうちに、愛は残りの写真を終わらせていた。
「早いね〜」
拓斗は愛のあまりの速さに関心している。
「子供とか友達なんかとたまに撮ってるからね」
「俺はだめだわ。家族で買い物行っても子供のもの見るぐらいだわ」
「あ、でてきたよ」
愛はでてきたプリクラを見ながらにやけ顔になっている。
「プリクラってほんと怖いよね。誰かわかんないじゃん」
拓斗はイケメンすぎるプリクラの自分に驚いた。
「じゃ〜しまっておくね」
愛は財布の中にそっと閉まった。
「さぁ〜次いこ。拓斗の服も見てあげるよ」
二人は再び歩きだした。
このプリクラが原因で、これから最悪な事態になることを二人はまだ知らない。




