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3話「挑発的なお方が登場しまして」

「お、お前……まさか、クロミヤスの王か……!?」


 男性の出現によって急に表情を固くするルミッセル。

 どうやら警戒するべき相手のようだ。


「ええ、そうですよ。懐かしいですね? お馬鹿な王子様」

「いきなり嫌み言いやがって……」

「ああ、そうでした。事実ほど言ってはならないのでしたな。ふふ、失礼」


 紳士のような装いの男性は私が想像していたより嫌みを言うことに特化しているようであった。

 だが、ルミッセルたちも私を馬鹿にしてきたのだから、知ったこっちゃない。

 やってきたことが返っているだけ、私にはそう見える。

 私を散々馬鹿にしてきたルミッセルらに馬鹿にされて怒る権利などありはしないのだ。


「では、ローゼマリン様はいただきますので」

「ふん! 好きにしろ!」

「ありがたきお言葉。ではこれにて」


 そう言って、男性はくるりと振り返ってくる。


 そして片手の手のひらを差し出してきた。


「ローゼマリン様、ここから抜けましょうか」

「……は、はい」


 取り敢えずその手を取っておいたのは、あのままあそこにいるのが非常に気まずかったから。


 知らない異性に誘われたからとついていくなんておかしいしみっともない――そう思ってはいても、それでも、この死にそうなくらい息苦しい場所から抜け出せるならそれで良かった。


 だから、まだ何も知らない彼の手を取ったのだ。


 ――少し歩けば、会場の外へ出られた。


「あの、すみませんでした……」


 夜風が銀の髪を自然なラインでなびかせる。

 肌に触れる少し冷えた風は愛おしくて。

 日頃なら寂しく感じる静寂も今は苦痛ではなかった。


「ローゼマリン様、なぜ貴女が謝られるのです」


 私をここまで連れ出した男性は柔らかな笑みを湛えつつ言葉を発する。


 あれ? 意外と良い人?


 そんな風に思ってしまうのは単純すぎるだろうか。


「私、ちょっと、気まずい状況で……あの、話に入ってきてくださって助かりました」

「それは貴女のせいではありませんな」

「だと、しても……です。あのままだとかなり気まずい状況でした。ありがとうございました」

「いいえ、お気になさらず」


 それから彼は自分がクロミヤスという国の王バーレット・クロミヤスであると名乗った。


「国、王……?」

「ええそうです。ああ、けれど、そんなに気になさらないでください。私はただ王であるだけで、それほど偉大な人間ではありませんので」

「そ……そう、ですか……」


 しかし気まずい。まさか相手が一国の主だったなんて、そんなことちっとも思わずにここまで接してきてしまっていた。無礼があったかもしれない。


「貴女はクロミヤスのことはご存知ですかな?」

「いえ知りません……」

「我が国は、人と魔物が共に暮らす国。それゆえ、特殊な境遇の者であっても比較的平和に暮らせる国なのですよ」


 バーレットはすらすらと言葉を紡いでいく。


「しかし、だからこそ、導いてゆく者には重い責任があるのです。多くの者を不幸にしないために、力強く、民を導かねばならないのですよ」

「は、はぁ……」

「もしかしてあまり興味がないですかな?」

「いえ、そんなことは……」

「まぁいきなり色々喋り過ぎましたな、申し訳ありません」

「そんな! ……ごめんなさい、私まだ少し頭がぐちゃぐちゃで」


 婚約破棄された。

 知らない国の国王と関わりを持った。


 ……ああもう、色々いきなり過ぎて理解できないっ!

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