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仲間

 レナが仲間になることが決定したものの、朝から晩まで父への仕事の引き継ぎをしていた為に親睦会のようなものは行えず、俺達は適当に時間を潰した。

 ギルドに行って国内外の情報を集めつつ、次にターゲットとするダンジョンの話をしたり、計画を立てたり。

 だがまとまらずに結局ぶらついてカフェで時間を潰し、家に帰って二人と稽古という流れになった。

 体を動かしていないと(なま)る、とエルゥが言うので(何故か2対1)で実戦的な稽古をして……夜がやってきた。


「えっと、改めてこの度パーティーに加入したレナ・ギルフィです。得意技は雷魔法と剣、あと編み物とか…………ともかく、よろしくね」


 食堂にて家族や俺達の前でレナが照れ臭そうに自己紹介をした。

 “パーティー加入のパーティーをやろう”というエルゥのクソくだらない洒落によってこういった集まりが設けられている。

 食事するだけだし、これから冒険者として、パーティーの一員として活動するのでどの道共に寝泊まりするのだけども。


「“いつか天をも跪かせる女”で通っているエルゥ・グランダーソンです」


 後のハードルを上げるような自己紹介を返すエルゥに、一同は苦笑い。

 ただ彼女ならやりかねないと思わせるのが凄いところだろう。


「以前も紹介した気がしますけど、シトラ・アルコットですわ。よろしくお願いいたします」


 奇をてらわず、普通に名乗り上げるシトラ。


「………………………………」


 しかし何が気に食わなかったか、レナはシトラの顔をじっと見つめ返したまま黙っている。

 あまりにも微動だにしないので石化したのかと思うほど。


「や、やはりラースさんのハニーなどと吹いたことが尾を引いているのでしょうか」


 本人的にも気になっているところだったのか、小さな声で俺に話しかけてくる。

 ハニーダーリン問題に関してはおそらく、まだ疑念の段階だ。

 そう思う理由は単純で、本当に信じ込んでいるなら告げられたあの場で斬りかかったような気がする、という幼馴染としての推察がある。


 それに、レナがシトラを見る目に怒りや妬みなどの感情は伺えない。

 どこか不思議に思うような、きょとんとした目だ。


「んー。シトラ、どこかでボクと出会ったことは無いかい?」


 首を傾げるレナ。暗い感情でなかったことはホッとしたが、まさかの太古のナンパのような発言だ。

 シトラの表情を見ると、少し曇っている。何か思い当たる節でもあるのか。


「こら! シトラが困ってるでしょうがっ!」


 一喝したのはエルゥだった。強気にも立ち上がって言うが、内心ビクビクなのか表情から自信が消えてゆく。


「す、すまない。他意があって聞いたわけじゃないんだ」


 レナも悪気無く尋ねたのだろう、たじたじで謝る。

 それを受けてシトラは少しの沈黙の後、いつもの優しい微笑みを見せた。


「いえ、構いませんわ。でも……そうですわね。

 直接話したことはありませんが、レナさんが私のことを見かけたことはあるかもしれません。

 可能性があるとすれば、二年ほど前にあった首脳会談ですか?」


「うん、ボクはテルスタン王の警護で行って……その時に」


 やはり、とシトラは心当たりがある様子。

 各国の最高責任者が集まる首脳会談。それは数年おきに行われ、世界最大と言われる〈プレテット〉王国の都市で開催される。


「どの道いずれ話しておかなければならなかった事ですし、この場を借りて申し上げておきますわ。

 私はその時、“父上”の付き添いで首脳会談に行きましたの。

 つまり、エルフの国の王の……娘として」


 唐突に行われた、最大級のカミングアウト。

 に、一同驚きを隠せない…………ことはあまり無かった。


「お、驚きませんの?」


 逆に一番驚いているのはシトラだった。反応薄さにショックを受けているまである。

 とどのつまり、パーティーメンバーはエルフの国の王女だった。という衝撃の事実の筈なのだが言われてすんなり受け入れることが出来た自分が居た。

 元々ある程度高貴な身分の者なのだろうとは思っていたし、なんなら王女というのはしっくり来るというか。


「まあ、王女って言っても“いずれ天をも跪かせる”よりランク、低くない?」


「が、がーん」


 よほどショックだったのか、エルゥの一言に口でがっくり来ているのを表現するシトラ。

 エルゥは自称田舎生まれの娘っ子だが、何故か王女を自分の下に置いている。凄まじい図々しさである。


「でも、王女が何で冒険者を?」


 触れてあげないと可哀想だと思った俺は尋ねてみる。


「……元々は冒険者を志願していたわけじゃないんです。なのに、エルゥが強引に」


「ちょっと待って強引は濡れ衣だ」


 自分に視線が集まったのを感じてか、待て待てと両手でジェスチャーするエルゥ。


「それなら何でギルドに来てキョロキョロしてたの。私はてっきりパーティーを捜している新人冒険者だとばかり」


 弁解するエルゥ。言い分だけを見ればたしかに、そう見える。

 ましてやエルフだ。人里に慣れていないから挙動不審だったと考えれば辻褄も合う。

 が、シトラは首を横に振って。


「捜していたのはパーティーとかではなく、人なのです」


 前に聞いた話によればエルゥが俺に目を付け、シトラも良い人材だと感じたので確保した。

 それからエルゥが俺の引き抜きを狙っていることをシトラに言い、彼女も俺を気に入ったという成り行きだ。


「それは特定の個人とかではなく、出来れば身分も高くなく、強くて気品があって、知性もあって優しい人材を捜していたのですわ」


 エルゥの視線が俺を向く。

 が、すぐに首を傾けた。


「……………………いや、気品は無いか」


「喧しい」


 一瞬当てはまる人材だと思ったのだろうか、スポットは俺に当たったが“違う”と首を振るエルゥの様は凄まじく煽り性能が高かった。

 マッチする点など身分が高くないところとある程度の強さがあるところだ。

 知性は……魔法やギフトについてのものはあるが、一般教養などを問われると相当怪しい。


「いえ、私見ですがラースさんにそれを感じていますよ。

 だからこそパーティーに入ったのです。これほど真剣に冒険者活動をするつもりもありませんでした」


「だってさ、よかったね。私は優しくないと思ってるし、気品も感じてないし、賢い方では無いんだろうとは思ってるけど」


 隣に居るエルゥは俺の肩に手を乗せ、親指を立てる。

 彼女には献身的にマッサージをしたり抱き枕になった過去を思い出してほしい。そこには大いなる優しさがあったはずだ。


「それで、その人材を見つけてどうするつもりだったんだ?」


 エルゥに構っていると話が進まないので、無視して聞いてみる。

 シトラはうんと頷いて、


「私の夫としてエルフの国に連れて帰り、お父様が決めた私の婚約者と決闘させるつもりでしたわ。

 わたくし、せめて自分が決めた相手と結婚したいですもの」


 つまるところ、シトラは王女としての立場があるため親が決めた相手と結婚しなければならない。


「そういった“ブチギレ“による一世一代の、結婚相手捜しの家出。それが私が国を出た理由ですわ」


 しかしそれに反発して国を出て相手を探し、ついに俺を見つけた。

 そして夫にし、連れて帰るつもりだったと。


「…………………………え?」


 王女だ、というカミングアウトより更に数十段上の驚きに俺は開いた口が塞がらず。

 ただただ呆然とするだけだった。

二章完です!

構想はたくさんあるのでぼちぼち書いていきます(欲を言えばもう少しだけ伸びてほしいという)

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