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1話 異世界転移

 教室に神がやってきた。二学期の朝の事だ。

 凄い可愛い転校生がやってきたというわけではなく、そのままの意味で。


「今日から貴方たちには二年間を目標に魔王を倒してもらいます」


 何を言ってるんだこの教師。誰もがそう思ったことだろう。現に、口から「は?」と困惑が漏れていた。

「冗談ですか?」と誰かが笑った。だけど続く言葉と状況がそれを長くは許さなかった。


「クラスは三十人。魔王を倒せる可能性を現時点で持っているのは……十四人ですか。その十四人は机の上にアバターを映します。貴方たちならそれが何のキャラクターか分かるはずです」


 彼女の言葉と共に机の上に現れた、あまりにもリアルな人形。俺はそれに見覚えがあった。

 VRゲーム、『Lost Kingdom』の自機。それも、昨日まで自分が使っていたのとまったく同じ装備をしたそれに見覚えがないわけがない。


「これが今日からの貴方自身です。……異世界で戦う貴方たちの力です」

「待ってくれっ!!」

「どうかしましたか……?それは貴方が心血を注いで作り上げた最強の騎士でしょう?」


 思わず立ち上がってしまった俺に、彼女はにっこりと笑顔を向けた。

 そうだ、たしかにそうだ。このキャラには思い入れがある。ストーリーを何周もした。対人戦の経験だってある。だけど、どうしても悪い予感しかしなかった。


 ……『Lost Kingdom』の主人公は亡国の騎士だ。国を失った主人公はその仇を探して旅を進めていく。そこで明らかになっていく、魔女という存在に対する強い忌避感。

 強さに問題があるわけではないが、言ってしまえば復讐にとらわれてしまっている。


「間違いなく強キャラ。異世界だとチートだと言われてもおかしくないレベルの能力に不満が?上手くやればハーレムも作れるでしょう。それを望むかは別として。……ええ、まぁ、大丈夫。それは貴方を救うものです。自分のキャラが分かった残りの十三人もそう、自分の力を信じなさい。必要なだけの力は与えます。残りの十六人はなりたい自分を想像しなさい。戦場でも戦っていける強い自分を。剣を、魔術でもって敵を屠るその姿を」


 そう言われれば不満はない。この場で最も信用できる神が大丈夫と言うのなら、俺は頷くことしかできない。

 力をくれるという神に、それ以上何も言えなかった。


 俺のキャラは強い。積み重ねてきた時間が、ゲームの設定が自分の強みになることが分かっていれば、俺はこのキャラの全てを知っていることになる。

 復讐心こそあれ、神からの保証は自信に変わりつつあった。


 それに、合わせて目の前に現れたステータスウインドウ。これならいける。魔王だろうが魔女だろうが殺せると、そう思ってしまった。俺が最強だ、と。


 ──── ────

 ・職業『騎士』

 貴方のふるまいを決めるのは貴方自身。

 貴方の行いだ。

 騎士でしょう?剣にでも誓ってみればいい。


 ・スキル『剣技B+』『魔術C』『奇跡E-』『不屈A++』『不死性C』

 これは貴方の夢を成すもの。足りないものを与えましょう。

 応えた者には力が与えられる。夢を忘れてはならない。

 ──── ────


 職業とスキルからは感動が。短い文からは期待が。

 確かに。これさえあれば俺は目の前の(キャラ)になれる。


 神は俺たちの質問に出来る限り答え、十六人が自身の理想像を考え終わるまで待った。

 唐突な逃れようもない出来事だったが、そこに理不尽を感じることはなかった。

 神の丁寧な対応もあったが、自分で作ったキャラクターになれるというのも大きかったのかもしれない。

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