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【真正ユレイシア帝国】議会(1)

 ――ライヒハート宅にて


「……」


 リュドミアが顎に手をやり、いそいそと部屋の中を歩き回っている。

 どうやら、何か重大な考え事をしているようだ。


「リュドミア様」


 そんな様子を、部屋の隅で見ているのはリュドミアの側仕えテレシアだ。

 あの戦いの後、当然のようにテレシアは実家に帰ることなく、リュドミアと行動を共にしていた。


「……」

「リュドミア様!」

「わっ!……ああ、なんだテレシアか。いるなら言ってよね。びっくりするじゃない」

「何回も言いましたし、なんなら結構前からここにいましたよ」


 よほど深く考え事をしていたのか、リュドミアがようやくテレシアの存在に気がついた。


「ごめんなさい。ちょっと考え事をしていてね」

「ルシエス様のことですか?」

「……ええ。よく分かったわね」

「確か今日ですからね。ルシエス様の軍法会議は」


 ヴィンターヒルド平原での敗北の報は、驚きと衝撃で以って中央議会に伝えられた。

 呆然とする者、怒りに震える者、誤報と疑う者など、その反応は三者三様であったが、特に勝ちを確信していた、主戦派の衝撃は大きかった。


 その急先鋒であった四大貴族の二家、サイドリッツとゾンダーフェルムは帰還して即日に、ルシエスを議会に招集し喚問した程だ。


 そして今日、ルシエスが軍法会議にてその敗戦の責任を問われる。


「きっとルシエス様はとんでもない罰を与えられる。回避は出来ないかといろいろ考えてみたのだけれど、駄目ね。私、貴族社会には詳しくないから」

「ええ。『大変』良く存じ上げております。リュドミア様はそちらの方面について、露骨に関わろうとしませんでしたので」

「……それについては反省しているわ。正す気はないけれど」


 リュドミアがバツの悪そうな顔をする。


「然様でございますか。まぁそれが必要になったのならば私がおりますので、そこはいいでしょう。貴族間の情報収集と情勢の把握は、フローレンス家の十八番ですので」

「……そういえば、貴方の家はそちらの方が本職だったわね」

「はい。ですので、そんな私から一言申し上げるのならば、おそらくリュドミア様の心配は杞憂で終わるかと」

「うん?」


 リュドミアの心配を、テレシアはあっさりと切り捨てた。


「どうして?あれ程の大敗北よ。相応の責任は取らされると思うのだけれど。中央議会の連中って、戦に勝ち負けは当然、で済ませてくれるような人達ばかりなの?」

「勿論、いいえです。少なくとも主戦派の急先鋒である、サイドリッツとゾンダーフェルムは、主戦論を唱えた自分たちの責任を覆い隠す為に、ルシエス様の罪を執拗に問いただすことでしょう。最悪、ルシエス様は自刃を命じられるかと」

「でしょうね。だから困って――」

「しかし、これはあくまでサイドリッツとゾンダーフェルムに口を出す勢力がいない場合の話です」

「……はい?」


 リュドミアが首を傾げた。


「いやいや、テレシア。サイドリッツとゾンダーフェルムは四大貴族よ。クラウディア家を庇う為とはいえ、その二家をまとめて敵に回すような勢力がいるわけ……」

「いいえ、います。たった一家ですが、それをする家が」

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