【ユレイシア貴族連合王国】再編(9)
「驚きました。まさかあの暴れ馬を、本当に従えてしまうなんて……」
「このグリシャ。改めて感服いたしました。やはり貴方は我々に相応しいお方です」
二人が改まって、ヘイキチに跪く。
「おいおい。そんなに褒めるなって。背中がむず痒くなるだろ」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「なんとお礼を言ったら良いのか……」
村人たちもまた、跪いてヘイキチに感謝の言葉を述べる。
「なに、お前たちのおかげで良い馬に出会えた。感謝している。また、何かあったらクァンリー城に使いを出すと良い」
ヘイキチがホムラを撫でながら笑顔で答えた。
「さて、悪いがもう帰らせてもらうぞ。あまり帰りが遅いと父上が心配するからな」
「はい。本当にありがとうございます。お気をつけて!」
こうして、ヘイキチ達はホムラを連れて村を後にした。
「――さて、すっかり遅くなってしまったな。早く戻らなければ」
「ですな。門限を過ぎてしまうと少々厄介です」
ヘイキチとアクシェイが落ち始めた日を見て、歩を速める。
「まぁ最悪、一日ぐらい、外で野宿をしても……お?」
ヘイキチが前方に、こちらに向かってくる集団に気がついた。
「あれは……クァンリー城の兵たちでありますな」
「おーい、みんな無事ですかー!」
「この声は!」
兵たちの中から、一人の男が姿を見せた。
「父上!」
クァンリー城城主、アスカイ・サトルだった。
「あ、アスカイ様。どうしてここに!?」
「なに、皆の帰りが遅いからね。説得に苦労しているのかと思って、僕も現地に行こうと」
「レイとガルグさんには馬鹿を言うんじゃないと、全力で止められたけどね」とサトルが苦笑する。
「そもそも、有用な人間の勧誘しようというんだ。礼儀的にも僕がまず行くべきだった。でも、どうやら無駄足だったようだね」
サトルが自分に対して跪いている、二人の男を見て確信する。
「お初にお目にかかります、アスカイ様。私はクァンリー城元衛兵隊長アイリシュ・ヴィッターマンです」
「同じく、元騎兵隊長グリシャ・ヴェルマンです」
「僕はアスカイ・サトル。今は訳合ってクァンリー城の城主をしています。ここまで来てくれたということは、僕たちに力を貸してくれるということでいいんだよね?」
「はい。我ら両名、これよりアスカイ様の剣となり盾となって戦う事を、ここに誓います」
「ありがとう。ブラーミンさんは、君たちをとても高く評価していた。力になってくれるなら百人力だ。僕は君たちを、以前と同じ地位で受け入れようと思っている」
「ありがたき幸せ。しかし、アスカイ様。図々しい事は承知で、我らが地位より優先して頂きたいことが、一つございます」
「後ろにいる、君たちの部下の事かい?勿論、彼らも大歓迎だよ。そのまま変わらず、君たちの下で使うと良い」
「……っ!!」
「あ、ありがとうございます!」
あっさりと受け入れてくれたサトルに、後ろの部下たちも一斉に跪いた。
「あはは……。そうみんなで頭を下げられるとちょっと恥ずかしいよ。みんな顔を上げて欲しい。それより早く城に帰ろう。君たちの歓迎会をしないといけないからね」
こうして、クァンリー城に双翼が還った。
双翼帰還の報はたちまち広がり、クァンリー城に更なる人を呼び込む結果を生んだ。
そしてそれは、無視できない事案として中央政府に伝わることになる――。
――連合王国中央政府院にて
「お呼びでありますか、シュリア枢機卿」
「ああ。よく来てくれた。ユクタ」
中央軍第三大隊、大隊長ユクタ・ドゥルーヴはその日、中央政府院枢機卿シュリア・リンズー・ヴァルマより呼び出しを受けた。
「時間がないので単刀直入に言う。君に反乱の鎮圧を頼みたい」
「!」
「場所はクァンリー城。報告によれば、城主が殺され、城を乗っ取られたらしい。しかも、その後は粛々と軍拡に勤しんでいるようだ。君にはこれを撃滅し、事態を収めて来て欲しい」
「クァンリー城といいますと、領主は確か……」
「ああ。ツァオ領の城だ」
ヴァルマが悩ましそうに頭を抱える。
「この帝国との関係が重大な時期に、しかも唯でさえきな臭くなっているツァオ領で、この上さらに別勢力の台頭など笑い話にもならない。連中への見せしめも兼ねて、派手に叩き潰して来て欲しい」
「よろしいのですか?」
「ああ。降伏など許さない。徹底的にやってくれ」
「承知しました。このユクタ・ドゥルーヴ、ご期待には全力で」
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