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【ユレイシア貴族連合王国】城主(15)

「アスカイ様……今までありがとうございます」

「どうか、お元気で」


 その日の朝、アスカイ村の入り口に村民全てが集結していた。中には目頭を押さえている者や、既に泣き出している者もいる。


「皆、そんな顔をしないでおくれ。何もこれが今生の別れという訳ではないのだから」


 ハオランの来訪より一週間後、おおよそ出来る全部の引き継ぎを終えたサトルが、手勢を引き連れ村を発とうとしていた。


「さて、シュウ。後のことは君に任せたよ」


 サトルが最前列にいるユーハンの肩に手を置く。


「アスカイ先生……」


「この前教えた同じ種類の野菜は、同じ場所で連続で育てないようにね。ああ、村民の糞尿は正しく処理をするように。間違ってもその辺にばらまいたり、放置などしないようにね。疫病の素になってしまうし、水源を汚染するから。なにより貴重な堆肥の原料だ。決して無駄にはしないように。えっと、ああ……そうだ、出産直後の妊婦や赤ん坊、出産の立会いには決して、汚れたままでいかないように。強めのお酒で身体をよく拭いて、綺麗な服を着て、綺麗な部屋で……ええっと、それから……」


「ふふ、アスカイ先生も心配症ですね」


 ここにきて色々と心配事が出てきてしまったのか、早口でまくしたて始めたサトルにユーハンが苦笑する。


「もうこの一週間で何回も聞きました。後のことは任せてください。大丈夫ですよ、アスカイ先生。なんたって僕は、貴方の指導した生徒なんですから」

「……そうだったね」


 そのユーハンの自信に満ちた瞳と力強い言葉に、サトルは確かなものを感じ深く頷いた。


「皆知っての通り、シュウは才気あふれる聡明な子だ。能力だって申し分ない。でも、まだまだ若い。出来ないことだってきっとあるだろう。だからどうか、その時は皆でユーハンを支えて欲しい。そうすればきっと、この村には今以上の繁栄が約束される筈だ」


 サトルのその言葉に、村民一同が「任せてください」と胸を張る。


「親父殿ー!!こっちの準備は出来たぞ!いつでも行ける!」


 そんな話をしている内に、遠くからヘイキチの声が聞こえてきた。どうやら、兵たちの準備が出来たらしい。


「皆、僕は必ずこの村を彼らに認めさせる。いつの日か、君たちが堂々と顔を上げて『自分はアスカイ村の人間だ』と胸を張って言えるように」

「先生……」

「ううっ……やっぱりいかないで欲しいです……」


 遂に別れの時が来て、それまで堪えていた村民たちも、いよいよ涙を流し始めた。


「……ここまで惜しんで貰えるなんて、僕はなんて幸せ者なんだろう。心からそう思えるよ。だからどうか皆、僕たちのことは笑顔で見送って欲しい。最後に見た君たちの顔が泣き顔じゃ、僕も安心して旅立てないから」

「ア、アスカイ様……」

「皆、ありがとう。今日まで本当に楽しかったよ。行ってくる!」

「「「いってらっしゃいませ!!」」」


 笑顔で涙を流す村民たちの歓声を背中に聞きながら、サトルとヘイキチはクァンリー城へ向けて歩きだした。



「……良い村だったね」

「ああ、文句なく良い村だ。人も物、全てが温かい村だった。そしてそれは……親父殿が作ったんだぞ」

「そっか……。うん、そうだったね。それは、よかった。本当に――」

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