【ユレイシア貴族連合王国】城主(11)
「おかげさまで、この通り息災だよ。アスカイも変わらずのようで何よりだ」
「ああ。なんやかんやあったけれど、おかげさまで今日も元気にやらせてもらっているよ。そして――」
「――俺も忘れてもらっちゃあ困るぜ?レイ殿」
「!?」
もう一つ、聞き覚えのある声がサトルの背後から聞こえてきた。
「まさか、この声は……」
「よう!」
ひょっこりと、サトルの後ろからヘイキチが顔を出した。
「やっぱり、ヘイキチ殿か!」
ハオランが弾かれたように椅子から立ち上がり、ヘイキチに駆け寄った。
「村にいるとは聞いていたが、まさかわざわざ会いに来てくれるとは!」
「何を言うか。レイ殿が来ているというのに、会いに来ないわけがないだろう」
「ははは、そう言ってくれるのは嬉しいよ。なにせ、ヘイキチ殿と話したのは、あの宴の夜が最初で最後だったからさ。忘れられてても仕方ないと思っていた」
「随分と寂しいことを言うじゃないか。あの一晩は俺にとって、十年に匹敵するほど楽しい時間だったんだぞ?あの日の酒の味は、今でも鮮明に思い出せる程だ」
「ありがとう。君がそう言ってくれるなら、僕も酒を振る舞った甲斐があるってものだ。聞いた話によると、君は今、アスカイ・ヘイキチと名乗っているんだって?」
「ああ。今の俺はアスカイ・ヘイキチ。北の賢者アスカイ・サトルの息子さ」
久しぶりの再開で、積もる話に花が咲く。だが、いつまでも花を咲かしている訳にはいかない。
「さて、色々思い出話で盛り上がりたいところではあるんだが、そろそろ本題に入ろうかレイ」
サトルのその言葉に、一瞬でハオランの雰囲気が切り替わった。
「……ああ。人払いを頼む」
「では、僕はこれで失礼いたします。誰もこの部屋には近づかないようにしておきますので、後は皆様でごゆるりと。隣の部屋で待機しておりますので、何かあればお呼びください」
ユーハンが一礼して、部屋から退室した。
「……相変わらずよく出来た子供だ」
退室するユーハンを見ながら、改めてハオランが感心する。
「どうだい、レイ?彼は凄かったろう?」
「ああ、ウチの商会に欲しいぐらいだよ。自分より一回りは歳の小さい子供に、釘を刺されるとは思わなかった」
「釘を刺される?」
「……気にしないでくれ。将来が色々楽しみな子だなってことだよ」
「だろう?シュウは覚えが良すぎて、他の生徒と一緒に授業が出来ないんだ。だから、僕が個別に教えてるんだけど、それすらも真綿に水を垂らすが如く、すぐに吸収してしまう。いるところにはいるものなんだね、本物の天才というやつは」
「君だって天才だろう?」
「……僕は違うよ。僕はただ、ズルをしているだけの凡人さ」
「ズル?」
どこか自嘲気味な表情をしたサトルに、ハオランが首を傾げる。
「ああ、気にしないで。それより、僕に助力をという話だったね。詳細を聞かせて欲しい」
「うん。とりあえず、事の経緯から話そうか。まず――」
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