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【ユレイシア貴族連合王国】城主(4)

「つまり、共通の友人を利用し、親友の情に訴えかけようというわけか。お人好しな賢者様には、確かによく効きそうだ。なるほど、お前らしい小癪な手段だよ」

「褒め言葉として受け取っておきます。レイは口の達者な男です。賢者が村を起こしたといっても、所詮は無許可。王国が認めたわけではありません。その上、本人達も王国から追われる身の上。この城の城主たるプラデーシュ様の庇護は、彼らも欲するところでありましょう。奴ならば、そこを切り口に賢者を説き伏せられるかと」

「面白い。お前がそこまで言うのなら、その部外者を頼ってやろうではないか。その代わり、駄目な時はその男共々責任をとってもらうぞ?」

「承知いたしました」



「――ということだ。レイ、頼む」

「ということだ、じゃねぇよ、クソ野郎。何勝手に巻き込んでくれてんだ。死ね、ガルグ、すぐ死ね」


 クァンリー城に呼び出され、事情を聞かされたハオランが、開幕早々罵倒の言葉を投げつける。


「いいか、ガルグ。初めに言っておく。俺がここに来た第一の理由は、てめーに一言、直接文句を言うためだ」

「わかった、言ってくれ」

「くたばれ」


 場所は滅多に人の来ないディリップの私室であり、そのせいか遠慮なく罵倒の言葉が飛ぶ。


「ハハッ悪いな、本当に」

「クソッ、相変わらず殴りごたえのない奴だ、気に入らねぇ……。飲みの席だったとは言え、お前にアスカイの事をペラペラ喋るんじゃなかったぜ……」

「遠出の商談ついでとはいえ、わざわざ立ち寄ってくれたレイには感謝してるよ。友達が遠方から来てくれる、こんな嬉しいことはない」


 涼しい顔で罵倒を受け流すディリップに、ハオランはすっかり毒気を抜かれてしまった。


「チッ、まぁいい。それで?この件は本気で言ってるんだよな?」

「当然本気さ。こっちの落ち度は分かっている。勿論ただでやれとはいわない。成功した暁には十分な報酬もだそう。なんなら、今後お前のところの商団を贔屓にしてもいい」

「俺としちゃ、成功した暁じゃなくて、失敗した暁の方をなんとかして欲しいんだがね?」

「すまないが、そっちは諦めてくれ。プラデーシュ様は物事が自分の思い通りに行かないと、激高して人の話を全く聞かなくなる」


 ディリップが両手を上げて、お手上げのポーズをとった。


「お前のところの城主は子供かよ」

「耳が痛いね」

「ハンッ、神童ガルグも権力の前じゃ、有象無象の板挟み小役人と一緒か。悲しいねぇ、何のために村を出てまで勉学に励んだんだ?」

「それについても耳が痛い。とにかく、北の賢者の説得はお前をおいて他にいない。同郷のよしみでなんとかして欲しい」

「なんとかって、あのなぁ……」


 ハオランが頭を抱える。


「北の賢者については調べがついてるなら、知ってるだろ?あいつは損得にあまり執着しない。商売人の俺に、損得で動かない人間の相手をしろってか?」

「ああ、勿論知っているさ。賢者が『自分の』損得には頓着しない事をな」

「……は?」


 ディリップがハオランに一巻きの木簡を差し出す。


「そこに、賢者と『その周辺の人間』が置かれている状況をまとめておいた。さっき説明した事も合わせれば、そこからうまく話を作れるはずだ。お前ならな」

「……そういうことかよ」


 木簡に目を通したハオランが、引きつった笑みを浮かべた。


「やっぱり、お前クソ野郎だわ……」

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