【ユレイシア貴族連合王国】決起(5)
「さて、どうだろうか。焼けたかな?」
十数分後、サトルが串を一つ手に取ると、その焼け具合を様子を確認する。
全体的に肉の色が変わり、香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。
「うん、いい感じだ。さぁ、どうぞ」
そして、近くにいた男にそれを差し出した。
「え?俺からもらっていいんですか?」
「はは、誰から食べたって同じだよ。肉はまだまだ十分にあるしね。ほら、君たちも持っていきなよ」
サトルがそう言って、周囲の男たちにも串を配っていく。
「す、すみません。ではお先に……」
串を渡された男の一人が申し訳無さそうに、肉にかぶりついた。
「じゃ、じゃあ俺も……」
それを見ていた他の者も、一人また一人と、つられて肉にかぶりついていく。
「……うめぇ」
一番初めに肉にかぶりついた男の口から、自然と言葉が漏れる。
それは言った本人でさえ、その言葉が出たことに気がつかないほど、無意識かつ自然なつぶやきだった。
「うめぇ……うめぇ……」
「うっ……うっ……」
「おいおい、お前ら、一体どうしたんだ?親父殿が料理が美味いのは俺も知ってるが、泣き出すのは流石に大袈裟じゃないか?」
一部の男たちが、何故か涙を流し始めた。
その奇っ怪な光景に、ヘイキチが思わず首を傾げる。
「い、いや……すみません。すみません。こんな……こんな、しっかりした飯を食べさせて貰ったのは、久しぶりで……。ありがとう……ありがとうございます………」
「ラオロンに呼ばれて、俺たち、もう、何もかも終わりなんだって思って……。全部諦めて……。なのにこんな所で、こんな美味い飯にありつけるなんて……。なんて礼を言ったら……」
温かい食事を取ったことで安心でもしたのか、各々が心に抱えていた鬱憤を吐露していく。
「飯を食べられただけで、そんなに――」
「ヘイキチ」
そんなヘイキチを諭すように、サトルがヘイキチの肩に手を置いた。
「……親父殿?」
「仕方がないさ。外から来た僕たちには、あまり実感のないことだけれど、この国は今戦争中なんだ。彼らはきっと兵糧を名分に、ひどい税を国から取り立てられていたんだと思う。どれだけの物が、彼らの手元に残ったのだろうね。とても惨めで、そしてひもじかっただろう。そこに今回の地獄への招集命令、絶望するのも無理はない」
「親父殿……」
「人間何が一番辛いのかと言えば、満足に食べられないのが一番辛い。餓えは身体も、心も弱らせてしまう。温かいご飯は、生きるための活力だよ」
サトルは涙を浮かべる彼らに、穏やかな笑みを浮かべて言う。
「さぁ、肉はまだまだたくさんある。宴は始まったばかりだ、みんな存分に食べていってくれ!」
サトルのその言葉に、男たちはこぞって串を手に取ると、かまどの火に掛けていった。
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