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【ユレイシア貴族連合王国】決起(4)

「じゃあ、みんな、肉を切り分けるよ」

「オッス!」


 河原にて、サトルの指示の下、蛇の処理をする者、薪を集める者、かまどを作る者、男たちがそれぞれ分担して作業を行っている。

 あの場の雰囲気に流されてしまった者もいるようだが、結局あの後、全員がサトルとヘイキチに付いて行くことを選んだ。


「よし、これで下拵は完了だ」


 内蔵を抜いた腹を洗い流し、皮を剥いで、人数分に切り分けた。恐ろしい大蛇も、ここまで来るともうすっかりただの食材、見慣れた『食肉』という感じだ。

 この場には今、百人を超える人間がいるが、この大蛇ならば、それでも十分な量の肉が全員に行き渡るだろう。


「他の皆も、準備は出来ているかい?」

「はい、かまどは完成しました!いつでも点火できます」

「薪も大量に用意できています!」

「いいね。じゃあいよいよ蛇肉祭りの始まりだ。ヘイキチ、僕のカバンから塩を全部持ってきてくれるかい?せっかくの機会だ、ここで全部使ってしまおう」

「おう」

「!?」


 そのサトルの言葉に、男たちの間に驚きが広がる。


「ああ、勿論、独り占めなんてしないよ。みんなが食べる分にも、使ってくれて構わない」

「い、良いのですか、賢者様。塩なんて、そんな高価な物を我々に振る舞ってしまって」※1

「いいんだよ。こういう物は使ってなんぼさ。さっきも言ったけど、せっかくの機会だしね。どうせなら、みんなで美味しいものを食べた方がいいじゃないか」


 サトルは何のためらいもなく、サラリと笑顔で答えた。


「なんと……っ」


 ハオロンとの売買契約もそうだが、アスカイ・サトルという人間は、物や金銭に対しての執着が少ない人間だった。

 後々、このサトルのある種の気前の良さは、部下を使う上で存分に発揮されることになる。


「ああ、あとこれも塩と一緒に塗り込もうか」

「なんですか、これは?草?」

「カキドオシ、それを刻んだものだよ。ここに来る途中で見つけたから、採取しておいたんだ。いい匂いがするから香草の代わりになるかなと思って。一応血抜きはしたけど、ひょっとしたら肉が生臭いかもしれないからね。塗ってみたらいいんじゃないかと思ったんだ」


 そう言いながら、サトルが蛇肉に塩と一緒にカキドオシを丁寧に擦り込み、串代わりの枝を突き刺した。


「さぁ、焼こうか!」


 サトルが発火符で火口に火を付ける。

 息を吹きかけ、火を大きくし、いい感じの大きさになったら串を地面に突き刺す。

 そして薪で火力を調整しながら、ゆっくりと肉に火を通していく。


「いい感じだ、これなら後数分で完成するよ」


 やがて河原に肉の焼ける音と、香ばしい匂いが広がっていく。


「ごくり……」

 様子をみていた男たちは思わず唾を飲み込んだ。


※1 当時は今より移動手段が少なく、交通網も発達していなかったので、物の輸送には非常にコストが掛かった。その上、生活必需品である塩は常に一定の需要があるため、その価値が下がることがない。よって塩が取れない内陸の領地では、塩は高価な調味料であり、贅沢品の一種だった。岩塩が産出せず、塩田が存在しない我が国では、海に面している領地は、良質な塩を生産できる技術さえ持っていれば、その一点だけで領地としての価値が跳ね上がった程である。時にその塩を求めて戦争が起きたことも、逆に塩を送ることで友好を示し、戦争を回避することさえもあった。密輸を行えば厳しく罰せられ、時に政府から価格や扱いについての調整が入るなど、今で言うところの戦略物資と同等の扱いをされていた

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