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【ユレイシア貴族連合王国】旅路(8)

「再び歴史が大きく動いたのはそれから約200年後、つまり今から約120年程前のことだ。その年はひどい年だった。国中で疫病が流行り、多くの民が病死した。その猛威はやがて民だけなく、王の一族、臣下にも襲いかかり、多くの者が為す術もなく病没。後継者、後見人、支援者、他、権力側の人間がバタバタと死んでいき、結果、それまで均衡が取れていた、王宮内の勢力図がズタズタになってしまった。そして、遂に時の十二代目皇帝『アストロズ・シーシュン・フォム・ユレイシア』までもがその病に罹り、跡継ぎを指名する暇もなく急死してしまったことから、この騒乱が始まる。『ユレイシアの大政変』が」


 この政変を一言で言ってしまえば、よくある後継者争いである。


 アストロズと正妻の間に生まれた長男で、皇位継承権第一位『アリアス・シーシュン・フォム・ユレイシア』と、そのアリアスの腹違いの弟で継承権第二位※1の『ルクレシア・イーシェン・フォム・ユレイシア』が、王座を掛けて争った。


 アリアスはアストロズの直系の息子であったが、お世辞にも国の長を務めるに足る才能があるとは言い難かった。※2勿論、平時であればそれでも問題なく、彼が王になっていただろう。王としての適正が劣っていたとしても、周りの者でそれを支えられれば良いからだ。


 だが、時期が悪かった。前述のように疫病が流行り、民が死に、国は乱れ、また本来その危機を支えるべき、国家の重要な人材すらも損害を受けた。王を支えるどころか、現状の体勢をなんとか保たせるだけで精一杯であり、とても面倒など見ていられない。


 求められたのは、この危機であって、国をまとめ上げる力を持った強力なリーダーだった。そして、白羽の矢がたったのがルクレシアだった。


 ルクレシアのは幼少期より王として、高い才覚を持っていた。彼は周囲の人間を惹きつける不思議な魅力を持っており、彼の周りには常に人が集まっていた。また頭も良く、三才で書を読み、五歳で見事な歌を詠んだと伝えられる。


 そもそも才能ある第一皇子の腹違いの弟、という危うい立場でありながら、暗殺も追放もされず時期皇帝として推薦されているのだから、その才能は推して知るべしだろう。


 そんな彼を支えたのは当時まだ新興の貴族だった『ワン』『ツァオ』『ミシュラ』『シャルマ』の四家だった。革新派に属する彼らは、この乱れた国を立て直す事が出来るのは彼しかいないと一念発起し暗躍。順調にその支持者を増やしていった。


 だが、保守派の貴族、特に帝国四大貴族である『クラウディア』『サイドリッツ』『ゾンダーフェルム』『ウェスターライヒ』の四家はこれ断固反対。あくまでも継承権に即した皇帝を立てるべきと主張した。両者は真っ向から対立し、解決の糸口を見出だせぬまま、やがて武力衝突へと発展。


 最終的に大陸は『アリアス・シーシュン・フォム・ユレイシア』の勢力が治める真正ユレイシア帝国と、『ルクレシア・イーシェン・フォム・ユレイシア』の勢力が治めるユレイシア貴族連合王国に分断されることになった。


 これが『ユレイシアの大政変』である。


※1 腹違いの割に継承権が高いが、これは流行り病のせいでアリアスの兄弟たちがほぼ全滅してしまったからとも、対抗勢力が継承の正当性を得るために継承順位を捏造したからとも言われている


※2 具体的にどのように才能がなかったかは、はっきりしない。文献から読み取れる限り、積極性に欠け、リーダーとして他者を引っ張っていく性格ではなかったらしい。もっとも、腹違いの弟と新興貴族の連合という、権威で遥かに劣る脆弱な権力基盤の勢力にさえ、国土の半分をもぎ取られてしまう程度に才がなかったのは事実である。ただしこれは、そんな脆弱な権力基盤でありながら、一大帝国ユレイシアを切り取ってしまった、ルクレシアのカリスマに凄まじいのものがあったのかも知れないが

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