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【ユレイシア貴族連合王国】敗走(2)

「ヘイキチさん、流石にもうダメだ。完全に囲まれてる」


 兎にも角にも、そんな『熊倒し』を仕留めんがため、いささか過剰とも言える戦力で以って追跡が行われていたのであるが――その判断は結果として正しかったことになる。

 既に周りは二、三十人の兵士達により包囲が完了していた。たった八人ほど、それも満身創痍の敗残兵では、とても相手などできない。


「かくなる上は、全員で……」

「のう、カンスケおめぇさっき『おっとう』『おっかあ』言うとったな?」

「は、はい」

「トウキチは故郷に許嫁を残してきた言うとったな?」

「あ、ああ……」

(後ろに少しだけ包囲が薄いところがある。ワシがアイツラの気ぃ引く。おめぇちはその隙を突いて逃げろ)


 ヘイキチが小声で仲間に指示を出した。


(で、でもそれじゃヘイキチさんが……)

(なぁに。ワシの親は一昨年、流行り病で死んだ。兄弟もおらん、里に残してきたもんもおらん。ここで死んでも誰も悲しまん)

(だ、だが……)

(どうせもう全員死んだも同じじゃ。だったら、ここで死ぬるなぁワシ一人でええ)

(ヘイキチさ――)

「黄泉路への先陣じゃあああああい!!」


 返事を聞くより早く、戦斧を構えてヘイキチが飛び出した。


「っ!?」


 突然の雄叫び、同時にさながら猪のような俊敏さで、ヘイキチが正面の兵達に襲いかかる。

『たった八人ほど、それも満身創痍の敗残兵では、とても相手などできない。』先程、こう記述させて貰ったが一つ訂正しなければならないだろう。

 ――相手がヘイキチでなければ、と。


「げぇ!?」


 瞬間ヘイキチが斧を一振り、兵士三人は槍を構える間もなく、たちまち首が宙を舞ったという。

 一振り三殺――その異様な光景に兵士たちは一瞬、言葉を失った。


「さぁいけぇ!!」


 ヘイキチが怒鳴り声を上げる。

 追撃隊からすれば、それは完全に不意を打たれた形となった。


「ヘイキチ殿!どうがご武運を!」

「すまねぇ!」


 だが、その勇猛さに感嘆している暇など無い。

 七人の敗残兵は脇目も振らずに、ヘイキチとは逆方向に走り出す。


「副長!奴らが!」

「か、構うな!今は奴を――」

「おおおおおおおおおおおっ!!」


 一瞬の混乱を見逃さず、いつの間にか近づいていたヘイキチが斧を一振り。


「ぐぶぁ!」


 隊長格の一人と思われる男が胴で真っ二つになり、宙を舞った。


「ふ、副ちょ――あばっ!?」

「ワシのタマ取って手柄を上げるなぁ誰じゃあっ!?おめぇか!?」

「ひ、ひぃ……」

「さっさと掛かってこんかいっ!!あの世に道連れじゃあっ!!」

「ひ、怯むな!相手は一人だ、いけぇ!!」

「おおおおおおおっ!」

「ぃヨシッ!名はないがワシの里に代々伝わるマサカリの術、しかと見ぃ!」

「ぎゃっ!?」

「ぐべぇ!!」

「う……ウワァ、アバぁ!?」


 六人、七人、八人――ヘイキチがその戦斧を振るうたびに確実に兵士の首が宙を舞う。


「軟弱がぁ!こちとら疲れとるんじゃい!さっさとこん首ィ落として休ませぇ!!」

「ひ、ひぃぃぃ」


 熊倒しの異名に偽りなし。その有様に兵士たちはたまらず及び腰になる。


「ええい!何をやっておる!矢じゃ!距離をとって矢を射掛けい!!」

「は、はい!」


 幾人かの兵士がヘイキチ目掛けて矢を射かける。

 状況的に同士討ちが起きてもおかしくないと思われるが、それを気にしている余裕など彼らにはなかったのであろう。


「ぐおっ……」


 躱しきれなかった数本の矢がヘイキチの肩と腕に突き刺さる。だが、その程度ではヘイキチは止まらない。


「おんどりゃああああ!!」

「ひ、ひいぃぃ!?」

「ば、化け物!?」

「ま、待て、お前たち!逃げるな!逃げたものは全員打首じゃぞ!!」

「だったらここでその首落としてやらァ!!」

「ぐばふっ!!」

「うわァァ!!」


 まさに阿鼻叫喚、二十人以上はいたであろう兵達は既に半分近くが大地に伏していた。


「矢じゃ!とにかく矢を射かけぃ!!」

「は、はいぃ!!」

「うおおおおおおおおっ!!」


 無数の矢が右に左に飛び交う中、山中を悲鳴と怒号が響き渡った。

感想、批評、レビュー、ブクマ、評価、待っています。

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