檻の中の少女編(9)
篝火が気づくと夢の中にいるようだった。
そこには、檻の中に閉じ込められている10歳ぐらいの充希がいた。
隣には悠一もいた。どういう事か聞いてみた。
「どうやらここは霊界みたいだな」
「霊界?」
篝火はよくわからない。
「うん。人間には物質世界と霊的世界があるんだよ。たぶんあの悪霊に攻撃受けて、この霊界に飛ばされたみたいだ」
「えー、どうすればいいんっすか。あの檻の中にいる充希先輩助けないと!」
「まあ、とりあえず祈ろう」
悠一と篝火は、ただただ熱心に祈っていた。悪霊追い出しのような言葉は言わず、ただただ神様に充希が助かるよう祈っていた。
すると充希が取り囲んでいた檻の一部がミシミシと歪み始めた。
「あと少しだ!」
悠一に言葉に励まされ、汗だくになりながら祈りの言葉を重ねた。
だんだんと檻が崩れ初めて、10歳ぐらいの充希が出てきた。
「充希先輩!」
「充希さん!」
檻から自分から出てきた10歳の充希を回収し、悠一が背中に抱えた瞬間だった。
すると目の前の世界が霧のように消えて、元いた世界に戻ってきた。礼拝室で倒れていた篝火と悠一だったが、すぐに意識を取り戻す。
充希もぐったりしていたが、意識を取り戻し始めた。床にしゃがみ、身体を起こす。
「あれ? どうしたんだろ、私。夢の中で神様みたいな人が、私を檻から救い出してくれたんだけど……」
意識を取り戻した充希の周りには、ロシア美女はいないようだった。とりあえず追い出しは成功してホッとする篝火と悠一だが、充希は涙を浮かべながら事実を話し始めた。
「私、ずっと母に縛られていたんです」
充希の母はかなり過保護だったという。進路でもなんでも決められてしまい、いつしか生きる気力も失っていたという。
親が先回りしてなんでもやってしまうため、自信もつかない。当然、恋愛の自信もなく、気に入った相手がいても重い片思いを募らせる事ばかりだったという。
「それは、しんどいね…」
篝火はちょっと同情してしまった。重たい念を込める女性はちょっと怖いのは確かだが、こうして事情を語られてしまうと、篝火は何も反論ができなかった。悠一も渋い顔で事情を聞いていた。
「あなたの事も気に入っていたのに、自分から何も行動できなかった。最低ね。自信が無い事を言い訳にして、何も行動できない」
「そんな事は………。あれ? でも今は告白みたいのできてない?」
篝火は、そん事にきづいて指摘した。
「え、ああ。今はあんまり変な念を込めたいみたいな気持ちはないかも。心は軽い」
「そうだよ。充希さん。もう子供じゃないんだよ。自分が好きな事を自由に表現していいんだよ。お母さんの顔色見なくていいんだよ」
悠一の言葉に、充希は、意を消したように頷いた。
「篝火くん。あなたの事気に入りました。付き合ってほしいです!」
充希は清々しい笑顔で告白した。よく晴れた夏の青空みたいな笑顔だった。
その笑顔に篝火の気持ちがちょっと動きかけたが。
「ごめん。僕は、しばらくは神様に為に生きたくなった。誰かと付き合う気分ではないんだ」
「うん、わかったよ」
断られたというのに充希の笑顔は晴れやかだった。
「私も檻から救い出してくれた神様の方がかっこよく思えちゃった。神様の事教えてくれない?」
さっぱりした笑顔を見せる充希に、つかさず悠一と篝火は福音を伝えた。意外とすぐに福音を受け入れてくれた。
これで充希にあのロシア美女の悪霊が戻ってくる事は無いだろう。
ホッと胸を撫で下ろす悠一と篝火であった。
こうして充希の悪霊騒ぎは幕を閉じた。




