穏やかな日常と油汚れ
あのよくわからない決闘から一か月…最近気になることがある
部屋に知らない女の子がいるのだ
朝、目を覚ますと部屋に置かれているテーブルで水をこくこくと飲んでいる5歳くらいの短めの黒髪に小麦色の肌をした小さな女の子の姿が見えた
あのそれ私の水…寝ぼけてるのかなと思い目をこするするとその時には女の子は消えている
もう毎日これの繰り返しだ
夢かとも思ったけど水は減っているし…どれだけ部屋を見渡しても私以外にはスヤスヤと眠るナクロしかいない
謎過ぎる…怖い…
ナクロと言えばなにやらお友達ができたようで、たまにナクロよりさらに一回り小さい青色のトカゲみたいな子を最近連れている
猫パンチしたり口にくわえて振り回したりしているけどおそらく友達のはず
あとさらにあの決闘の後だが私の友達?が増えた
例の革命の乙女(笑)さんの取り巻きだった平民の子たちだ
あの決闘の後で第二王子がなんか言っていたが結局は私の勝ちということになった
そこから紆余曲折ありなんか革命の乙女(笑)領が家の物になったらしい
びっくり仰天だ
距離も離れてるし領民たちにも説明しないとだし大丈夫か?と思ったけど何とかなったみたい
カツラギはあれでもやり手なのでそこで新しく商売を始めたらしい(リリィベル先生と一緒に)
結果として領民に還元はできているので不満はそんなにないみたい
まぁ文句言った人たちはもれなくうちの若い連中に人さまには言えない事されたんでしょうけどね…
ちなみに革命の乙女(笑)さんの一族は追放したらしい
そこまでしなくてもと思わないこともなかったが、そう主張したのは私だけで、あとは満場一致で追放処分となったそうだ
すごい結束力だね皆。のちのちこれが私に向かないように気を付けたい所存です
そんなこんなで革命の乙女(笑)さんのところにいた子は私が引き取った
最初はなんか皆がすごい規則正しく動くから本当に怖かった
歩くときは私の三歩後ろにきっちりと並んでついてくるし、何も言ってないのに私の荷物もってるし、ご飯も勝手に取りに行くしもういい加減にしてくれとキレた
お前らは私をなんだと思ってるんだ!と
それはもう盛大にブチぎれた。そしてお兄様を通してカツラギと若い衆に徹底的に教育させた
結果今ではおとなしく普通にしている
他の皆ともなじめたみたいだしよかったよかった
そのおかげで私はまた「お嬢」呼びされてっけどな!
そんなこともありつつ私はとりあえず平和な毎日を過ごしている…とは言い難い状況です
というのも最近あの第二王子がやたらと絡んでくる
私にというよりはエリーになのだがエリーは基本的に私と一緒にいるから必然的に私にも絡んでくる
いい加減にしてほしいとうんざりする毎日である
「ヒスイ様、これとても美味しいですよ。きっとヒスイ様の好きな味です」
放課後にメリッサとサーシャを連れてエリーとお茶をしているとエリーはいつもどこからか私好みの美味しいケーキを探してくれて「あ~ん」をしてくる
そしてそれが毎回美味しいので気恥ずかしさを感じながらも逆らえない私
「あらほんと、とっても美味しい」
「ふふっ良かったです」
ニコニコとエリーは笑っているが私に餌付けをするのがそんなに楽しいだろうか?
どれ私も仕返しにやってみようじゃないか
私は今食べたケーキを一口に切ってエリーに差し出す
「はい。エリーも…あ~ん」
瞬間空気が凍った
ピシッと空間にひびが入る音が聞こえてくるかのようだ
メリッサとサーシャはなぜか汗をだらだらと流しながら固まり
エリーは目を見開いて微動だにしない
なんなのよ
そんなに私の「あ~ん」はおかしいか
いいよいいよ自分の分は自分で食べますよ~
そして自分の口にフォークを運ぼうとした時、がしぃ!と腕をエリーに掴まれた
今すっごい速かったね腕。驚きのスピードだ
「…エリー?」
「あ、いや…その…すみません…」
顔を真っ赤にしてうつむくエリー。
あらま、かわいい…さすが圧倒的美少女はこういうのすごい破壊力ね
しかし何がしたいんだろうか?
あ。食べたかったけど「あ~ん」が恥ずかしかったのね?ぷくく、少しは私の気恥ずかしさを理解してくれたのかしらね
「食べる?」
「はい…いただきたいです…」
やっぱり食べたかったらしい
再びケーキを差し出すとエリーは頬を真っ赤にしながら目を閉じてプルプルと震えながら口を遠慮がちに開いた
え…なにこの感じ…なんか私までドキドキしてきたんだけど…
ドキドキ
フォークを近づけていく
ドキドキ
なんだかエリーの唇が妙に艶やかに見える
ドキドキ
そしてもう少しで口に入るというところで
「ぱくっ」
横から食われた
「え」
「もぐもぐ…わぁ~お~い~し~い~~」
いつの間にかリアがそこにいてケーキを横取りしていた
「リア?ねぇリア?あなた今自分が何したかわかってるの?ねぇリア?ね?ね?」
「わっはっは~の~は~リナが怖いからかえるね~~ケーキごちそう~さまぁ~~~」
そして消えた
自由かよ
自由だったわ
さすがは龍と言ったところか…見た目はえっちなお姉さんなんだけどもさ
ちなみにテーブルの上のケーキはリアと一緒にキレイに消えていた
「…はぁ、すみませんヒスイ様。リアには厳しく言っておきます…」
「いやいいのよ別に。言ったって止まる子じゃないでしょうしね」
「そうですね…あ、お茶おいれしますね」
「ありがと」
エリーといるときはメリッサじゃなくてエリーがお茶を入れてくれる
何故かは知らない
気づいたらこうなっていた
どちらの入れたお茶もおいしいので私はどちらでもいいんだけどね
とそこで私の心をげんなりとさせる声が響く
「エリー!!」
遠くからやたら大きな声で叫ぶ男の姿
そいつはこちらに向かって走ってくるとそのままエリーの腕をつかんだ
そう件の第二王子である
「きゃっ!」
「エリー!何をやってるんだ!こんなことして君の美しい腕がやけどしたらどうする!?」
第二王子がエリーの手からポットを取り上げて投げ捨てた
おいおいおいおいおい!それ私のお気に入りの…!
しかしポッドは地面に激突する前にメリッサが回収していた
ポットの底の部分を鷲掴みにしてるけど熱くないのあなた?熱くないんでしょうね…平気な顔してるし
いやそれよりエリーは!?
「失礼します。エリナリナ様から手を離してくださいませ」
さすが有能なサーシャが第二王子をエリーから引っぺがしていた
「この!下賤な使用人の分際で僕の邪魔をするな!離せ!」
なにやら暴れているがサーシャを振りほどけるはずもなく
じたばたしてるだけだ
とても愉快である
「サーシャさん、離してあげて」
「はいはい~」
「この…貴様の顔は覚えたからな!…それにしてもダメじゃないかエリー。君が自らお茶を入れるなんてやけどしたら大変だ」
「…殿下。最大限気を付けていますので大丈夫です」
「いいやダメだよ、君は尊くて大切な人だからね…危険なことは全部そこの使用人にやらせればいいんだ…貴様も何を考えている!エリーに茶を入れさせるなど相も変わらず底意地の悪い女だ!」
もうねずっとこんな感じよ最近
突然あらわれてエリーに気持ち悪くべたべたして私に暴言を吐く
なんなん?マジで
「殿下。以前からお願いしていますが私を「エリー」と呼ぶのはおやめください」
「照れなくていいっていつも伝えてるじゃないか。君も僕のことはキースと呼んでおくれ」
「お断りします、なので殿下もやめてくださいませ」
「あぁそんな奥ゆかしいところも実に可憐だ…今日はね招待状を持ってきたんだ。今度王宮でパーティーをするから君もぜひ来てくれ。エスコートはもちろん僕がするからね」
第二王子は懐から招待状を取り出すとエリーに渡そうとして…サーシャが横から奪い取った
第二王子はそれに不機嫌そうな顔をしたがそれ以上は何も言わなかった
というかパーティー?私何も聞いてないんだけど?
「殿下。私には招待状はいただけないんですか?」
「ちっ…本当は渡したくなどないが父上が貴様にも渡せとうるさいからな…ほら」
おそらく私宛のその招待状を地面に放り投げやがった
「来たいなら拾え。言っておくが僕はお前をエスコートなんかしないからな。どれだけお前が僕を欲しようが僕はお前の物になどならない。それを覚えておけ…エリー、当日が楽しみだね」
言いたいことだけ言って第二王子は去っていった
いやお前の事なんか欲しくないわ!!!!
そう叫びたいのを必死に我慢した
というかもしかしてエリーはあれの事好きなのかしら…?あの物語的にはあり得る…
エリーを見るとうつむいて何かをぶつぶつと言っていた
「あのエリー?大丈夫?」
「…はい大丈夫ですよ。すみません」
「いえ謝ることじゃないけど…ねぇエリーってあの王子の事どう思ってるの…?」
「しつこい油汚れだと思っ…個性的な方だと思います」
うん
好きじゃないなコレ!安心した!!
あと一つ気になることは
「もしかしてエリーって呼ばれるの嫌…?」
ずっとあの王子にエリーと呼ばないでって言ってたしもしかしたら嫌なのかも…
「いえ…私を「エリー」と呼ぶのはヒスイ様だけですから…」
「え…?あ、うん…???」
どういうことだ????
私にはよくわからなかった




