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スライムサモナー  作者: おひるねずみ
第1部第1章 愛別離苦のアウロラ
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第四十四話 熟練度還元

 心がぽかぽかする雑談に終止符を打ち、威力偵察を継続させる日本初のダイバークラン部隊。


 名を青い宝物(ブループラネット)


 現在戦闘を担っているスライム最大召喚数は魔力二分の一足すレベル数で72匹。

 それを指揮するリーダー(とおる)は43匹のスライムを半分以上の魔力を消費して17匹加えて合計60匹の集団にした。

 そこから二分隊にじっぴきを三つに分けて編成。従者スライムをまとめた主力の第一分隊を威力偵察で階層の奥まで派遣し、第二、第三分隊をクランメンバー全員の護衛をする任を与えて、第一分隊とは別の道をスライムと水遊びをしながら突き進んでいく。

 

――――プシュ――ピシュ――!


 護衛している三十五匹の液体生物が主の命令により、垂直に上へ向かって七、八メートルほどの高さまで水遊びで水を噴射して、小さな簡易噴水を作り上げている。

 残りの五匹は水色傘に姿を変えて、メンバーに降り注ぐ水しぶきをガードする役目を与えられていた。


「まさかダンジョンを傘さして歩く日が来るとは夢にも思わなかったな」

「天鐘君の技能が異質ですからねぇ」


 剣術と園芸は現代では幅広く名が知られているが、スライム召喚は科学の枠からも外れた技能魔法。そこから現実として姿を現した生物の利用法は様々で多岐に渡る。

 地球世界で召喚魔法を利用して人々に認知されたら大騒ぎになるが、入場制限が課されたダンジョン沼内なら話は別だ。気兼ねなく授かった技能の性能、効力実験に精を出すことができる。

 通も例外なくそのうちの一人で、待ちに待った瞬間にワクワクしながら、水遊び技能でスライム達に放水してふれあっていた。


「通のスライム達、ちょっと楽しそうだな」

「嫌がる素振り見せないから、こちらとしても気が楽だよ」

「ねぇ通君、実際に水遊びのことで聞きたいことがあるのだけど……」


 水遊びを探索中にやる趣旨、水遊びの技能をスライム達にもやらせてる、物事の本質を知りたいのだろう。

 

「理由を話すと、水遊びには技術的レベルが存在していて使用することにより体が馴染み、仕組みを悟ることで経験値が刻まれることになってる」

「そうなると、私が所持している狩猟術や格闘術に準ずる扱いなのね?」

「なっ! デイジー格闘技やってんの!?」


 私が知りたい話をかき乱す気なのと、少しイラついた目つきを鋼に投げかけるデイジー。


「護身として幼少から学ばされていただけよ。恐怖で身が硬直してゴブリンには通用しなかったけど」

「あ――――なんつうかその…………悪かったな…………」


 皮肉たっぷりの言葉を聞き、謝罪するしか術がない鋼。やり返されてるなと通は鋼を不憫に感じた。


「鋼は技術レベルが刻まれた技能所持してる?」

「いちおう料理技術レベル2があるな」

「レベルが付いてる全ての技能に言えることだけど、物事を熟知するほど熟練度レベルが上昇する仕組みだから」

「へえ、自身の資質、実力が目に見えて評価されてるようで面白いな」

「それで通君の水遊びレベルが上がると、どういった特典が付いてくるの?」


 メンバー全員がリーダーに注目する。これはいい機会だと、通はこれを機にダンジョン秘蔵情報を語ることにした。


「水遊びはレベルアップすると派生する技能があったり、水耐性、水を生み出す魔力変換効率が改善されたりして、水魔法を使っても疲れにくくなる体質になるんだ」

「お得な利点が目白押しね」

「体が慣れるってことだな」

【もしかして通君はスライム各自が水技能を学ぶように誘導しているのですか?】

「プルを除外した全てのスライムは自分と同じ技能水準で、天音さんの言及は正解なのですが、もう一つ水遊びをする理由があります」

 

 半分正しいと答えて、残りの半分の最も重要な真実を自信を持って話す。


「実はサモナーにとっては今後の行く末を左右する非常に重大な情報で、召喚したスライム達が主人が持つ同質の技能を使用することで熟練度が召喚者本人にも還元されるんです」


 頭で認識すればするほど、ずるい能力で自然と呆れ顔になってしまうメンバー。通もこうなることは必然と覚悟をしていたため冷静に彼らの様子を探れる。


「…………本当にひどい格差ね。社会の縮図を目にした気分よ」

「なんだそれは…………今、作業従事しているスライムの熟練度がすべて通に流れるのか? そんなん常識的に考えて、一発退場の反則技だろ!」

【通君。それを人はチートと言うんですよ? ご存じです?】


 想像通りに冗談の応酬が炸裂したところに、早くも嬉しい通達つうたつが来た。


【水遊びレベル2にランクアップ】

『水に属する系統の効率が一割改善されます』


「ふふ、上がった」

「はあ? まさかもう水遊びのレベルがあがったのか!?」

「水遊びしてから三十分も経ってないじゃない!」

「お前ら落ち着け、天鐘が成長すれば俺達のレベルアップ速度が速まるから、これくらいで、お! あいつら好戦的だな、またレベルアップしたぜ」


『24の経験値獲得』


「おめでとうございます辻巡査、最初のアレで探索には躊躇してましたが、今は嘘のように順調に推移してますね」

【大鐘巡査、それは一種のフラグ発言ですよ? 気をつけてください。私みたいになりたくないでしょう?】

「ははっ、これは手厳しい」


 侵入当初に遭遇したボス級に準ずる蜂型昆虫トゥエルカ・ナハラ・カーティルには、今のところ遭遇していない。

 それが逆に不気味で、名は体を表す暗殺者は何処からか命を奪うチャンスを窺っているのではないかと、クランメンバー、特にデイジーに言い知れぬ危機感を持たせていた。

 そのせいで冷静さを欠き、通の水遊びによって周囲が湿っていることに気づいていない。

 傘をさして視界が狭まっていることが唯一の救いで、いち早く事態に感づいたのは意外にも鋼だった。


「ちょっと耳貸せ通」

「うん?」


 鋼に身を寄せて、耳打ちされる通はデイジーを見て、アッと小さく呟き、早急に対処しなければならない問題に焦りの色を濃くする。そこでスライム一匹を呼び寄せ、打開できる物を核から取り出して顔をそむけてデイジーに手渡す。

 そこで初めて自身が着ている白タンクトップが、水遊びによって生じたウォーターミストと革製肩掛けバッグの紐によって肌の吸着力をアップさせ、鮮明に下着を浮かび上がらせているのを自覚する。


「もうっ! 最低ぃ///」


 頬を朱色に染めながら通から力任せにタオルをひったくり、傘とバッグを慌てて投げ捨て、下着が透けて見えないように胸部にタオルを手早く巻き付けて固定し、ズレないのを確認してから黒の肩掛けバッグを腕に通す。


「デイジーさん、すみません! 本当にワザとではないんです!!」


 背を向けたデイジーに必死に謝罪を入れる通。

 失礼を通り越し、不本意ながら女性に嫌われることをしてしまった通に『精神安定』の効果は働かず、腰を折って深々と頭を下げ、今の自分に可能な最敬礼で許しをう。

 そこに折悪おりわるく、ログが追加された。


『レベルが上がりました』←デイジー。

「うるさあぁぁ――い!!」

「ッ!?!?」


 気が動転しているところにレベルアップの高揚感が偶然にも合わさり、いつも以上に強い口調が飛び出した。

 完全に嫌われたと勘違いする通は、顔を上げずに頭を下げ続ける。


「おいデイジー許してやれよ」


 くるりと半回転して腕組みするデイジーは、悪態をつき、目を吊り上げて許す条件を提示した。


「今日の調査が終わったら私が指定する焼肉店に連れていくこと。これが許す絶対条件よ。もちろん通君の奢りでね」


 そんなことで良いのならと顔をあげ、通は何回も頷いてデイジーの案を確約する。


「若いっていいなぁ~~」

【青春真っ盛りですね、見てて自然と頬が緩んでしまいます】

「僕達もまだ青臭いことしてますけどね」


――――ブルル、ブルル。


 謝罪が聞き入れられ、心底安心した面持ちで移動を再開させてから、スマホの着信を取り挨拶を交えて通話するクランリーダー。


「それで、どうしました武田少佐?」

「天鐘君たちは昼をどうするか気になってね」


 ああ。もうそんな時間かと曖昧に話をして、食事については心配いらないと誤魔化しを入れる。


「そうか了解した。こちらの二チームは一度ベースキャンプに戻って昼食を取ることにする。くれぐれも無茶をしないようにな。そちらの無事を祈る」


 電話を切り、画面が変わり映し出されたリリーの映像。よく見ると滝のような水源が映し出されていて、流れている滝水の裏から黄色い光が差し込んでいたのを通は見逃さなかった。

スライム一分隊は10匹です。

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