第15話:鳥かごの鳥
明日は開き直って暇人アピールとして2話更新しちゃいます。
明日はついでに怒りのクリスマス短編もあとがきにくっつけておきます。
「正面からアイアンゴーレムが来る!」
「む、迎え撃つぞ!」
冒険者たちは武器を取り構える。
通路は狭い。
多数対多数の戦いでは体の小さいミニアインアンゴーレムの方が有利!
そして冒険者たちとミニアイアンゴーレムがぶつかり合う。
冒険者も前線で戦う剣士たちと後衛で援護する魔法使いやヒーラーに分かれてミニアイアンゴーレムを効率よく迎え撃とうとするが、小さな体を駆使してちょろちょろと動き回るミニアイアンゴーレムになかなか対応できない。
やられたりはしないが、攻撃も当たらないと言った感じだ。
これでいい。
思い通りだ。
ミニアイアンゴーレムで敵の注意を引きつけつつかく乱して本命は……。
「きゃ、きゃあぁぁ!」
「な、なんだこれぇ!」
来た!
最後列で援護していた女魔法使いと、ヒーラーの男が悲鳴を上げる。
小棘球ゴーレムが足もとにまとわりついて攻撃を始めたのだ。
遠くから魔法などで焼き払われたら弱いが、近づいてしまえばこっちのもの。
接近してしまえば魔法を発動することはできない。
冒険者集団は完全に混乱状態に陥った。
中々ミニアイアンゴーレムが少しづつ、だが確実に冒険者集団を押していく。
ダンジョン内の通路は狭いからな。
少数精鋭で来られたら隠し玉のミスリル加工ストーンゴーレムを出すしかなかったが、この烏合の衆なら隠し玉を使うまでもない。
「があぁぁぁ!」
グサっ。
硬く尖ったミニアイアンゴーレムの手が1人の剣士の体を貫く。
これを皮切りにミニアイアンゴーレムが1人、また1人と屠っていく。
DPは7000増えてる。
残りは17人か。
ここでもう少し削っておきたい。
だが俺の思いは届かず、追加で1人を殺した時……。
「おい、おまえら。攻撃は一切考えず休憩所へ向かえ!」
チっ、休憩所に気が付いたか。
仕方ない。
『ミニアイアンゴーレム! 1人を重点的に狙え!』
バラバラに攻撃して全員を休憩所に入れるわけにもいかない。
「う、うわ。何だ! なんで急に……。う、うわぁぁぁ!」
アイアンゴーレムの一斉攻撃で足を奪うことに成功する。
そして機動力を封じてしまえば殺すのも容易い。
「すまん!」
仲間の1人が目を瞑り頭を下げて休憩所に入る。
「助かった……」
安易に助けに入らなかったのは恐怖からか理性からか。
だが問題ない。
こいつらはもう恐怖に染まってしまった。
さらなる恐怖を与えておけばいいだけだ。
「ふぅ、助かった……」
「死んだと思った……」
助かった冒険者は次々と安堵の言葉を漏らす。
バカが……。
安心してる場合じゃないっての。
休憩所の四方を大量のミニアイアンゴーレムで囲んでおくか。
こいつらをすぐに倒すよりも餓死するまで永遠にここにいてもらった方がいい。
俺は全戦力のミニアイアンゴーレムを4分割し、四方の通路に転移させる。
「な、なんだ! 囲まれた!?」
気が付いた1人の冒険者が声を上げる。
「え!?」
その言葉に慌てて中の冒険者たちはあたりを見回す。
だが遅い。
すでにお前らはとらわれている。
「いや、慌てるな! 食料は1日分あるはずだ! 大事に食べれば2日持つ。ダンジョンの魔物は基本的に侵入者を排除せよとしか命令されていない。そして休憩所の中は魔物からは見えないようになっている。そのうちどっかいくさ」
そんな仕様があったのか。
まあ残念ながらこのミニアイアンゴーレムはダンジョン産じゃなくスキルで作成したものだからこのゴーレムが休憩所の周りからどっかいくことはないが。
「そ、それもそうだな」
「とりあえず休むか」
だがそんなことも露知らぬ冒険者は安心したように休憩所の床に寝転がったり、仲間と話し始める。
ま、果たしてその余裕がいつまで続くかね。




