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[第二話、入学おめでとう!]

毎週、月、水、金の更新を予定してます。

※夜の21時までには投稿します!

どうぞよろしゅうに〜

「なるほどね、つまりユウマはこの世界の住人じゃなくて、別の世界から来たってわけか…」


列車の座席に腰掛けながら、ジョンは腕を組み、真剣な表情で俺の話を聞いていた。俺は目を覚ましてからここに至るまでの出来事を洗いざらい話した。


「俺、帰れるのかな…」


不安を隠せずにポツリと呟くと、ジョンは即答した。


「うーん…わかんない!」


「なんだよそれ…!」


もう少し考えてから答えろよ、とツッコミたくなる。しかし、ジョンはどこか楽観的な笑顔を浮かべて、俺の肩をポンと叩いた。


「でも大丈夫!学校に行けば何かわかるかもしれないし、一応ユウマも入学してることになってるんだからさ!」


「そこが謎なんだよな…」


なんで俺が勝手にこの世界の学校に入学してるんだ? それに——


「生徒手帳はまだ理解できるとして、この変なペンダントは何なんだ?」


俺は胸元に下がる奇妙なペンダントを指でつまんで見せた。金属製の枠に、青く透き通った石が埋め込まれている。明らかにただの装飾品ではない雰囲気を醸し出していた。


「それは僕たち魔法使いの魔力の源さ!魔力の管理をするだけじゃなくて、星獣を召喚するためにも必要なんだよ。それがないと魔法は使えないからね!」


「星獣?なんだそりゃ?」


「星獣っていうのは、僕たちをサポートしてくれる相棒みたいなものさ!試しに僕の星獣を見せてあげるよ——来たれ、星獣モナーク!」


ジョンが手のひらをペンダントに触れながら、何かを詠唱すると、彼の前にオレンジ色の魔法陣が浮かび上がった。その中心に小さな光が灯り、次の瞬間、黒い帽子を被った小さな猿が姿を現した。


「これが僕の星獣、モナーク!ユウマに挨拶して!」


「こんにちはココ、モナークって言いますよろしくココ。」


小さな手を前に揃えながら、お辞儀をするモナーク。


なんというか、礼儀正しい。さっきのツバメとは大違いだな…。


「ユウマも星獣を召喚してみなよ!」


ジョンの言葉に従い、俺はペンダントに意識を集中しながら、彼が唱えたのと同じ呪文を口にした。


「星獣よ、我が前に現れ、その力を貸し給え——!」


…………


しかし、何も起こらない。魔法陣すらも発動しない。


「おい、ジョン。この呪文、ほんとに合ってんのか?」


「間違うわけないじゃないか!だって、入学前の儀式として全員がやることだし…。でもおかしいな、何かが反応しないっていうより、そもそもユウマの魔力がゼロな感じがする…」


「魔力がゼロ? いや、それは普通のことだろ? だって俺はただの25歳の会社員だからな!」


そんなやりとりをしていると、突然——


「ミシェル!何やってんだよ、このグズが!」


怒鳴り声が響き渡った。


俺とジョンは驚き、慌てて席を立つ。声がした方へ向かうと、白っぽい水色の髪をした男と、長いピンク色の髪の少女がいた。


少女は必死に自分のローブで床にこぼれた飲み物を拭いている。その肩を怒鳴った男が険しい顔で見下ろしていた。


「ミシェルがグズだから、野次馬が集まってきたじゃないか! お前たち、見せ物じゃないぞ! さっさと散れ!」


「すみません、兄様。すぐに終わりますから、お席に戻ってください…」


「ちょっと待てよ」


放っておけなくなり、俺はミシェルの隣にしゃがみこんだ。


「手伝うよ。ジョン、車両のどこかにタオルがあるか見てきてくれ!」


「わかった!」


「あ、あの…ありがとうございます。私、ミシェルっていいます…」


ミシェルが小さな声で礼を言う。しかし、その瞬間——


「おい!ミシェル!そんなくだらない男と話すな! 俺たちは高貴な人間なんだぞ!」


怒鳴ったのは、さっきの水色の髪の男。兄様って呼ばれてたから、こいつがミシェルの兄ってことか。


「お前も見てないで手伝えよ!ハンカチかタオルくらい持ってるだろ!」


俺がそう言うと、男は腕を組み、あからさまに嫌悪感を示した。


「はぁ? なぜ俺がそんな下僕みたいなことをしなきゃならんのだ?」


ただ床を拭くだけの行為を「下僕みたい」って……どんだけお坊っちゃま気質なんだよ。


「お前、ミシェルの兄なんだろ? 妹が必死にやってるんだから手伝うのが普通だろ?」


「嫌だね。エシャ、アイシャ、出てこい。お前らが手伝え。俺は先に部屋に戻る。」


「おい!待てよ!」


止める間もなく、男——ミケロスは去っていった。その場に残されたのは、黒い角が生えた双子のような小さな生き物たちだった。


「まったく、エシャの主はゴミみたいな奴だにょ。ミシェルもあんなのに従う必要ないにょ!」


「ミケロスはそこまで悪いやつじゃないにゅ…」


「お前らも星獣か?」


「はい! 双子の星獣です。私はエシャ、青い髪だから水色のほうって覚えてにゅ。そして——」


「アイシャにょ! あたちはピンクのプリティーな妹って覚えてほしいにょ!」


なるほど、水色が可愛い系で、ピンクがちょっと生意気系か。


「二人とも、手伝ってくれてありがとう」


「ミシェルは悪くないにょ。悪いのはゴミのミケロスにょ!」


「兄様を責めないであげて…。入学式で緊張してて、ピリピリしてるだけだから…。えっと……」


「俺はハヤシ・ユウマ。よろしく!」


「ユウマさん……よろしくお願いします。手伝ってくださり、ありがとうございました。」


なんて健気な妹なんだ…こんな可愛い妹が俺にもいたらなぁ…。


「ユウマー! 持ってきたよ! え? もう拭き終わったの?」


「ちょうど今終わったんだ、ありがとなジョン」


ミシェルはジョンにも丁寧にお礼を言い、場が和やかな空気に包まれる。


しかし、その瞬間——


「ちょっと!通路の邪魔なんですけど!? どいてくれない? そこの『さえない男』と『クルクルパーマ』!」


「邪魔ってなんだよ!飲み物を拭いてただけだろ!」


振り向くと、赤毛のツインテールの少女が腕を組んで立っていた。いきなり人を『さえない男』呼ばわりとは、なかなか失礼なやつだな。


「ふーん、それはどうも。もう拭き終わったんでしょ? なら邪魔だからどいてちょうだい!」


少女はズカズカと通路を抜け、次の車両へと去っていった。


「なんだよ、あの女、感じ悪いな」


「レイラ・ノクターナル。試験の成績はトップクラスのエリート。でも、性格は……まあ、見たまんまだね、可愛い顔してるのにもったいない…」


「可愛げがない女は勘弁だな」


どうやら、この学校には変人しかいないらしい。



「まもなく、エンチャントレルム学校前……エンチャントレルム学校前……」


列車がトンネルに差し掛かると、穏やかなアナウンスが流れた。窓の外が一瞬にして暗闇に包まれ、揺れる光がトンネルの壁を照らす。


なんだか変に緊張してきたな……。


俺は本当にこの学校で、元いた世界に戻る方法を見つけられるのか?


そんな不安が胸をよぎる中、列車がトンネルを抜けた瞬間——景色が一変した。


窓の向こうに広がるのは、歴史を感じさせる石造りの町並み。古い家々が整然と並び、曲がりくねった石畳の道がゆるやかな坂を描いていた。屋根には苔が生え、壁の一部にはツタが絡みついている。静かながらも、どこか温かみのある風景だった。


そして、その町並みの中心にそびえ立つのが、ひときわ目を引く大きな建物——古びたレンガ造りの学校だった。


塔のように高く伸びる尖塔は青空に突き刺さるようにそびえ、荘厳な雰囲気を放っている。その周囲には古い木々が立ち並び、色とりどりの花が咲き誇っていた。


さらに目を凝らすと、町の広場には市場が開かれ、新鮮な野菜や果物、手作りのパンが並んでいた。商人たちは楽しげに客とやりとりし、あちこちから笑い声が響いてくる。市場の片隅には昔ながらのパン屋や雑貨屋が軒を連ね、風に乗って香ばしいパンの香りが漂ってきた。


ここが……俺がこれから通うことになる場所なのか……。


列車はその美しい風景の中をゆっくりと進み、やがて学校の近くにある駅へと停車した。


「ここが……エンチャントレルム……」


思わず呟くと、ジョンが嬉しそうに言葉を続ける。


「ここは『シルフィード』、通称『魔法の国』! そして、目の前にあるのが僕たちが通う エンチャントレルム魔法学校さ!」


列車の扉が開き、学生たちが次々とホームへ降りていく。俺もゆっくりと立ち上がり、いよいよ未知の学園生活が始まるのだと実感するのだった——。



---


[おまけ]


「やっと学校に到着したにょ〜! さてさて、さっそくイケメン探し開始にょ♪」


「アイシャちゃん、すぐにイケメン探しをするのはやめるにゅ……お姉ちゃん、寂しくて泣いちゃうにゅ……」


「泣くなら勝手に泣けにょ!!」


泣き始めたエシャの頭を、バシバシと叩くアイシャ。その様子を見て、ミシェルは困ったように二人の間に入った。


「もう、二人とも喧嘩はやめて、仲良くしてね?」


「そうだそうだ! サイレン家にふさわしい星獣として、もっと知性ある振る舞いをしろ! これは主である俺の命令だ!」


そう言って、ミケロスが腕を組む。しかし、アイシャはふんっと鼻を鳴らし、挑発的に言い返した。


「それを守るのはエシャだけにょ! あたちはミシェルの星獣だから、お前に指図される必要ないにょ!」


「なにをーっ! こら、待て! 捕まえてとっちめてやる!!」


「にょーっ!? 逃げるにょー!!」


ドタバタと騒ぎながら、走り回る二人。その様子を見つめながら、エシャは深いため息をついた。


「はぁ……先が思いやられるにゅ……」


「だね……」


ユウマとジョンは、遠巻きにその光景を眺めながら、やっぱりこの学校には クセの強い連中しかいない ことを改めて実感するのだった——。


次回![第三話、学べ若者よ]

第二話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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