9 山野さんへの嫌がらせ
スリッパを履いた山野さんを見て、言葉が出なかった。
「あ、なんか、上履きダメになっちゃった……。」
山野さんを見ると、顔色が悪い。
明らかに精神的なダメージが大きいな。
慣れてないんだろうな、悪意に。
「あ、あはは、何か昨日寝不足で……。小説の感想はまた今度ね?」
そう言って、自分の席に戻っていった。
「お、おはよう、みんな。」
「「「……。」」」
山野さんが挨拶をしても、返事がない。
そうくるか……。
昨日の昼休み、山野さんの言い方はかなりキツかった。
みんなからの無視も、僕にとってはご褒美だけど、山野さんにとっては……。
昨日、家に帰って隠しカメラを確認した。
ばっちり犯人たちが写っていた。
人数は五人。
昨日、山野さんに告白した男も写っていた。
これがあれば、僕はどうにでもなる。
ヤツらを追い込むことも出来る。
僕たちの学校は進学校だ。
大学の推薦を狙っている生徒も多い。
確かあの男もそうだったはず。
追い込む材料としては充分だろう。
しかし、山野さんはそこまで出来ないだろう。
そして、ダメージも僕の比ではない。
昼休み。
いつもなら、山野さんは仲の良い友達と一緒に食事をしている。
だが。
「あ、あの……。横峯君……。い、一緒に食べてもいい?」
僕の席に来た。
「……。」
「あ、やっぱり嫌だよね?ごめんね?」
そう言って僕に背を向ける。
「山野さん!!!」
「え?」
山野さんの背中に貼られていた紙を取った。
『ぼっち野郎大好き 性悪委員長』
女が書いたであろう丸文字。
その紙を見た山野さんは、泣き崩れた。