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第二十一話 褒章


 3人はギルドに報告をしにいく前に、まずはライカがプロデュースした進の新しい服をとりに、服屋「黒い羽」に向かっていた。

 確かにここまでずっとジャージだったせいか、変な視線を周りから受けることもあった。まぁ、ジャージは流石にダサいよね。結構な激しい戦闘も、振られたあの日も共にすごした旧知の仲なんだけどなぁ。これはしっかり保管しておこう。元の世界の唯一のものだしな。

 というかジャージであんなことやこんなことを言ってたと思うと急に恥ずかしくなってきたんだけど……


 ま、まぁ、過去のことは忘れよう。気にしても仕方がないしな。


 「ライカ、どんな感じの服にしたんだ?」


 「それは見てのお楽しみ!」

 ライカは楽しそうにスキップしている。

 ほんと子供みたいだよな。なんというか、子犬?


 「さ、着いたな」

 進は少しドキドキしながら店のドアを開ける。

 だって冒険者の服ですよ。めちゃくちゃ着たいじゃん? カッコいい感じさぁ? めっちゃ憧れじゃん?


 「すみませーん。発注した服をとりにきた近藤進ですけどー」


 「はーい」

 昨日も見た女性が店の奥から出てくる。

 年齢は30歳らしい。

 見た目はもっと若く見えるが、先程ライカに少し聞いた。


 「既にできているので今お持ちしますね」

 そういって店主はもう一度店の奥に入っていく。


 1分ほど経つと、

 「こちらになります」

 店主が1着の服とロングコート、一本のズボン、そしてブーツを持ってきた。

 「おお! カッコいいな」

 黒を基調としたロングコートに白い魔力を感じる服。冒険者ように動きやすくもされている黒いパンツ。そして黒いブーツ。


 いや悪魔だからって黒尽くめすぎません? ま、まぁ、カッコいいからいいけど……


 「フフフ、どう? 進。早速着てみてよ!」


 「おう」


 「では、こちらのお部屋でお着替え下さい」

 店主に言われて部屋の奥へと入っていく。





 数分後


 「どう?」

 進は慣れない服に少し緊張気味に言う。


 「おおー似合ってるじゃーん!」


 「いいんじゃないかしら」

 リーゼも控えめな感じで褒めてくれた。


 「ありがとう。ちょっと照れるな」


 「よし! これで進の服も新調できたことだし、ギルドに行って進の奢りで美味しいものを食べに行こー!」


 「まぁ、リーゼにも奢る予定だったし、今日は俺が持つよ。服のプロデュースもライカにしてもらったしな」


 「やったぁ!」

 ライカはまた意気揚々として店の出口へと向かう。


 進は代金を支払いついていく。


 「御来店ありがとうございましたー!」

 店主は礼をして3人を見送る。


 「またお願いします」

 そうして新しい服を手に入れた進は、なんだか新鮮な感じでギルドへと歩いていく。






 3人はギルドに着き、受付にて報告を行なっていた。

 ギルドにも軍から連絡が来ていたようで、大体の経緯は伝わっているようだ。


 「この度は本当にお疲れ様でした! 四凶悪魔(デッドデュヘイン)を一体討伐なんて世界的な功績ですよ! それと、報酬は明日、王国からの褒章金も併せてお送りしますのでご了承下さい」


 「わかった。じゃあ今日は特にもう言うことはないかな。じゃあ、帰ろうか」


 「ええ。いきましょう」

 どうやら周りの冒険者にも伝わっているようでギルド内がザワザワしていた。

 そして進の方へ歩いてくる影が1人。イナラシュだ。


 「調子に乗るなよ」

 そう進の耳元で言うとギルドを出て行った。


 「はぁ。全く、あれが最上のArank冒険者と思うと、冒険者の未来も心配になるわね」

 リーゼが珍しく眉間にシワを寄せて言う。

 いつも表情豊かではなく、どちらかというと真顔が多目で近寄りがたい印象を持つリーゼだが、ここまでしっかり怒った顔をすることはあまりない。


 「そうだな。まぁいろんな人がいるってこった。さ、何が食べたい?」

 進は少し軽蔑を含めた声で言い、すぐに話題を切り替えた。


 「やっぱりヂュルーゾが食べたい!」

 何やら知らない単語が出てきたな。

 「そうね……あの旨味は驚異的だわ」


 「なんだそのヂュルーゾ? ってのは。料理かなんかか?」


 「いいえ。ヂュルーゾは食材よ。赤い甲羅を持つ海の食材ね。フィンドルフ王国は領海も持っているから特産品の一つなのよ」


 「はぁ。んじゃ、それ食べにいくか!」


 そうして3人はヂュルーゾが食べられるお店へといく。




 「うっまあ!」

 進はこの世界に来て一番の大声を上げた。


 「ヂュルーゾってこれほとんどカニだな」

 見た目も味もカニそのものだった。

 焼いたり茹でたり蟹味噌に酒を注いだり鍋にしたりといろんな食べ方ができるお店で、談笑しながらたっぷりと楽しんだ。


 その後は宿に空き部屋もできたようなので、この日は2部屋借りた。

 流石に前日のようなのはもう懲り懲りだ。


 静かに朝を迎え、三人は王城へと出向いていた。


 「いくら貰えるかなぁ」

 ライカは目をいつになく輝かせている。


 「確か四凶悪魔(デッドデュヘイン)の賞金は聖金貨150枚だったかしら」


 「「150枚!?」」

 ライカと進は思わずリーゼから出た数字に驚愕の意を叫ぶ。


 「まぁ妥当な額でしょう? 世界中を蝕んでいる悪魔の幹部。人間の体を悪魔に与える存在を打倒することは王国としても実績になる。進はまだしもライカは知っていていいはずなんだけど」


 「い、いやぁ、そのー、ちょっとド忘れしてしまっていたというかー。べ、別に知らなかった訳じゃないんだからね! これでも公爵家で勉強してきたんだから!」

 ライカが顔を赤くして必死に訴えているが誤魔化しているのをリーゼはしっかり見透かしているようで、「ハイハイわかったわかった」と言った感じで軽く流していた。

 ライカはその反応に不満げな顔をするが、それ以上言うことはなかった。


 そんな事を話しながら歩き、王城の門へたどり着き兵士に話しをすると、案内役であろう宮廷メイドが出てきて王の所へと案内される。



 玉座の間はきらびやかな装飾に包まれていて、様々な重臣人物や、内政に関わる者が集まっていた。


 そしてその奥に座る60は過ぎているであろうどこか風格のある冠を被った人物が進達を見ていう。


 「そなた達が、四凶悪魔(デッドデュヘイン)である、あの白の悪魔エステラを討伐したものか」

 フィンドルフ王は全てを見透かすような目で進達を見据えて座る。


 「はい。私の名前は近藤進と申します」

 3人は膝をつき顔を上げ挨拶をする。


 「私はリーゼ=フィノラと申します」


 「私はライカと申します」

 王はライカを見て思い出したように言う。


 「おお、君はレイル家の養子の子ではなかったかな? 家を出たのは聞いていたがよもやこれほどの功績を残すとは。育て親のレイル君も鼻が高かろう。


 この席にはもちろんトーラス=レイルも参加している。


 「はっ。おっしゃる通り、数年前にライカは出家しておりますゆえ、確かに育てはしましたがこれはライカ自身の努力だと思っております」

 トーラス=レイルはあくまで自分の功績ではないとここでハッキリと言う。

 これにより、レイル家と進達の繋がりがないと認識させることもできるが、何よりもこれはトーラス本人の意志であろう。


 「そうか、では早速褒賞金の授与に移ろう。この後少し用もあるのでな」

 そう言うと、何人かの執事が動き、褒賞金を授与する準備が行われる。


 準備が整うと、王は立ち、進達を見下ろし言う。


 「では! これから褒賞金の授与を始める! そなた達の四凶悪魔(デッドデュヘイン)の1人である白の悪魔エステラの討伐、そしてギルドからの報酬も含め聖金貨150枚を授ける!」


 執事が箱に入った褒賞金を進に手渡す。


 「うむ。ではすまないが、これから用があるので、この式は少し早いがここで終了する。後に晩餐などを開き次第呼ぶので、是非来てくれたまえ」


 そうして進達は王城をでて今後の方針を立てる。


 「まずはこの褒賞金を元手に街作りしつつ戦力強化だな」


 「そうね、これだけあればかなり進むんじゃないかしら」

 リーゼが褒賞金が入った箱を見ていう。


 「うんうん! やっぱ間近で見ると涎がグヘヘへ」


 「ま、まずはレイル家にいくとしよう」


 「まだ家にいないと思うから待つ必要があるかもね」

 確かにライカの言う通りだ。さっき王城にいたしな。

 「それなら就職所で募集するのはどう?」


 「え、そんな所があるのか! ならまずはそこに言ってみようぜ!」


 3人はリーゼの案で就職所へと向かう。


 

 

ちなみに進はシャルルを渡す事を忘れてます。

次回もよろしくお願いします。


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