⑤バクオンショウジョ
【前奏】
しっとりとしたピアノバラードを選曲したので、伴奏がかなり小さめで、そのせいだと思うのだが、隣から少女が発信源だと思われる物凄いシャウトの声が丸聞こえだった。
【AメロBメロ】
隣から聞こえてくるシャウトが邪魔で邪魔で、声量を少し大きめにはしてみたものの、声が全くと言っていいほど出ず、声量の小ささがただ目立っただけだった。
【サビ】
この曲はバラードで、しっとりと歌い上げるために作られた曲だというのに、パンクロック風にしっとり感無く歌っている自分がいて、その割に周りには平常が漂っていた。
【間奏】
少し前よりも隣から聞こえてくるシャウトの音が大きくなっているように感じ、隣なのに鼓膜が破れそうになってしまっているのだが、実はさっきのがAメロで、今聞こえてきているのがサビだと、今更気付いた。
【AメロBメロ】
清純な恋愛をテーマに歌った何の汚れもない歌の歌詞を曲に乗せているところだというのに、周りにいる会社の上司やら、会社のその他の人たちは下ネタばかりを放ち続けていて、清純な歌詞はそれらに呑まれて吸収されてしまっていた。
【サビ】
私はゆったりとした刺激が少なめの横揺れ系の歌を歌っているのだが、一人とか二人とかの、あの例の壁に近い人たちが、明らかに隣の部屋のパンクに縦ノリをしていて、その光景が私の瞳を強く刺激した。
【後奏】
礼儀なのか何なのかはよく分からないが、歌が終わるまでみんな部屋を出ずに待っていてくれて、歌が終わって一人の同僚がドアを開けたと同時に、隣の部屋のドアも開けられたらしく、直接のシャウトが私の耳に直接入ってきて、パチパチっと目が覚めた。